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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第3章 魔物の血を引く者

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11.メドゥーサの力

 ミリカ先生とナタネ先生、それにトマリ先生と私。

 いつもとちょっと違うメンバーで、街に繰り出す。


 トマリ先生は、かつて一時だけ特任講師として働いていたと聞いた。

 私以上の戦力になってくれることだろう。


 王都の街は、先ほどナタネ先生の腕の中で見たときよりもずっと悲惨な状態になっていた。街の半分以上が硬化してしまい、植物の一本すら動くことを許されない。

 もう少し侵食が進んだら、マギスの学び舎や王立魔法学校まで石にされてしまう。

 そんなところで、不自然に硬化は止まっていた。


「撤退した……わけじゃなさそうだな」


 先頭を歩くナタネ先生は、そう言いながら警戒を緩めず進み続ける。

 そして、私たちは城門の前にある、星祈祭(せいきさい)のオブジェに辿り着いた。


「この辺りから、街の硬化が始まったはず……危ない!!」


 真っ先に敵の気配に気がついたミリカ先生が、私たちの頭上に土の壁を展開する。

 そこに、ぶすぶすと黒くて硬い、針のような物体が突き刺さる。


「これは……髪?」

「よく来たわね。オブシディアの仲間?」

 

 私たちを待ち受けていたのは、一人の女性だった。

 私が出会ったメディナちゃんとは違う。大人の女性に見える。


 黒いドレスを身につけ、黒い髪を自由自在にうねらせる。

 メドゥーサの髪は蛇だと言われるが、それはきっとこの動きを見たものが喩えたのだろう。

 まるで命を持ったかのように、髪の一本一本が動いていた。


 長い睫毛の下、赤い瞳が私たちを睨みつける。


「目を合わせないで! 硬化されちゃいます!」


 私は図鑑で読んだ知識を、仲間たちに共有する。

 すると敵対しているはずの黒髪の女性――メドゥーサは、悲しそうに眉を下げた。


「そんな、まさか。目を合わせたくらいじゃあ硬化しないわよ。あなたは、オブシディアと目を合わせたことがないの……?」


 メドゥーサの悲しげな声に、私はハッとする。

 クロウ先生とも、メディナちゃんとも、目が合ったって何ともない。

 目の前に本人がいるのに、図鑑の知識でものを言うのは心ないことかもしれない、と反省した。


 しかし次の瞬間、その気持ちはひっくり返される。


「……それとも、試してみる?」


 気づいたときには目の前にメドゥーサが立っていた。

 私の頭を、メドゥーサの細くて白い手ががっしりと掴む。


 骨が見えるほど細く、病的に白い手なのに、想像できないほど力は強い。

 私はなす術なく、頭を固定されメドゥーサの目を覗き込むことになる。


(まずい――!!)


 目を見ただけで石にされるのが嘘だとしても、その気になれば私に硬化魔法をかけるのなんて容易いはずだ。

 なんとか体に風の魔力を巡らせて、鎧を作ってみるが、効き目があるのかは食らってみないとわからない。


「させないっすよ!!」


 私とメドゥーサの間に、トマリ先生が体をすべりこませた。

 私は拘束を解かれ、石畳の上を転がる。


「邪魔するのね。じゃああなたからよ!」


 メドゥーサもトマリ先生も、臨戦体制に入る。

 もちろん、ナタネ先生もミリカ先生も。


 私は体制を立て直しながら、三人の背中に声をかける。


「弱点は風です! 硬化もですが、髪も魔力を封じる能力があるので気をつけて!」


「――了解っす! 風の刃よ!」


 トマリ先生が先陣を切り、風の魔力で作った剣でメドゥーサに斬りかかる。

 メドゥーサは髪を使ってそれをいなしながら、後衛に位置するミリカ先生を警戒するように視線を向けた。


(一番の火力がバレてる! 魔力量を感知できるの?)


 ミリカ先生は別に戦えそうな見た目をしていないのに、メドゥーサにいきなり狙われるなんて。

 私は嫌な予感がして、ミリカ先生をいつでも補助できるように距離を詰める。


 しかし、ミリカ先生は叫んだ。


「来ちゃダメ!!」

「え――」


 次の瞬間。

 バチバチと火花が散る。


 ミリカ先生が纏った風の鎧が、ひとりでに悲鳴をあげていた。

 外から攻撃を受けて壊れようとしているのだ。


 考えられる攻撃なんて、一つしかない。

 遠くからミリカ先生の方を見ただけの、メドゥーサが笑う。


「目を()()()()()固まるって? ひどい話だわ」


 ミリカ先生の鎧が壊れていく。

 どうにかしないとと思うのに、何もできない。

 名案を思いつくほどの時間もない。


「――ただ見るだけで十分よ、人間なんて」


 次の瞬間には、ミリカ先生は色を失い、苦悶の表情のまま固まってしまっていた。


 



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