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シマノ、猫又に出会う

再びドアを開けると、そこにはさっきの美少年がいた。


顔は王子様といった印象なのに、ジャージにサンダルという、いかにも引きこもりみたいな格好をしている。


いい格好をすればもっとカッコよくなるだろうに。世の中には勿体ない人もいるもんだ。



「あ、初めまして!同じぐらいの歳の子が住んでたんでびっくりしました。」


「あはは、俺もです。てっきりおじさんが住んでるもんだと。」


「お互いさまです。これからはよろしくお願いしますね。」


「あ、はい。よろしくお願いします。」


完全に人のよさそうな感じだった。…あんなに壁を殴るのに。



「いってらしゃい!」


まぶしい笑顔で言った。顔のよさにより一層輝いているように見えた。


名前は聞いていないが、確か表札には、藤崎と書いていたはずだ。



「行ってきまーす!」

そんなことを考えていると、隣でグレーテルがいった。


魔女とはいえ、女は女。あのイケメンに反応しない訳がない。


…嫉妬?

なんだろう、この妙な感じ。


「なにボーッとしてるの?地図見なさいよ。」


「…地図?んー…これって、俺の学校の横じゃないか?」


記憶ではそんな場所はないはずだが、いつも誰より早く帰っていたので、学校の周りの状況は余り知らない。



「…ねぇ、あとどのくらい?」


「10分ぐらい…。」


「無口ね。」


「まぁ、学校では喋らないしな。」


「ふーん。」




数歩歩いたとこで、彼女は志魔野の方を向いた。


「…ねぇ。」


「なんだ?」


「私とあなたが出会ってから、もう1日よね?」


「ああ、そうだな。」


「あなたはなんで、自分のことを話そうとしてくれないの?」


「そうでもないよ。ただ話すのが苦手なだけ。」


そういって彼はポケットに手を突っ込んだ。


「じゃあ、お名前は?」


「志魔野コウ…。」


「私になんて呼ばれたいですか?」


「コウ様。」


「却下。」


「お兄ちゃん。」


「ここまでシスコンだとは…。」


「嘘だよ。コウでいいよ。」


「本当に嘘?本当の本当に嘘?本当の本当の本当に嘘?」


「しつこい。」


「だって、お兄ちゃん変態なんだもん!」


声を高くして、アニメの萌キャラのように言った。


「変態言うな。」


「あながち嫌では無さそうですなー。顔がニヤケてますぞ、お兄ちゃん!」


「お前なー。」



「…コウ、そうやってずっと楽しそうな顔しててね。あの怖い顔は嫌よ。」


「な、何言ってんだ、急に。」


「別にー。じゃあ、インタビューごっこの続き。好きな食べ物は何ですか?」


「ハンバーグ。」


「すごく平凡ね。じゃあ、好きな妹は?」


「お前、調子のるなよ!だいたい、好きな妹ってなんだよ。」


「もうお兄ちゃんったら~。私は師匠、お兄ちゃんは弟子なんだよ!」


「はいはい。」


「次は真面目な質問。私のことなんて呼びたいですか?」


「バカ女。」


「速報!コウはネーミングセンスの欠片も持ち合わせていないようです!この件に関してグレーテル氏は、グレーテルで良いですよと、述べているようです。グレーテル氏は心が広いですね。」


「なに一人でコントやってるんだよ。着いたぞ、グレーテル。」


「速報です!志魔野氏がグレーテ…。」


「もう黙ってろ。」


ここに着くまで、グレーテルは呆れるほど話しかけてきた。


本当に呆れるほどに。



「はーい。」


ムスッとした顔でグレーテルは言った。



当着地はただの駄菓子屋ねようだった。


「駄菓子屋じゃん。」


「いいえ、違うわ。中から魔力を感じるし、結界も貼ってある。」


グレーテルのさすほうを見ると、うっすら文字のようなものが書いてあるのが見えた。


現在22時47分。


「すいませーん!」


そんな時間にも関わらず、グレーテルは駄菓子屋に声をかけた。

5分ほどたったのだが、誰も現れない。


「…仕方ないわ。」


「ちょっと、待てよ!」


グレーテルは不法侵入でもしそうな雰囲気だ。それは止めさせなければ。


「なかの様子を確かめさせるわ。…我に仕えし魔獣よ、目覚めたまえ。」


呪文のようなものを唱えると、彼女は二つ折りの黄色い紙をとりだした。


その紙を地面に置き、紙を開いたとたん、緑色の火がボワッとついた。


「うわっ!」


まさか火が出るなんて思っていなかったので、志魔野は腰を抜かしてしまった。


そして、その妖しく輝く火のなかから黒いなにかが出てきた。


「…猫?!」


「猫って言うな。これはれっきとした猫又よ。ほら、尻尾が別れてるでしょ!」


グレーテルの言うように、黒猫の尻尾は一本ではなく、数本あるようだった。

その数本の尻尾は別々に動き、どこか不気味なようすだった。



「にゃー!」


猫は一鳴きすると、志魔野の方に佐擦り寄ってきた。


「ふーん、コウの事が気に入ったんだって。」


「そ、そうなのか。」


動物に好かれるというのは初めての経験だったので志魔野は少し戸惑った。

いつもは嫌われて、逃げられるか、引っ掻かれるようなレベルなのに…。

「にゃー、にゃにゃ。」


猫の声かと思ったのだが、よく聞くとグレーテルから声が聞こえた。


「なに見てんのよ。恥ずかしいんだから!猫語は魔女の必修科目なの。」


そんな物なのか。魔女の世界も大変だな…、と志魔野が思っていると、猫が壁をすり抜けて駄菓子屋の中に入っていった。

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