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[第四話] 一分で読めるショートショート

作者: ニルム
掲載日:2026/08/01

今日は「もし世界が毎朝リセットされたら?」というテーマで書いてみました。

繰り返す日常の中で、本当に大切なのは何なのか。そんなことを考えながら読んでいただけたら嬉しいです。

目が覚める。

時計は午前七時ちょうど。

「……またか。」

カーテンを開ける。

昨日と同じ場所を歩く犬。

同じタイミングで鳴る救急車。

同じニュース。

『本日は快晴でしょう。』

全部、一昨日も昨日も、その前も同じだった。

世界は毎朝七時にリセットされる。

最初は夢だと思った。

だが何度目かの朝、確信した。

俺だけが昨日の記憶を持っている。

学校へ行っても同じ授業。

先生は同じところでチョークを落とす。

友達は同じギャグで笑う。

昼休みには同じパンが売り切れる。

何度も繰り返すうちに、全て覚えてしまった。

テストは満点。

じゃんけんは全勝。

ゲームセンターでは景品を取り放題。

けれど翌朝になれば、全部元通り。

手元に残るのは記憶だけだった。

百回目の朝。

俺は学校へ行かなかった。

二百回目には県外まで電車で行った。

三百回目には警察へ事情を話した。

もちろん誰も信じない。

翌朝には全部なかったことになる。

四百回目。

「もう、飽きた……。」

何をしても意味がない。

誰と仲良くなっても翌朝には初対面。

好きな子に告白しても、朝には全部忘れられる。

時間だけが、俺を置き去りにしていた。

そんなある朝だった。

駅前で見覚えのない少女とすれ違う。

「……あなたも?」

少女が立ち止まる。

「え?」

「リセット、覚えてるよね。」

心臓が止まりそうになった。

初めてだ。

同じ記憶を持つ人間に会った。

少女の名前はユイ。

彼女は俺よりずっと前から、この世界に閉じ込められていた。

「私は五百三十七回。」

「そんなに……。」

二人で原因を探し始めた。

図書館。

病院。

神社。

山奥。

何百回も調べた末、一つだけ共通点を見つける。

毎日午後六時。

町外れの病院で、一人の少女が眠っている。

事故で意識不明になった、小学五年生。

名前は結城ひまり。

その病室だけ、時間が止まったように静かだった。

ユイが小さくつぶやく。

「この子が目を覚ませない限り、世界は前へ進めない。」

もちろん証拠はない。

それでも二人は毎日病室へ通った。

話しかけた。

本を読んだ。

窓を開けて風を入れた。

「みんな待ってるよ。」

何百回目かの夕方。

眠っていた少女の指が、ぴくりと動いた。

「見た?」

「うん!」

翌朝。

目が覚める。

時計を見る。

七時十分。

「……え?」

初めてだ。

時間が進んでいる。

慌ててテレビをつける。

ニュースが違う。

犬も歩いていない。

救急車も鳴らない。

世界は、昨日の続きを生きていた。

急いで病院へ向かう。

病室には家族が泣きながら少女を囲んでいた。

「目を覚ましたんです!」

医師の声が響く。

その光景を見た瞬間、隣にいたユイが微笑んだ。

「終わったね。」

「これから学校行こう!」

そう言って振り返る。

しかし、そこには誰もいなかった。

ユイは最初から存在しなかったかのように消えていた。

受付で名前を尋ねても、

「そんな患者さんも、ご家族も来ていませんよ?」

と言われるだけだった。

帰り道、ポケットを探る。

一枚のメモが入っていた。

『ありがとう。これで私も、明日へ行けます。』

署名はない。

けれど、字はユイのものだった。

俺は空を見上げる。

明日は分からない。

だからこそ、生きる意味がある。

終わらない一日より、一度きりの今日の方が、ずっと大切なのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

何度でもやり直せる世界は、一見すると理想のように思えるかもしれません。しかし、失敗も成功も一度きりだからこそ、今という時間には価値があります。

この作品を楽しんでいただけたら、ブックマークや評価、感想をいただけるととても励みになります。

それでは、また次のお話でお会いしましょう。

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