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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第1章 王都の塾講師の秘密

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4.ルーナの決意

「……だから、クロウ先生は私の憧れなんです。あんなふうに、私も誰かの苦手なことを補いたい。それにクロウ先生より、できない人にも向き合えますよ! 私は!」

 

 憧れと言いつつも、ちょっとだけ最初の冷たかった頃を根に持っている私は、そうアピールをする。

 冷たくされた経験を反面教師に、私は生徒たちに優しく接するのだ。そう息巻くと塾長もミリカ先生も声をあげて笑った。

 

「好かれてるのか嫌われてるのか、微妙なとこじゃのう」

「本人には内緒にしてくださいね!」

 

 私は慌てて塾長とミリカ先生にそう念押しした。

 笑いながらも頷いてくれたし、告げ口をするような人たちではないから大丈夫だろう。

 

「さて、ではあとは施設案内と決まり事の説明じゃの。施設はだいたいわかっておるじゃろうから、サクッと行くぞ」

 

 塾長はその言葉を合図に立ち上がる。私とミリカ先生もその後に続いた。


 塾長が教えてくれたのは、主に教室や施設を使うときのルールだった。

 生徒として通っていたときには知らなかったルールもちらほらあり、そういうものはメモ帳に適宜記していく。完全個室の小教室を使うときは予約表への記入が必要とか、施設の利用時の注意点とか、真面目な話が続く。

 そんな中でも楽しかったのは、地下の演習場の説明だ。

 

 演習場は実践魔法を練習するための施設なので、私がこのマギスの学び舎の広い校舎の中で一番お世話になった場所だと思う。

 しかし、扉には魔法で鍵がかけられていて、生徒一人では開けられないようになっているのだ。

 その鍵の開け方を教えてもらえるとあって、私の目は輝いた。

 

「知っての通り、この扉には鍵がかかっているわ。簡易魔法陣で開けられるから、その書き方を教えるわね」

 

 生徒には見えないように開けること、という補足とともに、ミリカ先生は指を扉に向けて伸ばす。

 

「属性は土。まず鍵穴の形を描いて、その後に鍵本体を鍵穴に刺すのを想像して。鍵の突起は横に三本。これはときどき変わるから、わからなくなったら誰かに聞いてね」

「鍵穴を描いて……突起は三本……と」

「やってみて」

 

 私はミリカ先生に促されるまま、指先に土属性の魔力を集中させる。そして、扉に向かいながら、空中に鍵穴の絵を描く。そこから飛び出すように立体的に鍵を描いて、最後に鍵を回すイメージで円を描く。

 

 ――ガチャリ。

 重い音がして扉の鍵が開く。私は思わず歓声を上げた。

 

「できたできた。これ、わかりやすくていいよね」

「はい……!本当にそのまま鍵のイメージで開くんですね。簡易魔法陣ってすごいです」

「そうじゃろうそうじゃろう。ちなみにこれ作ったの、誰か気になる?」

「気になります!」

 

 私が素直に答えると塾長は嬉しそうに両手で髭をもふもふする。

 

「ふふん。何を隠そう、このワシが若い頃に作ったのじゃ!」

「おおーっ」

 

 私の反応は塾長の希望通りのものだったらしい。浮かれた私たちの隣で、ミリカ先生だけがため息をついた。

 

「おかげで解除の仕方がわからない、オーパーツだけど……」

 

 そんな呟きが、地下階段の薄暗い中にこだました。


 

 一通り案内を受け終わってマギスを出ると、もう空は暗くなっていた。

 施設案内自体はハイペースに進んだのだが、決まり事をしっかりメモしてから帰ろうと思ったら、祝賀会の時間と合わせてずいぶん遅くなってしまった。

 

 私は外に出て、一つ深呼吸をしてから家路を辿る。

 帰る先はもう魔法学校の寮ではなく、王都に借りたばかりの自分の家だ。

 

 実は、今日は話さなかったけれど、私にはマギスで働くことを決意したもう一つの理由がある。


 それは、魔物に怯えなくていい世界を作ること。もちろん、世界中の魔物を倒してしまうとかは無理なので、“私にとって“の話だ。

 

 ここ、マギスの学び舎で、これから私はいろいろな生徒に出会うことだろう。彼ら彼女らを立派な魔法使いに育て、一人立ちさせること。

 それすなわち、強い魔法使いの知り合いが増えることでもある。

 

 自分で戦えない、魔法が下手くそな私にできること。

 それが、強い魔法使いたちを育てて、この王都の人々を守ってもらうことだと思ったのだ。

 

 恐ろしい魔物襲来のニュースや教科書で読んだスタンピードの記録。もしそんなことが次に起こったときに、私が無事でいるために……ううん、みんなで無事に暮らしていくために!

 

「私は、立派な先生になってみせる」

 

 誰にともなくそう決意を表明して、私は帰路につくのだった。

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