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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第3章 魔物の血を引く者

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16.再会と試練

「……ルーナ?」


 その声に私は勢いよく顔をあげる。

 細い道の先、やっとたどり着いた明かりのともる部屋にその人はいた。


 前髪で顔を隠すのをやめて、人外じみた右目をあらわにした姿。

 ここでは出自を隠す必要がないからだろうけど、たった一週間会わなかっただけでずいぶん変わってしまったように思えて、私の心はチクリと痛んだ。


「クロウ先生……迎えに、来ました」


 私の言葉にクロウ先生は目を大きく見開く。

 それと同時に、幼い少女の声が部屋の奥から響いた。


「ルーナ! 来てくれたのね」


 メディナちゃんだ。

 王都で途方に暮れていたときとはまったく違う、黒い豪奢なドレスに身を包んだお姫様のような姿。

 明るい顔で私を出迎えるその声音は、憑き物が取れたように幸せそうだ。


「わたし、ルーナに感謝してるの」


 ニコニコと笑うメディナちゃんに、クロウ先生がハッとして尋ねる。


「メディナ、君が呼んだのか?」

「ええ。わたしがオブシディアを見つけたのはルーナのおかげなの」

「……いい加減名前で呼べって言ってるだろう」


 私を蚊帳の外にして、二人の会話は進んでいく。

 その姿はまるでずっと昔からそうだったような絆を感じさせた。


「……えっと?? 二人の関係って――」


 混乱したまま私は尋ねる。

 二人に会ったらそれぞれ何を伝えるか、考えていたはずなのに何も出てこなかった。


 私の問いに、嬉しそうに答えるのはメディナちゃんだ。


「オブシディアはね、姉様と結婚するの! わたしにとってはお兄ちゃんになるのね」


 弾む声音で、初めてのお兄ちゃん、とメディナちゃんは言った。

 その言葉に、私はただ目を丸くして、声を失う。


 メディナちゃんのお姉さんと――クロウ先生が、結婚?


 突然飛び出した情報に、頭がついていかない。

 

 お姉さんということはきっとその人もメドゥーサだ。

 魔物の子孫として、クロウ先生は知らぬ間にそんな関係性を築いていたのだろうか。


 心が痛むのを堪えながら、私はやっとのことで声を絞り出す。

 視線を、メディナちゃんではなく、クロウ先生の方に向けて。


「結婚って……本当に? もう、王都には戻ってこないつもりですか?」

「……」

 

 クロウ先生は答えない。


 てっきり捕らえられているか、無理やり連れてこられたのだと思っていた。

 もしくは王都の現状をなんとかするために、一人無理をしているのではないかと。

 

 なのにメディナちゃんが言うには、クロウ先生はメドゥーサと結婚するために王都を出てここに来たって。

 その事実は私にはかなりショックだった。


「……何、してるんですか。王都のこともマギスのことも、もうどうでもいいんですか!?」


 傷ついた気持ちがだんだん怒りに変わる。

 私は思いつくままに、クロウ先生を非難した。


「王都は大変なことになってます。特任講師の先生たちもみんな、一緒に戦ってくれたトマリ先生まで硬化魔法をかけられて……!!」


 それまで黙っていたクロウ先生の眉がひそめられる。

 

「あれは時間経過で解けるはずじゃ……」

「時間経過!? ふざけないで、もう一週間も経つんですよ!? 一週間、私たちや王都のことほったらかして、先生は結婚ですか!?」


 クロウ先生のつかみきれない態度に、私の怒りはますますヒートアップする。

 本当は怒りたいわけじゃなくて、助けを求めたいのだけれど。


 もしかしたら助けを求めること自体、クロウ先生の迷惑になるのかもしれない。

 そんな思いが、口をついて出る言葉を歪めてしまう。


「先生の出自のことは塾長から聞きました。結局、先生もそっち側……メドゥーサたちの味方だったってことですね」


 そう言った瞬間、クロウ先生はハッとした表情を浮かべる。

 そして、顔を俯かせた。


「――そうだ。俺は魔物の血を引いているから、もう王都にはいられない」

「……っ」


 そんなことが言わせたいわけじゃないのに。

 こんなことが言いたかったわけじゃないのに。


 一瞬で後悔するけれど、吐いた言葉は取り消せない。


 気まずい沈黙が流れる中、口を開いたのはメディナちゃんだった。


「もう。わたしは二人にちゃんとお別れをさせてあげたくてせっかく呼んだのに……ケンカするなら意味ないじゃない!」


 軽やかに、唇を尖らせながら言う。

 お別れという言葉が耳にひっかかって、私は慌てて顔をあげた。 

 

「……え?」

「だから、お別れ。ルーナがオブシディアに会えるのは、これで最後なのよ?」

「なんで……なんでそんなこと!」


 そんなこと、メディナちゃんに決められても困る。

 戸惑いの声をあげる私の耳に、続いて女性の笑い声が聞こえてきた。


 ちょうど一週間前、あの星祈祭(せいきさい)のオブジェの前で聞いた笑い声だ。


「ふふふ。弱いうえにものもわかっていないのね?」

「あなたは……」

 

「クロウとメディナの言う通り。もうクロウが王都に戻ることはないし、もちろんあなたと会うこともないわ」


 いつからそこにいたのか、部屋の奥の暗闇から女が姿を現した。

 一週間前に戦い、マギスの特任講師たちを石に変えてしまった、憎きメドゥーサがそこにいた。


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