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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第3章 魔物の血を引く者

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1.迷子の少女

 マギスの学び舎、特任講師。

 魔物と戦い、王都を守るその任務に私も参加したい。

 マギスの学び舎の講師として、自分自身に誇れるように。


 ――そんな決意をしてから、一か月近く。

 私はひたすらクロウ先生に鍛えられていた。


 私が特任講師になると言ったあの日、クロウ先生が魔力計測板を取り出したときからなんとなく予想はついていたけれど。

 それはそれは厳しい特訓だった。

 少なくとも実践魔法に関してはとことんポンコツな私にとっては。


 計測板に向かって魔法を撃ちつづけ、魔力を枯らしては回復させて、少しでも大きな魔法を出そうとする。

 学校の教育ではありえない、自身の限界を超えるための特訓だ。


 それを自分の受け持つ授業前にやるのだから、その日一日疲れてしかたない。

 魔力ポーションを飲みながら、なんとか生徒に悟られないように空元気で過ごす毎日だった。

 

 しかし厳しいだけあって、効果もあった。最初のころは、目盛り二つぶんの火魔法しか出せなかった私だけど、今では目盛り四つぶんの威力を出せる。


 ……まぁ、魔力計測板には三十まで目盛りがついているから、私の成長なんて微々たるものだ。

 それでも、クロウ先生は納得してくれたようで。

 今日から、新しい特訓カリキュラムが始まるらしい。


(これで特訓は終わり! って、言われると思ったのになぁ)


 終わりのない努力の日々に不満を抱えながらも、私は今日も昼間からマギスの学び舎へ向かう。


 いくら苦しくても、自分が自分のために決めたこと。

 マギスの特任講師としてやっていくために、頑張ろうって気持ちは本物だ。


 明るい日差しの注ぐ中、私は自宅からマギスの学び舎への道をたどる。

 

 ハイサンダーウルフの襲撃から少しして、国中で続いていた異常気象――王都に雨が集中し、その他の場所で日照りが続くという異例の事態は終わりを迎えた。

 最近では王都もすっかり晴れ空を見せてくれるようになった。

 乾いた涼やかな風は、すっかり街を秋の色に変える。

 

(今日も気持ちいい天気……って、あれは――)


 そんな中、日陰でぼんやりと佇む小さな人影が、私の目に止まった。


 まだ子どもだろう、小さな背をしてワンピースを身にまとった女の子だ。

 この軽やかな天気に似合わぬ、沈んで丸まった肩。

 シルエットしか見えなくても、その子どもが困っていることはよくわかった。


「ねぇ、大丈夫? 何か手伝えることはある?」


 私は思わず少女に駆け寄り、声をかける。

 少女はばっと顔をあげた。その大きな赤い瞳には、涙が浮かんでいる。


「ひ……人を、探して、いるの……」


 迷子だろうか。

 漆黒の長い癖っ毛をまとめずにおろしていて、同じく黒いワンピースを着ている。真っ黒でもこもこした塊のようだ。

 

 私は地面に膝をついて、少女と視線を合わせる。


「お名前は?」


 少女は迷うように視線を泳がせながら、私の質問に答える。


「わたしは、メディナ。探しているのは、オブシディア……」


 ……たしかに質問の意図がわかりにくかったかもしれない。

 しかし二つの情報を一度に伝えてくれたメディナちゃんは、困った顔で続けた。


「でも。オブシディアの顔は、知らない……」

「ええっ」


 私は思わず情けない声をあげてしまった。

 顔もわからない人探しなんて、途方に暮れるしかない。


 せめて顔がわかれば、遠見魔法でなんとか……私にはできないけど、誰かがなんとかできたかもしれないのに。

 人の名前だけでは、検索をかけることもできない。


(人探しの定番といえば、酒場……? だけど、小さい子を連れて行くのは不安だし……)


 ウンウンと唸りながら考える私を、メディナちゃんは不思議そうに見つめている。

 見ず知らずの他人に優しくされることに、慣れていないのかもしれない。


 そう思うとますますこの子のことを助けてあげたくなってきた。

 私は苦し紛れに、提案する。


「人探し、はわからないけど……探し物なら、図書館なんじゃない?」

「図書館?」

「場所、わからないよね。私はルーナ。図書館まで案内するよ!」


 と言いながら、私はちらりと腕につけた時計を確認する。

 もうとっくにクロウ先生との特訓の開始時刻は過ぎていた。


(まぁ……人助けのためだし、ちょっとくらい許してくれるよね?)


 歩き出す私に、メディナちゃんは従順についてくる。

 その背後に太陽が落とす影は、ジリジリと蠢いていた。

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