貴女の娘は大切なものを無くしていたようです。
主人公の本名は里多恵子さんで仮の名前がカルル君です。
・・・分かりづらかったらすみません
お母様、覚えてらっしゃいますか?昔、お母様が読んでくださった「瓜子姫と天邪鬼」普通は鬼の様な顔をした”天邪鬼”に怯えるのに、私は、あの白くて美しい”瓜子姫”に怯えて泣きじゃくりました。だって、肌が白く長い髪の姫のほうが、天邪鬼よりお化け的にはレベルが上な気がしません?夜、トイレのドアを開けたら、天邪鬼がいるより瓜子姫がいた方が絶対怖い!その後数ヶ月、夜中にトイレの扉を開けるのが怖いがために何回、お布団に素敵な地図を書いた事か・・・
「うふふふ、23年ぶりね、あなた」
子どものときは、お母様に怒られるという恐怖心と共に見つめていたこの地図さん。現在は、羞恥心と共に見つめています。27歳でおねしょってっ!誰かに見られたら末代までの恥。これは証拠を隠滅しないとです。とにかく何とかしないと。
「あああ、お願い!消えて〜消えて〜干上がってくれぇぇ〜」
多恵子の渾身の一撃
しかし、地図には効果がないようだ。
多恵子の現実逃避値が20減った。
多恵子の日照り乞いの舞
しかし、地図には効果がないようだ。
多恵子の現実逃避値が20減った。
多恵子必殺の布団乾燥ブレス
しかし、効果はいまいちのようだ。
多恵子の現実逃避値が30減った。
多恵子の体力が30減った。
多恵子は我に返った。
そうですよね、王子みたいに魔法使える訳じゃないし・・・。祈っただけで干上がるわけないですよね。息吹きかけて渇く様なやわな地図じゃないですよね。あぁ、もう、大きな地図の横に小さな無人島を涙で作ってやる。
「あら、カルル様どうされました?」
なかなかのセクシーな声に誘われ、涙の島作成をやめ顔を上げるとそこには、えっとそうですね、ここはまた官能小説的に表現させていただきましょう。
その豊満な身躯 は、格調高いビクトリア調のメイド服では隠しきれず、熟れた艶実を惜しみなく主張をしている。・・・つまりはボン☆キュ☆ボンのナイスバデー
微笑みを浮かべる、鼻筋の通ったその顔に白く柔らかいビロードの毛。美しく光るその瞳の中には空に輝く三日月が寝そべっている。・・・つまりは、お顔が羊! えええ、羊?!
体はナイスバディでお顔は羊〜 えっと 異世界だと判断した理由その7(以下略)
いけない、お姉さん(仮)の異世界住人っぷりにビックリしている場合じゃないです。この地図人に見られたら、切腹しなくては!どうにか隠さないと。
「あら、まぁ、うふふふ」
私の努力は虚しく、速攻、羊のお姉さん(仮)に地図が見つかってしまいました。27歳で地図を広げるなんて、27歳でおねしょ・・・だめだ、そんなの恥ずかしくって死んでしまうぅ。幼さ全開にして実年齢を絶対に隠し通さないと。 ここは、泣き落としです。
「あ、あのね、ぼ、僕、あの、うっ、うえぇ。ごめんなたぁい」
「あら、カルル様泣かないでください。大丈夫ですよ、誰でも幼いときはしてしまうものですから」
「うっうわぁぁぁぁん」
羊のお姉さん(仮)。貴女の慰めの言葉、ものすごい鋭い刃になって突き刺さりましたよ。思わず本気で泣いてしまいましたよ。悔しいので、羊のお姉さん(仮)のボンに顔埋めてみました。あぁめっちゃきもちいぃぃ。
「カルル様。そんなに泣かないでください。目が溶けてしまわれますわ。ほら、他の皆様には知られないように、ラリサが消してあげまから」
「ほ、ほんとぉ?」
「ええ、ほら、見ててください」
何て事でしょう。羊のお姉さん(仮)が手をさっと掲げると、あっという間に地図が消えてしまったではありませんか。
「魔法?羊のお姉さんも魔法?王子といっしょ?」
「ええ、コンスタンティン様には及びませんが、簡単なものでしたら」
もしかしたら、この人に魔法教われば使えるようになるのでは?ここは可愛らくお願いしてみましょう。
「すごい!すごい!わたっ・・ぼ、僕もね魔法使いたいの」
「カルル様には素質がおありのようですから、いずれ使えるように」
「やだ、今使いたいの、お願い、教えて。僕、頑張るから」
「カルル様にはまだお早いかと」
「早くないもん、コスチャ王子だってもう使えるもん」
「コンスタンティン様は、特別であらせられますから・・・」
知ってますよ。体は子どもでも心は大人ってやつですよね。大丈夫です。私も一緒です。というより私の方がもっと大人です!
「お願い、お姉ちゃん」
「え、でもですね・・・」
この際、自分が27歳という立派に成人した社会人だった事は綺麗さっぱり忘れましょう。そう、立派な営業は名詐欺師!師匠!私はやりますよ!この、優しそうな羊のお姉さんですら、騙してやりますよ。
「魔法つかえたら、さびしくなくなるもん・・・」
そっと羊のお姉さんの袖を握り、 気合で目に涙を浮かべ、少し寂しそうに遠くを見つめ、子どもらしくない哀愁を演出します。そして、言い訳はとびっきり子どもっぽく!
「だって、王子遊んでくれないんだもん。魔法・・・使えたら、きっと王子と一緒にいれるんだもん」
王子と遊ぶ自分なんて想像できません。ていうか、魔法が使えるようになったって王子と遊ぶことなんてないと断言できます。さぁ、卑怯と呼びたければ呼べばいい!所詮結果が全て!!どんな手を使っても目的は果たしたら勝ちなのです!
「お姉ちゃん・・・お願い」
泣くか泣かないかのギリギリの顔で羊のお姉さんを見つめる。これで落ちなかったら羊のお姉さん、鬼ですよ!鬼!
「・・・カルル様・・・」
羊のお姉さんがとても辛そうな顔で見つめてきます。チクリとなけなしの良心が痛んだ様なきがしますが・・・き、気のせいです。
「すぐに使えるようにはなりませんけど・・・ゆっくりお勉強していきましょうね」
よっしゃ〜落とした!!落としましたよ師匠
「うん!ありがとう!お姉ちゃん」
ツリー王女も一撃で倒した、邪気だらけの無邪気な笑顔を放出してみました。しかも邪気30%増量(当社比)羊のお姉さんチョロいです!
「カルル様、私の事はラリサと及びください」
ラリサさんはそう言うとそっと私の頬にふれ「これからは、ラリサがいつもお側にいますから、もう寂しくないですよ」と、頭を優しく、それはそれは本当に優しく撫でてくれました。
「・・・・」
ラリサさんの優しい手に撫でられて、罪悪感で胸が苦しくなりました。こんなに優しいラリサさんを騙したうえに、チョロいとおもってしまうなんて・・・穢れてる。私、穢れてる。どうしよう、謝ってもあやまりきれない。
罪悪感で時を止めた私をラリサさんはそっと抱きしめてくれました。
・・・お母様、私はものすごく大切な何かを無くしてしまっていた気がします。なんか泣きたい気分です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
月1で!と言っておきながら年1になりつつある恐ろしい現実。本当にすみません。更新ないのにお気に入り登録のままにしてくださっていた皆様。ありがとうございます!本当にありがとうございます。