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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第3章 魔物の血を引く者

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2.捜索隊の発足

 その頃一方。

 演習場の前で、クロウはため息をつきながら、愛しい生徒たちに容赦ない説教を浴びせていた。


「先生を待ち伏せして何をするつもりだ。ロナウド、アメル」


 自分の生徒であり、悪ガキであり、このマギスの学び舎という塾を隅々まで知り尽くしているロナウドの方はわかる。

 意外なのは、マギスに通い始めたばかりのルーナの生徒・アメルがこの場にいることだ。


 まぁ、どうせロナウドがそそのかしたのだろうが。


 

 その日もクロウは後輩であるルーナを鍛えるため、早めにマギスの学び舎へ足を向けていた。

 

 特訓の舞台である演習場に向かい、扉を開ける魔法を使おうとしたところで人の気配を感じた。

 

 まさか侵入者ではないだろうな、と杞憂したのも束の間。

 次の瞬間には、見慣れた赤毛が目の前に覗いていた。


 どうやらクロウが演習場に来ることをわかって、待ち伏せしていたらしい。

 

 そうなれば、事情も大抵は予想がつく。


 クロウにおでこを小突かれたロナウドは、大げさに痛がっておでこをこすりながら弁明する。


「だって、アメルが先生たちの特訓を見たって言うから。もう先生になれてるのに、今からさらに特訓するなんて変だろ? だから様子を見にきたんだ!」

「アメルのせいにするな。というか、そんなことで学校を抜け出すな」


 そう、今は王立魔法学校の昼休みに当たる時間だ。

 学生であるロナウドとアメルは、学校にいなくてはならないはず。


 ゆえにクロウは、冷ややかにロナウドの言い分を一蹴する。

 

 それから、頭の中で少し、言い訳を考えた。


 ルーナが特訓に取り組んでいるのは、事実。それは別に隠さなくてもいいだろう。

 

 しかし、特訓している理由は言えない。

 マギスの学び舎の特任講師の役目――魔物と戦い、王都を守るための魔法使いとしての活動は、秘密裏に行わなくてはならないからだ。


「学校を抜け出してほしくないなら、教えてよ。なんで先生はいきなり、ルーナ先生に稽古つけだしたのさ?」

「ぼ……僕も、気になります。やっぱり、僕のせい……?」


 意外にも、アメルも弱々しいが声をあげた。

 時期が重なっているからか、自分が問題児だからルーナが特訓を受けているのでは、なんて深読みしたようだ。


 クロウは数秒悩み、渋々答えた。


「少なくとも、アメルのせいではない。そうだな……ルーナが来たら話すか。それで、特訓を見せてやるよ」


 そうしたらこいつらも納得するだろう。

 案の定、二人とも目を輝かせて頷いた。



 しかし。

 待てど暮らせど、ルーナは来なかった。


「おかしいな。5分10分の遅刻ならたまにあるが……もう30分も経つ」

 

 そう言ったクロウの声には、苛立ちよりも心配が色濃くにじんでいた。

 

 ルーナに異変があるとしたら真っ先に思い浮かぶのは魔物のことだが、今日はまだマギスの学び舎には何の情報も入っていない。

 

 だとしたら他の事故か事件か。

 王都は表通りこそ治安がいいが、一本裏道に入ると段違いの()()が広がっているなんてことも珍しくない。

 

 ロナウドが、にやにやしながら提案する。


「なら俺たち探してこようか。入れ違いになったらまずいから、クロウ先生はここで待っててよ」

「……学校に戻りたくないだけだろう」

「いやいや、マジで探しに行くって! ルーナ先生のこと心配だし!」


 こくこく、と隣でアメルも頷く。

 

 わざとらしさは否めないが、実際人手は多い方がいいだろう。

 生徒たちの申し出に、クロウはしぶしぶ頷く。


 二人が去っていったのを確認して、演習場の扉を開ける。

 普段、ルーナとの訓練では使わない森の方に向かい、クロウは適当な切り株に腰かけた。


(……魔物絡みじゃないといいが、なんて。俺が言えたことじゃないな)


 ルーナを心配する一方で、クロウは冷たく自嘲する。

 

 ルーナはあのあと――クロウが魔眼を見せ、石化魔法を使ったあとも、何も聞いてこなかった。

 戦いが終わってから一か月経つ今に至るまで、何も。


 魔物に詳しい彼女のことだから、知らないということはないだろう。

 石化魔法は、メドゥーサにだけ使える魔法だ。


(俺が魔物だと知ったら、あいつは――)


 真実を黙っている罪悪感よりも、本当のことを知られたらと考えたときの恐怖の方が強かった。

 できるならこのまま黙っていたい、と思う。


 そんな自分は、ルーナよりずっと弱い。

 クロウは自虐的にそう思いながら、ひとり、演習場で誰かが戻ってくるのを待った。


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