第24話 ………みんなにこっくりさんによる霊障がおきなければいいけど。
こっくりさんに時間を取られて現在時刻は8時45分。
普段は出席確認が8時15分に始まる。30分のタイムロスだ
結界に阻まれて外の人は中に入れず、教卓が粉々に割れ、教室中のガラスにヒビが入っていて、一枚も割れていないという摩訶不思議な状態だ
ゴリマツ先生がこの状況を見て異常だと思わないわけがない
30分教室の外で待機していた先生はまず怒鳴ったよ。「何の騒ぎだ」と。
でもさ、みんなそんなのこっちが聞きたいって状態なんだよね。
だから先生が入ってきても泣くはパニックになるわだんまりだわで事態が進まない
もちろん僕は全部わかってるよ?
一番わかってるのは自分だという自信すらある。
だけど口を開くのが面倒くさい。
なので、全部タマに投げた
一度タマと目を合わせ、顎をゴリマツの方にクイッと向ける。すると
「せんせー。いいかなー?」
タマにはちゃんと僕の意図が伝わったらしい
「これはねー。みんなでこっくりさんをしてたんだよねー。そうだよねー、時輝くーん?」
時輝だけに罪を押し付ければいいものを………
あえてタマは『みんな』と言いやがった
一応みんなも一人がすべてを被るよりみんなで赤信号を渡った方が自分への被害が少ないと悟ったみたいだ。
ただ、過半数は『時輝が勝手にやったことだから勝手に一人で怒られとけよ』と思っているのだけどね
「え………? そ、そう! みんなで! みんなでやったんだ、こっくりさん! なぁみんな!」
「「「……………お、おう」」」
次の休み時間、時輝は殺されるだろう
みんなに均等に自分の汚れをなすりつけやがって。
そんな視線を僕はタマの方に向けると………タマの笑顔がなんか怖い。
あぁ………タマは面白くなるように行動しているんだ。
時輝、南無。
「クラス全員か………。はぁ………」
先生が深くため息をつくなんて、珍しいな
クラス全員、というのは間違いだね。
僕たちが入ってきた時点で教室に居たのは20人前後だ。27人中だいたい7~8人くらいが先生と同じように廊下で待ちぼうけを食らっていたはずだ
僕は騒ぎを聞きつけたらしい野次馬っぽい上級生を一瞥して、端の席に座る。お前ら授業はいいの?
………。なるほど、担任はももちゃん先生か。5年生だな。
「とりあえず、全員無事だよな。こっくりさんは危険な遊びだ。先生も一度小さい頃に興味本位でやってえらい目にあったからな。」
ゴリマツ先生は首謀者は時輝だとだいたい予想はつけているようだ。
それでも、一応クラス全員がこっくりさんに参加したのも事実だし、みんながそう証言している。
一人を徹底的に叱りつけることも出来ずに先生の説教も不完全燃焼だ
「とりあえず、危険なことをした罰だ。クラス全員で今日の放課後、体育館の大掃除をしろ」
という妥協案でこの場は流れた
盛大に散らかった教室を、パニックの収まったクラスメートみんなで片付け、やっと朝の会に入る。タマが割った教卓は、空き教室のと入れ替えた。
正直、もう一時間目の終盤なんだけどね
あ、ちなみにこっくりさんに使った紙は16枚に破って先生のライターで燃やしたよ。10円玉はおっちゃんが持ってたはずだからクロが今持ってるだろう。
あの10円玉は一応もう普通の10円玉だけど、一度助平が入り込んだおかげで他のゴーストが入り込みやすくなっているから
自販機とかに使って適当に処分する。葉を隠すなら森の中が一番良いからね、ゴーストだってその10円を見つけにくいはずだ、そもそも10円に入ってもこっくりさんくらいしか出番がないから見つけても入り込んだりするゴーストはマレだろう
「センセー! センセーもこっくりさんしていたんだよね!」
里澄は姉のドラム同様、図太い精神をお持ちのようだ。
もうこっくりさんの時に受けた精神的ダメージは回復したのか、先生にそんなことを問いかけた
「………うん、していたぞ。それがどうかしたか?」
「先生はどんな質問をしたの?」
自分達はとくに質問を考えていたわけでもないからちょっとこっくりさん自体はグダグダだったもんね
「先生も子供だったからなぁ。クラスメートの好きな子は誰か、とかそんな感じだ」
子供が考えることなんて、結局その程度か。
僕はまず、しようとすら思わないからネタを考えられないし、むしろそれ以下だろうけど。
こっくりさんをするという愚行をしないだけマシだろう
「こっくりさんはどうやってやめられるの?」
「あー………先生たちは半信半疑だったから、途中で手を離したんだ。そしたら次の日に霊障が起きた」
「れいしょう? ってなに?」
「霊障っていうのはね、『霊的障害』の略だよ、リズムちゃん」
里澄が首を捻ったが、それに答えたのはティモ
「霊障はかんたんにいったらポルターガイストかな。物がかってにうごいたり、ゴーストにとりつかれたりすることなんだよ」
少し違うな。霊障っていうのは、なにもゴーストだけが起こすものではない。
呪いをした人間の自己暗示と、強いストレスで体を壊してしまうことも、それにまとめられる。
「へぇ………なんでティモくん、そんなこと知ってるの?」
別に隠す必要もないようで、ティモは「にいちゃんが少しだけ霊感がある人だから、そういうのに詳しいから教えてもらったんだぁ」とはにかんで答えた
「先生たちに起こったのは、集団腹痛と、こっくりさんを企画した先生の同級生が………いや、そのくらいだ。」
先生は里澄の話にもどし、途中で言い直した。憑かれたか死んだかしたんだろうな。低級な動物霊だったら今回みたいな半実体化とかして襲う。とかはないはずだし。
こっくりさんをしたばかりで無闇に子供を怖がらせたら自己暗示で本当に集団腹痛なり、そういった霊障がおきかねない。この話はここで打ち切りだね。
僕は机に頬杖をついた。
あとがき
この話がこっくりさん編、エピローグとなります。
これで一応こっくりさん編は終わりになります
早いですね。
次の編を何話か書いているのですが、まだテーマが決まっていません
一応、個性的な新キャラも出します。が、ちょっとプロットもまとまってませんので、少し遅れるかもしれません
ではでは




