貴女の娘は禁断の世界に連れて行かれそうです。
同性愛の話が微妙にでます。
でもこのお話ボーイズがラブラブする話ではないです。
お母様。人ってショックを受けると時が止まったように感じるモノなんですね。 誰にも言っていないはずの私の名前と、乙女の秘密 (いや〜ん異世界トリップしちゃったよ)を、王子が知っていました。
ビックリして思わず叫んだ後、貴女の娘は放心状態だったようです。
そして、気がついた時にはデザートタイムに突入してました。お腹の満腹度をみると、食事はしっかり食したようです。でも、味どころか、何を食べたか思い出せません。ガッカリです。きっとゴージャスなフルコースだったのでしょう。
そういえば、お母様。貴女はテーブルマナーにうるさかったですね。意味なくナイフとフォークで夕飯を食べさせられた幼少期、いい思い出です。でも、お母様。我が家は『自分たちは中流家庭(しかも中の上)と思っているけど、実は下流の上』ええ、悲しいけど、それが現実です。
ナイフなんて何時使うんじゃい!と思春期の時は思っていました。しかし、こんな所で役に立ちましたよ。お母様に見せてあげたい!この、無意識に食事をした割りには綺麗なテーブルクロス。
さて、落ち着いたところで、状況確認です。
何故、王子は私の名前を知っていたんでしょう?それに、異国の人ではなく異世界人と言っていました。それに他の人(ツリー王女)には言うなと。『異世界人』はバレてはまずいということですね。
以上の事を踏まえ、考えられる答えは!!
王子が、意図的もしくは間違えて、私を異世界から私を召還。でも『異世界人の召還』は禁術。バレたら証拠隠滅のため私は消される。
あぁ、なんてことでしょう。素晴らしい推理です。自分の推理力に惚れ惚れします。こんな才能が隠れていたなんて、多恵子、貴女って本当に恐ろしい子!
ふむふむ、そうなると・・・・王子は禁術の代償で幼児体系に!?
いや、そうだとツリー王女が何かしらリアクションを起こすはずです。それに『成長は止まっている』って言っていた気がします。もしや、計画的犯罪?6歳から召還する魔力を温存していた?
そこまでして私を召還した理由はなんでしょう。科学の知識をえるため?魔王討伐?・・・・もしや、生贄??
王子は敵?味方?ここは慎重に行動しないといけません。とにかく『情報』が足りません!情報を制するものが世界を制する。情報収集をしないといけません。
ツリー王女から何か聞き出せないでしょうか。
ふと、ツリー王女に目をやると、それはそれは嬉しそうにお兄様に話かけてました。 ツリー王女はお兄様が大好きの様です。しかし、王子は相変わらず無表情。
王子、表情筋をちゃんと使わないと老けますよ。
「それでね、お兄様。リラったらね、ふふふふ」
どうやら、ツリー王女は面白い話をしているようです。白髪まじりのナイスミドルさんは、王子の後ろでニコニコしています。なのに、王子の表情筋はぴくりともしてません。相づちすら打っておりません。王子、コミュニケーション能力皆無ですよ。そんなんじゃ、大人になった時、世間の荒波にヤラレちゃいますよ。
「だけどね、お兄様。エレーナ姉様が・・・・リラがそう言うのよ・・・・だから、エレーネ姉様ったら・・・・ それでね、リラの乳母が・・・・ で、エレーネ姉様が近衛兵の・・・・ 結局、ヴァレリお兄様まで・・・・」
ツリー王女も慣れているようで、王子の無表情など気にせず、喋る、喋る、喋る!見事な一方的会話です。 マシンガントーク炸裂です。息を吸っているポイントがわからないです。ここまで、喋りまくると、 王子が無口なのが悪いのか、王女が喋りすぎるのが悪いのか。
「あら、カルルったら口の周りがソースだらけですわ」
王女急に話題転換です。
しかし、カルル?口にソース?犬でもいるのかな。
犬を探してキョロキョロしていたら、王子と思いっきり目が合っちゃいました。う、無表情美形幼児、意味なく迫力あります。何故でしょう、目をそらしたら負けな気がします。くそ、負けるか!27歳の意地をみせてやる。
「ふふふ、 カルルったらお兄様と熱く見つめ合っちゃって」
ツリー王女がクスクス笑いながら、私に近づき、口を拭いてくれました。
って、あれ、カルルって私か!
お母様、貴女の娘のテーブルマナーは、まだまだだった模様です。あれだけ頑張ってくださったのに申し訳ございません。くそ、口とは盲点だった!
