貴女の娘はドラマのような経験をしました。
全国の「カルル」さんすみません。
お母様!来ました!きましたよ!とうとうドラマ的シチュエーションきましたよ!ええ、判ってます。もう既に彼氏の奥様に刺された時点で『昼ドラ的シチュ』を体感済みですが……今度は『月9的シチュ』です!なんと、朝爽やかに起きたら同じベッドに男が寝てたんです!あとは横に寝ている男が『実は兄弟だった』もしくは『記憶喪失』か『不治の病で後数ヶ月』なら『韓流ドラマ的シチュ』もクリアです!
まぁ、横に寝ている『男』って性別は男ですけど、どう見ても『男児』ですけどね。いいではないですか。27年間一度も男と朝を迎えた事がないんですから、ちょっとぐらい雰囲気を味わっても……男児相手に。……ええ、むなしいです。
そうです、私は27年間一度も男と朝を迎えた事がないのです。気がつくべきでした。25歳の時からつき合いだした「彼」と一度も朝を迎えた事がないのは異常でした。おかしいと疑う事なく2年もつきあってしまいました。いくら仕事が忙しかったとはいえ……本当に馬鹿でした。
さて、男と朝を迎えて先ず、するべき事といえば「え?もしかして昨日……わたし…この人と?」の確認です。あははは、お互い幼児です。そんな事があったら「青少年育成法」に引っかかります。そんなこと絶対起こらないです。よね?まぁ、念のためです、確認します。……はい、大丈夫そうです。
横に寝ているのは王子(仮)でした。しかも、私、王子の手をしっかり握っていました。どんだけ男に飢えてたのでしょうか……私。たしかにこの王子、将来性はあります。でも、現在の私が『幼児』だからといって幼児に手を出すのは問題だと思います。ほら、あの某有名な「体は子ども」の探偵さんがクラスメイトに手を出したら……やっぱり「青少年育成法」に引っかかるとおもいませんか?健全ではないです。
「起きたか?」
王子が言いました。それはこちらの台詞です。とは大人なので言わないでおきました。王子は窓の外を少し見ると「朝か」と何ともぼけた事をいわれました。とにかく、『ドラマシチュ』をコンプリートしたか、どうか気になります。王子にあの3パターンの可能性について聞いておきましょう。
「あの、貴方は私の兄……」
「お兄〜様ぁ!」
月9シチュエーションに浮かれすぎた私が、ついうっかり『可能性』の中で一番あり得ない『兄弟シチュ』を聞こうとした時、部屋の扉が勢い良く開き、美少女が現れました。
お母様!とうとう来ました!美少女です!神は私を見捨てなかった!
さて、それでは恒例(仮)の官能小説的登場人物紹介をさせていただきましょう。
子どもから大人へ変わる、そのはざま特有の美しさを讃えた姿は雄を誘惑する妖精のようであった。触れば溶けてしまいそうな赤銅色の柔らかく長い髪は娘の腰まであり、まるで誘うように揺れ、娘の白く美しい肌を引き立てている。白いはだにきらめく二つの桃色の頬、そして側にで輝く緑の瞳は、雄を蠱惑するかのように輝く。その初々しき顔にのる唇は、まるで食べられるのを待つ赤い果実。
あれ、しまった。最後の部分が王子と一緒です。しかも描写もあまり変わらないようです。 私の文才はやはり、いまいちのようです。今回はイヤラシさを出すために思いっきり『雄』って入れてみたんですが。あまり効果はなかったようです。
「ツリー様……お待ちください」
そういって遅れてきたのは『老執事』様です。きました!私の時代が来ました!ナイスミドル様登場です。男はやっぱり50過ぎてからが旬ですよね。さて……いかせていただきます!
洗礼され尽くしたその姿は、まさしく大人の魅力にあふれていた。少し白髪の入った深緑の髪にその男が過ごした年月を伺える。同じ深緑の瞳は幾人の女が……
「お兄様!久しぶりに抜け出せましたわ!」
美少女に私の妄想が遮断されました。
「ツリー。ここは寝室。客人も居る」
王子様が冷たく言い放ちました。
「あ、申し訳ございません。ワタクシ、ガルディアーノ王国第2王女。ツェツィーリア・ガルディアーノと申します。お兄様のお客様なら、ワタクシのお客様と同じですわ。どうぞ、ワタクシの事はツリーとお呼びください」
そう言うとツリー王女はとても優雅にスカートを広げられました。どうやらこちらの挨拶はスカートを広げるようです。……ズボンの場合どうすればいいのでしょう。無理矢理広げようとしたら破れて悲劇が起こります。そっちのポロリは見たくないです。
「あ…」
「マルク。ツリーをサロンへ。食事を3人分たのむ」
私が挨拶しようとしたら、王子に遮られました。一晩、一緒に寝たら夫気取りですか?美少女との会話を遮るとは、何て酷い事をするんでしょう、この王子様は!そうこうしているうちにツリー王女は部屋を去り、また王子と二人っきりになりました。そういえばこの人、リアルに王子だったんですね。
さて、どうしましょうと考えているうちに、王子はベッドから抜け出し。椅子に座られました。そして「聞きたい事があるだろう。何でも聞け」と、とてもありがたい事をおっしゃられました。
それでは先ずどうしても聞きたかった事を!
