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シマノ、驚く

「チッ、じゃあまたね。来なさい!」


ヘンゼルがそういうと、空から巨大な黒い鳥があらわれ、体中に巻き付いたツタをくちばしで器用にちぎり、彼女を乗せて行ってしまった。


再びツタが伸びはじめたが、鳥の速さにはかなわず、逃がしてしまった。



「最悪ー!!逃げられた。魔獣呼び出すなんて卑怯よ!」


グレーテルは本当にがっかりした声で言った。それを言ったらグレーテルのさっきの発動魔法こそ卑怯なのではないだろうか、志魔野は思ったが口には出さず心にとどめておくことにした。そっして、とりあえずグレーテルをなだめることに専念した。



「……まぁまぁ、ほうきも戻って来たことだし!」


「……そうね。確かに作戦は成功したし、良いとするわ。」


「作戦?」


「今のは最初から私の描いた筋書通り、……ヘンゼルが逃げたこと以外は、ね。」


グレーテルは少し嬉しそうに語った。順調に気持ちがおさまってきたようだ。ひとまず戦いは終わったようだったが、志魔野には気になることが一つあった。


「魔術拡大魔法ってなんだ?俺に関係ありそうだったけど。」


志魔野が質問すると分が悪そうな顔をして答えた。


「名前のまんまよ。魔術を拡大する魔法。」


「……つまり、説明が面倒だと。」


「まあそんなとこ。」


そういって会話は終わってしまった。
















その後、志魔野はほうきに乗って無駄な力を使って疲れていたので家に帰ってすぐに布団に入った。寝ていると、地面が地震のようにずっと揺れているように感じた。おそらくほうきに乗ったせいだ。せっかく早く布団にはいたのに、志魔野は結局しばらく眠れず、翌朝珍しく寝坊してしまった。


大急ぎで授業の用意をして、服を着替えると、グレーテルはすでに部屋にいなかった。ほうきが返ってきたからきっとどこかに行ったのだろう、そう思い志魔野は家をでた。




その日は、夏休みの一日前だった。多くの生徒たちはワクワクし、待ちきれないといった様子だった。志魔野にとってもバイトをたくさんできるので嬉しいことだった。この稼ぎ時は絶対に逃せないものだった。














「ただいまー、アイス買ってきてやったぞ。」


学校は終業式と大掃除というとくに無意味な時間割だったのですぐに終わって家に帰ってくることができた。普段無駄遣いはしない志魔野だったが、たまには、と気を利かせアイスを買ってきたのだった。夏のアイスはもうたまらない!

……しかし返事はかえってこなかった。


「せっかく買ったのに。まあいいや、2つとも食べよー。」


早く食べないと溶けてしまうので志魔野は早速アイスのふたを開けた。テンションを上げるために二個とも開けて、同時に食べることにした。


「うおー、おいしい!」


前はあまり独り言を言わなかった志魔野だが、グレーテルと暮らしているからか、アイスが2つあいているからか

、とても元気な独り言を家で発していた、一人でアイスを食べ終わり、ふと机をみるとそこには見覚えのない紙切れが置いてあった。


「なんだこれ?」


志魔野はそれを手に取って、文字が書いてあるほうの面を見た。

そこには


「コウ、いろいろありがとう。本当に感謝しています。

これからは別のところに住むことにしました。また来るので寂しがらないでね。グレーテルより」


と丁寧な字で書いてあった。


嘘だろ、嘘だろ、と志魔野は何回も自問自答を繰り返した。やっと夏休みを迎えて、いつもより一緒に過ごせると思ってせっかく楽しみにしていたのに。


志魔野の心には驚きと悲しみが渦巻いていた。


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