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シマノ、罠にかかる

「意外と良かったわ。せん…と…う、だっけ?」


「だろ!まぁ、これから通うことになるからな。」



その時、ガッシャーンと音がした。


「何っ!?」


「ああ!!ガラスが!」



部屋には硝子の破片とフクロウの姿があった。


「伝書フクロウということは、……魔法用品店からね。」


「フクロウなんて始めて……って、ガラス!!大家さんに怒られるし、金とられるー!ヤバイ、今月どうやって生活すればいいんだ?」


このガラス一枚で、家計は逼迫するほど、お金に余裕が無い。それはグレーテルのせいでもあったのだが……。


「仕方ない、わたしが治してあげるわ!」


グレーテルは硝子の欠片を一つ拾い上げると、窓枠の方にもっていき、こう唱えた。


「物質の神よ、我に姿を取り戻す力を与えよ!リペアード!!」



すると、床に落ちた破片が、窓枠に吸い込まれるように動き出し、割れ目は埋められていった。


こうなるともう、元のガラスだ。



「おお!スゲェ!」


「まぁね。私にとっては朝飯前のことよ。」





―――バサバサッ


フクロウが羽を広げて部屋中を飛び回る。上からはふわふわと羽が落ちる。それと同時に、何か四角いものが落ちた。


「…手紙?」


「ええ、多分魔法用品店からね。」

グレーテルが指を曲げると、手紙は浮き上がり、目の前までやってきた。


そして手紙を軽く指で叩くと、封はあき、便箋の中から薄桃色の紙が出てきた。


グレーテルはそれを手に取り、読み出した。






「…魔法用品店の主人が帰って来たようね。明日、また行きましょう。」







そうして、志魔野とグレーテルは寝ることにした。


前回のこともあり、グレーテルは壁ぎわにコウ布団を持っていき、寝ていた。


それに対して志魔野は、グレーテルの命令により、対極の壁ぎわで寝ることになった。




「…グレーテル?」


電気を消してからしばらく、グレーテルは眠ったようだった。


「寝たのか……。」


そういって志魔野は立ち上がり、あの写真のほうへ向かった。


前は毎日欠かさず妹に話しかけていたが、最近はあまり話しかけていなかった。


グレーテルがいるので、話し相手にも困らない。しかし、それでは妹に申し訳ない気がしたからだ。



志魔野は最近の出来事を説明したり、グレーテルのことを紹介したりした。


そして、最後にこういった。


「…グレーテルが、いつかカオルを生き返らせることが出来るかもしれないって言ってたんだ。だから、待ってろよ。俺は絶対諦めないからな。……じゃあ、おやすみ。」


志魔野はまた立ち上がり、壁ぎわまで足音を立てないように歩いていき、眠った。
















―――ピピピッ

目覚しが鳴る。


志魔野が止めると、グレーテルはまだ寝ていた。



「はぁ…、まだ寝てるのか。」


そういって、志魔野は朝ごはんの準備を始めた。


いつもは作らないのだが、グレーテルのためにも作ってやることにした。


「よし、ただの食パン出来た!……やっぱ、自分で言うのは悲しいな。」


それはは食パンにバターを塗った、という簡単なものだった。


それから、コップに麦茶を入れる。志魔野はもしグレーテルに合わない、と言われても、夏は麦茶だ。と言い返してやろうと考えた。

実際、麦茶か水しか選択肢は無いのだが。



それから志魔野は制服に着替えた。別にまだ着替えなくても良かったのだが、グレーテルがいるところで着替えるのもなんだと思い、着替えることにした。



用意が整ったところで、グレーテルを起こすことにした。


グレーテルのすぐ横までいき、声をかけた。


「起きろ、朝ごはん出来たぞ!」



志魔野はまたグレーテルを見て、妹を思い出した。


妹がいるときは、こうやって起こしたものだ、と。どちらかというと起こされるほうが多かったが。


しかし、グレーテルはまだ起きなかった。一筋縄ではいかないようだ。


こんどは体を揺さ振ってみることにした。


「起き…」


そう言った瞬間、上からタライが落ちてきた。

まるで昔のコント番組のように。




「……コウ!またエッチなことしようとしたわね!変態!!」


さすがにこれには、志魔野も怒った。


「俺は起こしてやっただけだ!なのになんでタライが上から落ちてくんだよ!」



「…あれ!?そうなの?発動条件は整ってないはずなんだけど…?それが本当なら、ごめんなさい。」



「…もういい、朝ごはん食べるぞ。」


「やったー!作ってくれたのね。」




「「いただきまーす!」」


グレーテルは文句も言わず朝ごはんを食べた。麦茶の件もなにも言わなかった。



「…おかしいわ。わたしの得意分野である発動魔法が誤作動するなんて…。」


「発動…魔法?なんだ、それ。」


「発動魔法っていうのは、魔法をかけて条件を決めておくと、その条件が整えば自動で発動する魔法のことよ。」


「…さっきは、その条件が整てないのに発動したと。」

「そう。」


「グレーテルが間違ったんじゃないのか?」


「いいえ、発動魔法にかけてわたしの右に出るものはいないわ。」


「…ずいぶんと自信があるんだな。」


「まぁね。」


「よし、忘れよう!これ以上考えても仕方ないよ。」


「そうね。」



「じゃあ行ってきまーす!あ、あと、今日もバイトあるから、遅くなる。」


「分かったわ。でも、魔法用品店に行くことを忘れないようにね?いってらっしゃい。」





コウは出ていった。

さっきはもういい、と言っていたグレーテルだったが、こればかりは妥協できない、と原因を調べることにした。



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