「あの、もしかして不治の病を患っていたりしますか?」
「……いや。不治の病はない」
っち、可能性その1は無しか……
「じゃ、記憶喪失とか?」
「記憶はある」
これも駄目か…。ありえないけど、もしかしたら、もしかするかも!
「貴方は私の兄または弟ですか?」
「……両親とも不義を働いていたとはおもえないが」
ですよね〜。わかってました☆ でもこちら、異世界トリップとか魔法とかファンタジーあふれる世界じゃないですか。だから、あり得ない事もおこるかな?って思っちゃっただけです♪
後聞く事はあったでしょうか?あぁ、そう言えば、昨日すっかり聞忘れた「青」リストの「ここはどこ?わたしはだれ?世界情勢」を聞くべきですよね。あぁ、その前に私は『記憶喪失』という設定でした。どう聞くのがいいのでしょう。
「昨日、答え忘れたが…」
私がぐるぐる考えていると。王子が何か言い出しました。
「名前はコンスタンティン・ガルディアーノ。年齢は14。カルディアーノ国第3男子だが現在、第4王子と名乗っている。独身の兄はいる」
「詐欺だ!その体で14歳?どんだけ成長遅いんですか!」
思わず叫んでしまいました。しまったです。人の外見はとやかく言ってはいけません。しかもここはファンタジーの世界。何でも有りです。いまさら、狸の様な猫型ロボットやコロッケが好きな侍型ロボが出てきても驚いてはいけません。
「あ、ごめんなさい」
謝罪は必要だと判断したら迅速かつ率直に行う。これはビジネスの基本です。
「構わない。体の成長が止まっている。体年齢は6歳ぐらいだろう」
『異世界だと判断した理由その6』ってしつこいですか?いいんです。繰り返すほうが、人の印象に残りやすいのです。しかし、本当にファンタジーですな……
「それと、大人の飲み物とは『酒』のことか?」
「そうです!そうです!それです!それそれ!年齢制限ありますか?私、飲めますか?」
『郷に入れば郷に従え』ルールを重んじる日本人ですから、この国の法律は守りますよ(多分)。でも神様!酒がなければやっていけない状況なんですよ!どうかごご慈悲を!!
「18歳以上だ。お前はむりだ」
まぁ、判ってましたけどね。最近、運悪いですし。くぅ。こんな時こそ、やけ酒したいのに、本当に神様って残酷です。
「はぁ。お酒だめですか。私は何を楽しみにして生きればいいのか……」
「お前の国では子どもも酒が飲めるのか?」
私があまりの残念さに呟くと、王子もといコンスタンティン様がそう返されました。いえいえ、子どもの飲酒ダメダメ!ただ、私は27歳、しつこいようですが27歳だったんですよ。
「いいえ…飲めませんよ」
っとしまったです。記憶喪失の設定でした!!
「って気がしたんです。えっと私、記憶喪失です!」
あぁ、焦ってとても残念な言い訳をしてしまいました。恐る恐る、コンスタンティン(長い名前で言いにくいですね)様をみると、相変わらず無表情でした。王子があまりに無表情なので、今の『記憶喪失』を信じてるのか、どうなのか不明です。でも、今ので信じたらこの王子を「おボケ」さんに認定しますよ。
「名前は?」
「……名前?覚えてないです…ここんすてゃ、てゃん…」
会話の中に相手の名前を入れると、『不特定多数』ではなく相手個人と話ている事が強調できるのです。相手を『その他大勢』ではなく『個人』として認識している事をアピールするのは、円滑な人間関係を形成するのに取っても大切なのですよ!なので、名刺をもらったら声を出して読んでみたりするといいんですよね。これでも、私、営業だったんですよ!
というわけで、名前を呼ぼうと思ったのに。し、舌が絡まるぅ!王子の名前長過ぎです。こ、こんなとこに罠が!!
「…コスチャでいい」
「あ、ありがとうございます。コスチャさん」
「名前…そうか。なら、カルルと名乗るといい」
「はぁ、ありがとうございます」
名前付けてもらっちゃいましたよ。カルルって…なんか頭悪そうじゃないですか?頭がカルル〜(笑)
ぎゅぅるるるるる〜
私のお腹は限界だったようです。昨夜、ご飯を待っている間に寝てしまったので、実は食べてないんですよ。
「テラスに食事がある。行こう」
コスチャ王子は王子様らしく、ベッドにいた私をテラスまでエスコートしてくれたのでした。お母様!貴女の娘は感動して泣きそうですよ。だって、27年生きていて初めて!初めてです。こんなに「女性」として扱われた事は!お姫様気分〜うふふふ♪ケーキがなければパンを食べればいいのよ!
テラスの入り口までいくと急にコスチャ王子は立ち止まりました。
「ツリーには、お前が女だという事、異世界人だという事、そして『たえこ・さと』という名前は黙っておいたほうがいい」
そういうと扉を開けて私を中へ誘導しました。
「え?あ?え?お、御主それを、なぜしってるぅぅぅ!」
私の声がテラスにこだました。
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相変わらずの文章力の低さ……読みづらくってすみません。