貴女の娘は論理的な思考をする賢い人間に育ちました。
ちょっと「下ねた」が入ります。
苦手な方逃げてください。
風呂はいいね。風呂は心を潤してくれる。日本人の生み出した文化の極みだよ。現在、私は湯船に浸かりながら心の洗濯中です。今日は色々ありました……全部夢であって欲しいです。でも、もしも夢ではなかったときの為、現状を冷静に判断する必要があります。
さて、ここの家は下水道施設が整っているようです。お風呂もあればトイレもあります。よかった、中世ヨーロッパのように「バフーン」したら裏道に投げ捨てるなんてことがあったら、本気で泣いてました……臭そうですし。電気があるかは不明です。明かりは電気ではなく火のようです。水道らしいものはありません。お風呂には湯船だけがありました。
……以上の事をまとめて、冷静に論理的に考えると。この世界の文明の発達段階は、現在の日本には届かないけどかなり高度のようです。つまり、リアル「モンハン」する危険性は避けられたと……思いたい。ハントしてください!って言っている様な巨大なトカゲがいましたけどね。……肉食べたい。
肉と言えば、あの美少年!本当に絵に描いた様な「王子様」でした。そう、もしエロ小説の登場人物のように、なまめかしく表現すると……
子ども独特の柔らかかいラインを持ちながら、怪しい色気を讃えて立つ姿は人々の扇情をかき立てるために存在するようであった。天使の羽の様な柔らかさをもつ赤銅色の長い髪、それの対となる白い肌はまだ熟れる前の青々しさを讃えている。そしてほんのり赤く染まりし果実のようは頬に添えられた緑の瞳は、まるで人々の欲情を誘うように輝く。まだ幼さの残る顔にのる唇は、まるで食べられるのを待つ赤い果実。
ってしまった、果実を二回使っちゃっいました。私の文才はいまいちのようです。
とにかく王子(仮)に色々聞いて現状を把握しないといけません。質問事項を頭の中でリストアップしておきましょう。このような場合、重要度に応じ3色にわけるとよいです。「赤」は重要、先ず始めに聞く事。「青」はそれなりに重要。余裕があったら聞く事。「緑」は特に聞かなくてもいいけど、聞いておいた方が便利な事。
「赤」
・ アルコールの存在と飲酒可能年齢 (酒がないとやってられません)
・ 今夜のご飯の要求とおよびその内容(肉が食べたい)
・ いつまでこの家のお世話になれるか(末永くよろしくおねがいします)
「青」
・ ここはどこ? (異世界なのは知ってます)
・ 私はだれ? (この世界での位置づけって意味で)
・ 世界情勢等 (時代を読む力が生き残る力ぜよ!)
「緑」
・ 王子(仮)の名前、年齢、素性 (できれば独身の兄がいるか聞きたい)
・ 屋敷の外の危険度 (お出かけしたら死亡は嫌だ)
・ 人種 (異世界ですから……美形エルフとかいるかも、猫耳娘!リアルバニーちゃん。夢が広がりますね)
とりあえず、今、思いつくのはこれぐらいでしょうか。とにかくお腹がすきました。あぁ、この異世界トリップがご都合主義でありますように。そしたら、お風呂から上がった所に可愛いメイドさんが、お洋服とお食事を用意してくれているはず。そして、メイドさんと仲良くなって乳繰り合っいながら食事が出来るはず。子どもボディーをいい事に、胸とか触っちゃおうかなぁ♪今日私の誕生日だし、それぐらいサービスがあってもいいじゃない!
「頼むよ神様!!」
私は勢いよく湯船から飛び出したのでした。
……わかってましたよ。だって今日の私、人生最高についていなかったじゃない。お風呂から出た私を、メイドさんの代わりに王子様(仮)が待ち受けていました。ご飯も、メイドさんもいませんでした。ついでに言うと私はまだ裸のままです。だって、メイドさんに拭いてもらいたかったんだもん。けして、露出したかったわけじゃないです!
「……」
王子様(仮)は無言で私にタオルと服を渡してきました。なんですか?お前の裸は見たくないってやつですか?どうせ幼児体系ですよ……これでも昔はそこそこ胸があったんですよ。それに、同じく幼児体系の王子様(仮)には、大人だった私のボディーを鑑賞するのは早いですよ〜だ。
「明日、女物を用意する」
王子様(仮)に渡された服はどうやら王子様の物ようです。ふと思ったのですが日本が「男女平等」になったのは最近です。いえ、現代でも完璧に平等ではありません。この場合、男装していた方が何かと便利かもしれません。このままこの服を頂いちゃいましょう。
「気にしないでください。男物の方が動きやすいですし、わざわざ用意してもらうの悪いです」
自分の発言ながらなかなかナイスな発言です。人の服を借りパクするのに、まるで遠慮しているかの様な謙虚さを醸し出してます。完璧な言い方です!ここでしたたかに申し訳なさそうな笑顔をさらしておけば完璧です。
「男装。……そのほうがいい」
おい、どうゆう意味?私に女の格好は似合わないってことですか?なんか失礼な奴だな王子様(仮)すこし腹が立ちましたが、相手はお子様。ここは大人の余裕をもって対処しないといけません。さあ、落ち着いて、まずは、重要事項の「赤」の質問をしましょう。
「聞きたい事があるんですが」
さて、ここで「アルコール」といって通じなかったらどうしましょう。記憶喪失のフリをするのなら不用意な事はきけませんね。どのように聞けばいいでしょう?
