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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第2章 魔物嫌いの葛藤と決意

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■アメルの目撃

 アメルは王立魔法で失敗をしたから、このマギスの学び舎という塾に来た。

 実践魔法の授業で魔法を暴走させて、クラスメイトたちを傷つけかねない事態を起こしたのだ。


 魔法が制御できるようになるまで、マギスの学び舎で特訓すること。

 当然、それまでは魔法学校での実技の授業には、参加させてもらえなくなった。


(まぁ、しかたないけれど。僕がうまくできないのが悪いから……)


 その日は午後から実践魔法の難しい演習の授業がある日だった。

 

 他の生徒たちが魔法に打ち込む中、アメルは見学すらさせてもらえなかった。

 ちょっと失敗した、では済まない危険な魔法を扱うから――学校の先生たちにそう言われて、アメルはしぶしぶ学校を早退した。


 寮に帰ってもひとりぼっちだし、その日は夕方からマギスで授業がある日だった。

 それなら早くマギスに行って、自習でもしていよう。

 そう思ったアメルは、まだ授業開始の時間よりずっと早い昼過ぎに、マギスの学び舎へ向かった。


 エントランスに入るが、当然誰もいない。

 誰か先生でも通りかかったら、どこで自習したらいいか、尋ねられるんだけれど。

 待合席になんとなく座って、アメルは誰かが来るのを待った。


 そうしていると、やがて玄関の扉が音を立てて開いた。


「はぁ……今日も大変な特訓かぁ……」

 

 そうぼやきながら入ってきたのは、よく知った顔だ。


「ルーナ先生!」


 アメルは安堵からぱっと顔を輝かせ、自習室について尋ねようと席を立つ。

 しかし、ルーナ先生の顔に浮かんだのは驚きと焦りだった。


「あ、アメルくん!? どうしてここに……」


 冷や汗をかきながらそう尋ねるルーナ先生に、アメルまで焦る。

 もしかしたら、早く来るのはいけなかっただろうか。

 邪魔なら帰ろうかな――なんて後ろ向きな思考が、即座にアメルの脳内を流れ出す。


 それを遮ったのは、知らない先生の声だった。


「アメル、自習なら二階の大教室を使うといい。大きな教室に今は誰もいないから、ちょっと寂しいけどな」

「クロウ先生!」


 ルーナ先生にクロウ先生と呼ばれた黒髪の無愛想な先生は、淡々と自習室の案内をするだけして、あとはアメルの方をちらりとも見なかった。

 ルーナ先生にだけ視線を向けて、アメルに話しかけたときよりも厳しい声で言う。


「ルーナ、五分遅刻だ。さあ、今日もやるぞ」

「すみません! はい、よろしくお願いしますっ」


 ルーナ先生はビシッと背筋を正して、クロウ先生についていく。

 アメルがその背中を見つめていると、二人がヒソヒソと小声で何か話しているのが聞こえた。


「――が、……アメルくんにバレたら――」

「――のためだ。しかたないだろう。それより……――」


 途切れ途切れに、キーワードだけが聞こえてくる。

 そのまま、ルーナ先生はクロウ先生に連れていかれてしまったのだった。


 

  *   *   *


 

「だから、僕はあれがなんだったか、考えて……僕のせいで、ルーナ先生が特訓させられてるんだって、思って……!」


 マギスの学び舎、エントランス。

 

 数日前に同じ場所で目撃した出来事について、泣き声混じりにアメルが話す。

 それを、ロナウドは黙って聞いていた。

 

 そして、最後まで話し終わったアメルの肩を、励ますようにトントン叩く。


「なんだ、そんなことなら大丈夫だ。アメルのせいじゃないぞ」

「え……?」


 きっと、ルーナ先生が演習場に連れていかれるのを見て、自分の授業が上手くいっていないから、ルーナ先生まで無理な特訓をさせられているのだ……なんてアメルは誤解したのだろう。

 しかし、ロナウドにはそれは違うとわかった。

 

 信じきれない、という顔をしているアメルに、ロナウドは声を潜めて、耳打ちする。


「ルーナ先生から聞かなかったか? あの人、魔法が下手っぴなんだぜ」

「聞いた……けど。でもそんなの……」

「いや本当に、マジなんだって。ここだけの話、実技テストの点なんかずっと俺より低いんだよ」


 ルーナ先生本人が聞けば、勝手にバラすなと怒られることだろう。

 しかしアメルを励ますために、ロナウドは話し続ける。


「それでさ、ルーナ先生の学生時代の担当講師が、クロウ先生。だから、アメルにとってはどっちも先生だけど、二人は二人で魔法の先生と生徒なわけ」

「なる、ほど……」


 少しだけ表情が和らいだアメルに、ロナウドは続ける。


「そ! つまり、別に普通のことなんだよ。多分二人で演習場に行って、魔法の特訓してたんだろ。ちなみに、クロウ先生の授業がめっちゃ厳しいのも、普通のことだぜ」


 アメルを安心させるべく、ニカリと笑顔を浮かべたロナウドに、やっとアメルの涙が引っ込んだ。

 これで一件落着、と思ったところに、アメルは純粋な顔で一つの疑問を口にする。


「でもじゃあ、なんでルーナ先生は、急に特訓なんか? だって、ロナウドくんが気づいたの、最近なんですよね?」


 そう聞かれて、ロナウドはぱちり、瞬きをする。


「た……確かに!! それはそうだ。もうルーナ先生は、一人前の魔導師として免許も持ってるはずで……今から魔法の練習をして、新しく何かするつもりなのか……」


 クロウ先生とルーナ先生。

 二人の間を流れる、ピリピリした雰囲気の原因はわかった。

 アメルが目撃した二人の特訓。厳しいものであるからこそ、二人は気を張り詰めさせているのだろう。


 しかし原因がわかったところで、なぜ特訓をしているのか、どうなったら終わるのか――それがわからない限り、解決にはまだ至っていない。

 これからもロナウドは、いつ終わるかわからない二人のピリピリを感じ続けなくてはならないのだ。

 それは困る。


 目の前には、心配そうな顔をしたアメル。

 ロナウドの瞳が、キラリと怪しく輝いた。


「なあ、アメル。二人の特訓の理由、気になるよな――?」

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