さて、口を拭いてくれたツリー王女にお礼を言った方がいいでしょう。しかし、なんと言いましょう。『ありがとうございます。ツリー王女』と言うのが一般的。でも、現在私は幼児体。この際、思いっきり幼児ぶって、美少女に甘えてみたい気もします。それに、幼いフリをしていた方がいろいろ聞き出せるかもしれません。しかし、純真無垢そうなツリー王女を騙すのは少し良心が痛みます。
私が、良心の呵責を覚えそうになった時、頭の中に営業部長の鬼畜笑顔と恐ろしい名言その1
『良い営業ってのはなぁ、名詐欺師なんだよ。いかに自社の商品が素晴らしいと信じているフリをして、客を騙すかなんだよ。里、お前はいい営業になれる。いや、俺がそうしてみせる!』
そして、その後の地獄の日々がが走馬灯のように走りさりました。
・・・・ですよね部長!いまさら良心なんて皆無ですよね。ううぅぅ。私は既に汚れている。
「ありがとう。チュリーお姉ちゃん」
気持ちは某有名探偵君。卑怯と言われてもいい、思いっきりワザな舌ったらず、そして邪気だらけの無邪気な笑顔を放出してみました。完璧ですね、私。
「カルル・・・・かわいい!」
名演技の報酬は「お胸で窒息未遂」でした。男の夢です。パフパフです。まぁ、青い果実なツリー王女のお胸は、微妙なパフパフですが、最高です。ぐへへへ
いけない、いけない。中年親父モードに入る所でした。ツリー王女が油断させるのには成功しました。さて、詳しい情報収集をしないといけません。どう切り出したらよいでしょうか。
私が思案して、思わず王子を見ていると、頭上から何やらどす黒いオーラを纏った声が聞こえてきました。
「うふふふ、カルルったらお兄様が好きなのね。ふふふふ、うふふふふ」
えええ?これはツリー王女の声?なんだか只ならぬ雰囲気ですよ?
「男色。それは究極の愛!純粋なる愛!うふふふ。カルルとお兄様。うふふふ。素敵ですわ。愛は性別をも凌駕するんですわ」
凌駕しちゃ駄目ぇ〜そこはこらえて、王女ぉぉぉぉ。
「ええ、そうですわ。ふふふふ、。幼なじみ・・・・いつも側にいる存在・・・・気がついたら、なくてはならない存在に。ぐふふふ」
いや、幼なじみネタは私も好きですよ。甲子園に連れてってとか思いますよ。でも、なんか王女、邪気が見えます。黒いオーラが見えるようですよ。
負けました。27歳大人の女が14歳の幼い少女に、恐怖を感じてます。 ツリー王女、豹変してます。怖過ぎます。先ほどまでの、純白なオーラが、なんか黒紫色のオーラにかわってますよ。
とりあえず、目で王子に助けを求めてみました。しかし、王子は無表情。王子の後ろにいるナイスミドル(王子はマルクって呼んでた様な)は苦笑いをしています。
2人とも私を助ける気はないですね?かかわり合いたくないオーラが出てますよ。
いいです。私も大人の女。自分でなんとかしましょう。
「チュリーおねえちゃん。くるしぃよぅ」
ついでに涙も浮かべてみましょうか。
いでよ!営業部長直伝、『営業必殺技その3”泣き落とし”』
おまけに、ウルウルおメメの上目遣い。
27歳の女がやると色々敵ができてしまうこの技も、幼児なら武器なり!
「あ、ごめんなさい。カルル」
我に返ったツリー王女が、申し訳なさそうにしています。・・・・こちらこそ申し訳ないです。別に苦しくなかったんですから。
ツリー王女は、王女らしい気品のある微笑みを私に向けた後、そっと私からはなれました。
「お兄様、ツリーはやらなければいけない事が出来たので城に戻りますわ」
そう言うと、ツリー王女は優雅なお辞儀をし、嵐のように去っていきました。
・・・・聞き間違えですよね。どす黒いオーラをまき散らしながら去るツリー王女の口から「ふふふふ、お兄様とカルルの幼なじみ薔薇薔薇計画・・・・早速とりかからなくてわぁ」と発せられていた、なんて。きっと気のせいです。
テラスに王子とナイスミドルと私だけになりました。ツリー王女一人が減っただけなのにとっても静かですなぁ。
「カルル様はツリー様に、だいぶお好かれの様ですね」
いや、あれは好かれたというより、怪しい世界の扉を・・・・
ナイスミドルもといマルクさんを見上げると、まるで孫の成長を喜ぶ様な遠い目をされていました。
いや、マルクさん。喜べない状況ですよ。かなりヤバイ道進み始めちゃってますよ?王女様。
「そうだな」
おい、王子。アンタも賛同しちゃだめだよ。それに、あなた実の妹の手で、怪しい世界に押し出されそうになってるんだよ?危機感持ってぇ〜
あれ?しかし、私と王子が禁断の恋?ツリー王女は私の事を男だと思っているけど、私って女だよね。てことは、男と女の恋愛?あれ、普通じゃん。
いや、普通じゃない。私は27歳、王子は14歳(しかも体は幼児)。犯罪だよ犯罪。私が警察に捕まっちゃうよ。危ない、危ない。
もう、朝から色々ありすぎて疲れたよ。思考回路も混乱して、思わずロリコン(ショタコン?)を受け入れそうになっちゃったよ。
あぁ、疲れすぎてフラフラする。。。あれ、本当にフラフラしてる。
視界が揺れる・・・・体が、まぶたが重くなって上手く動かせない。
もしかして、毒を盛られた?王子に?やっぱり私、消されるの?
重たいまぶたを無理矢理開けて、王子を見る。
目に映るのは無表情な王子。
やっぱり、殺されるの?
「・・・・殺すなんて、ひどい」
王子の事ちょっと頼りにしてたのに。
重さに負けて閉じてゆくまぶた。まぶたに押されてこぼれだした涙が頬を伝うのを感じつつ、私の意識は深くしずんでいったのでした。
数秒後のテラスでは、壮絶な死の瞬間を迎えたはずの私が、すやすやと寝ていたのでした。
そう、私は自分の体が幼児だという事を失念してたのです。子どもは眠くなったら突然眠る!まるで電池が切れたかのように!!!
最後まで読んでくださってありがとうございました。
月1ルール守れなくってスミマセン。
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