「…あの、大人の飲み物ありますか?」
……へっへっへお嬢ちゃん。大人の飲み物をあげようねぇ。ほぉら、ここから出てくる液体が大人の飲み物だよ〜
上記の様な怪しいオジさんの会話が、私の頭の左方から右方へ高速に通過して行きました。な、何かを間違えた気がしてなりません。王子様(仮)と私の間に微妙な時間が流れました。
これはプランを変えた方がいいです。今日の私はきっと疲れているんです。先ほど考えた質問事項リストの中で当たり障りのない物を聞いておく方がよさそうです。
「あの、今日はご飯いただけますか?できたら肉が食べたいです。何時までここに居ていいですか?出来れば末永くここにいたいです。貴方の名前は何ですか?年齢は?素性は?独身のお兄さんはいますか?」
動揺してしまった私は余計な、括弧でくくっていた部分まで言ってしまいました。どうしましょう。変な子だと思われます。
ぎゅぅるるるるる〜
おまけにお腹が鳴ってしまいました!恥ずかしい。いま、絶対私真っ赤な顔してます!
「食事はすぐ来る。肉はある。長期にわたる滞在を許可する」
王子様(仮)はそう言うとそのまま部屋を出て行かれました。名前、年齢、素性そして独身のお兄さんの有無はなかった事にされたようです。何故、慌てて部屋をでていったのか?私のお腹の音がおかしくって外で笑いたかった?まさかそんな事はないでしょう。
名前を聞かれてから、部屋を出て行った?ということは、本名を名乗ってはいけないとか?!「真名」を人に知られると呪いをかけられる、とか聞いた事があります。となると、私の本名「里多恵子」は秘密にしておいた方がいいのでしょうか?何か別の名前をつける方が?そういえば「記憶喪失」と言う設定でした。それなら名前も思い出さない事にしておいた方がいいでしょう。
「ふぁ〜」
今日はとても頭を使った気が……疲れたぁ。ご飯がくるまでちょっと横になってよ。
「論理的思考に基ずく冷静で的確な判断」をたくさん下せた事に満足していた私は、すこし浮かれ気分でベッドに向かったのでした。後にその「的確な判断」の為に事件に巻き込まれてしまう事等、この時、自分は知る由もなかったのです。
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私は、「ディクスの娘」の部屋から出ると、すぐに自分の執務室へ向かった。そこに自分の執事であるマルクが控えている。
「マルク、私と同じサイズの男服を数点用意してくれ」
彼女が「ディクスの娘」である事を隠すには、「娘」である事を隠せばいい。皆「娘」をさがしているのだから。こんな単純な事に気がつかなかったとは自分は相当動揺していたようだ。
「他の者には、客人は「男」だと伝えておけ」
「はっ、彼の世話をするメイドはいかがいたしましょうか?」
性別を偽る以上は徹底的に隠さないといけない。さもなければ、性別を偽る「娘」を皆、怪しむだろう。
「暫くは、私かお前がする。信用できる者を用意しろ」
「わかりました。私の孫が適任かと思いますが」
「ラリサか。頼んだ」
「はい、それでお客様をなんと御呼びすれば?」
マルクの問いで、自分が「ディクスの娘」の名前を知らない事に気がついた。先ほど、腹の音を恥ずかしがる彼女を見た時、不可解感情が自分を襲ったため慌てて部屋から出てしまったのだ。おかげで、聞かれていたにも関わらず、自分の名前を伝える事すら忘れてしまっていた。
自分の特殊な立場のため、子ども、特に女児と話した事等一度もない。そのためか、彼女と話すときは妙に緊張する。しかし、私は彼女を保護する事に決めたのだ。そのため、今後とも彼女に関わって行くだろう。この状況に早くなれるべきだ。
「”彼”に食事をお運びしましょうか?」
「私も彼女と共に食事をする。自分で運ぼう」
食事をしながら、今後の話をしないといけない。
「ディクスの娘」異界からの使者、裁きの執行者。まだ幼い彼女には全てを話すのは酷だろう。先ずは、この世界に慣れてもらう事を優先するべきであろう。
私は、後にこの判断を後悔する事になる………
「あぁ、ところでマルク。大人の飲み物とはいったいなんだ?」
最後まで読んでくださってありがとうございました。
ちょっとエバネタいれちゃいました……
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