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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第3章 魔物の血を引く者

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10.ルーナの推理

 塾長ってドワーフみたいだ、ってずっと思っていた。

 クロウ先生が前に使った硬化魔法も、本当は魔物にしか使えないものだって知っていた。


 それでも、夢にも思っていなかった。

 まさか二人が――あの、恐ろしい魔物たちと同じだなんて。


 私は改めて、塾長のことをまじまじと見つめる。


 深いシワの刻まれた温厚な顔だけど、実は眼光の鋭い瞳。

 ゴツゴツした手や体は相変わらず岩のようで、でも人間と何も変わらない。


 にこりと信頼の笑みを浮かべながら、塾長は私が何か言うのを待っている。

 「目の前のものに向き合うこと」――それを私の美徳だと、褒めてくれながら。


 だったら私にできるのは、思うことを素直に言うだけだ。

 

「はい。……はい! 全然怖くありません。塾長のことも、クロウ先生のことも。だってどんなひとか知ってるから」


「そうじゃろ、そうじゃろう!」


 塾長は嬉しそうに笑顔を深める。その表情に毒は一つもない。


 私は知らないものが怖いのだ、と思う。

 魔物たちのこと、よく知らないから怖いのだ。


 クロウ先生の顔を、脳裏に思い浮かべる。


 不器用だけど優しいひとだ。

 私みたいなダメダメな生徒でも見捨てなかったし、先生になってからもそう。

 先生は一度だって私のことを見捨てることはなく、いつだって助けてくれる。


 そう、よく知っている。

 だからちっとも怖くない。


 それに、魔物の血を引いていると知って、合点がいくこともあった。

 私の脳内で、点として存在していた事実の羅列が、一つの線になっていく。


 クロウ先生が硬化魔法を使える――メドゥーサの血を引く、魔物との混血であること。

 数日前クロウ先生を探していた不思議な少女、メディナちゃんの存在。

 そのクロウ先生が今日、珍しく遅刻してまだこの場に現れていないこと。

 

 ――そして、今の街の惨状。


 私は塾長の方に向けていた視線を上げ、トマリ先生の顔を見る。

 

 前に魔物料理屋で口論になって、私が無理やり走って逃げ出してから、話していなかった。

 空白の一ヶ月ほどを埋めるように、私は出来るだけ胸を張って、トマリ先生に告げた。

 

「心配してくれて、ありがとうございます。でも私いかなきゃ。きっと、クロウ先生を助けることになるんです」

「……クロウくんを?」


 トマリ先生もまた、クロウ先生と親しい友人だ。

 思うところがあるらしく、私の言葉に驚いて目を丸くした。


「はい。先生たちも、塾長も……私の考えを聞いてもらってもいいですか?」


 きっと街のために動いているだろう、とこの場の誰もが信じているけれど、実際クロウ先生がどこで何をしているのかはわかっていない。

 それを推理するような私の言葉に、皆が興味を示した。


「うむ。話してみてくれ」


「はい! 実は昨日、メディナちゃんという女の子に街で会って――」


 私は話す。

 メディナちゃんが「オブシディア」というひとを探していたこと。


 思えばメディナちゃんは()()()()()()()を知らないような反応をしたり、人を探しているというのに何も情報を持っていなかったり、不思議なところが多かった。


 本当におぼろげな情報だけで、クロウ先生を探しにきたのだ。

 魔物の世界から、何もわからない人間の街に。


 きっと……仲間を探しに。


 そして見つけたクロウ先生をさらったのだと思う。

 

 街を石にしたのも、もしかしたら人探しのためかもしれない。

 それか、クロウ先生が抵抗して戦いになったのか。


 細かいことはわからないけれど、きっとクロウ先生はメドゥーサに捕らわれている。


 そう結論づける私に、トマリ先生は焦ったように言葉を紡いだ。


「だ、だったら尚更――」


 言いたいことは手に取るようにわかった。

 クロウ先生なしで、私たちは街を半分石にしてしまうような実力者と戦わなければならない。


 とても危険だし、正直怖い。

 だけど私は覚悟のこもった目で、トマリ先生を見つめ返した。


 隣にいるナタネ先生もミリカ先生も、多分同じ顔をしている。

 私たちは退かない。


 それを察知したトマリ先生は、ひとつため息をついて、頭を右手でガシガシと掻いた。


「……わかったっすよ。でも、クロウくんが心配なのは俺も同じっす。ついていかせてもらうっすからね」


 苦い声で放たれた言葉に、一番に反応したのはミリカ先生だった。


「やった! 仲間が増えたわね!」


 嬉しそうに手を差し出すミリカ先生の手を、トマリ先生は渋々握り返すのだった。

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