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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第2章 魔物嫌いの葛藤と決意

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7.魔物の正体

 トマリ先生に宣言して、私は閉まりかけたシャッターから外へ飛び出す。

 雨足は来たときよりずっと強まっていた。傘を置いてきてしまったことを後悔したが、しかたない。

 今にも雷が鳴りだしそうな暗雲の下、私はとりあえず城門に向かって走る。


 街には人が一人もいない。

 きっとみんな家の中にこもっているのだろう。

 殺風景な石畳だけの夜の街は少し怖いが、まだ避難が必要な状況ではないという証拠でもある。

 

 城門に魔物が集まっているというだけで、まだ破られてはいないはずだ。

 私は自分にそう言い聞かせて、すくむ足を動かす。


 マギスの特任講師の三人――クロウ先生、ミリカ先生、ナタネ先生もすぐに知らせを受けてここまでやってくるはずだ。

 でも、もともと城壁の近くにいた私の方が情報も移動も早い。

 三人がやってくる前に、少しでも情報を集めて力になりたかった。


 早く動けば、それだけ事態も小さくて済むはず。

 城門へは15分ほど走ればたどり着いた。

 あとは、私にできることをやるだけだ。


 ずぶ濡れの身一つで走ってきた私を見て、城門に詰めていた門番の兵士の一人が、ぎょっとした顔で近寄ってきた。


「何してる、君! ここは危険だ、今魔物が――」

「魔物の……正体、わかり、ますか」


 全力で走ったせいで息が上がっている。そんな中、私は尋ねた。

 門番は眉をひそめて、首を振る。緊急事態だからか、その語気は強い。

 

「わからないから危険なんだ! 君のような若い女の子が来るところじゃない!」

「ちょっと、今のは聞き捨てならないね。若い女はここにもいるけど?」


 怒鳴られる私に、また別の門番が助け舟を出した。今度は女性のようだ。

 若いかどうかは身に着けている兜のせいでわからなかったが、とにかく助かった。


 門番の男女が揉めている間に、私は走り出し、できるだけ城門に近づく。


「風、火、土! 夜闇をくぐり、形あるものを見通す視力をくださいっ!」


 両目のふちに指を当てて、魔力を込める。唱えるのは透視魔法の即席の詠唱。

 一瞬だけ、城門を越えた先の風景が目に映る。

 

 城門の向こうに広がる光景は、いつもと全く違っていた。

 

 降り続く雨でできた水たまりに、ぱち、ぱち、と火花が散っている。

 火花の正体はおそらく雷だ。たまたま飛んできた虫が水たまりに体を落とすと、次の瞬間にはジュッとこんがり黒焦げに焼き上がってしまう。

 小さな火花に見えて、高圧の電流が込められているに違いない。

 

 その電流の中心で、大きな魔物が眠っていた。

 人の身長を超えるどころか、三、四倍はあるだろう体躯を持った、白銀の毛をしたウルフ種の魔獣。

 周囲を囲むように、前に戦ったイビルイーターをはじめ、さまざまな種類の小型の魔物がうじゃうじゃとたむろしている。

 

 すぐに映像はかき消えてしまったが、そこに見えたものは私の脳裏に焼き付いた。

 門番の二人が、私がこれ以上門に近づかないように止めに来るが、そうでなくても私はとっくに踵を返していた。

 

 何かおかしいと思っていたのだ。

 前に王都に侵入してきたイビルイーターもカースイーターも、私からしたら恐ろしい魔物の一種ではあるが、種族単独で目的もなく王都に突っ込んでくるような凶暴な種ではない。

 むしろ、慎重で頭脳派なのがイーターたちをはじめとするハイエナ系の魔物の特徴だったはずだ。


 それがどうしてあんな事件を引き起こしたのか。

 疑問に思っていたことが、門の外を一瞬見ただけで解決してしまった。

 

 イーターたちは囮だったのだ。

 言い換えるなら斥候役。

 獲物の――王都の戦力を測り、できればちょっとくらい弱らせておくことを目的とした、言葉通りのかませ犬。


 そうであれば全て納得がいく。

 そして、確かなことが一つ。

 

 カースイーターをかませ役にできるということは、城門の前で眠っている魔物はカースイーターを超える強さの魔物ということだ。

 

 その名前は、ハイサンダーウルフ。

 『雷の原種』と呼ばれる、魔物の中でも頂点に君臨する強さの魔物だ。

 特に、空腹時には気性が荒く、目に映るものすべてを破壊する雷の化身となると言われている。


(王都以外では、日照りが続いてるって……雷もきっと、しばらく鳴ってない……)


 つまりハイサンダーウルフは今、空腹の頂点にあるはずだ。

 目覚めたら、きっと王都で破壊の限りを尽くすに違いない。


 今、私にできることは、一つだけ。

 私は門番に向けて、雨にも負けない、できる限りの大声で叫んだ。


「逃げて!! 今すぐここから、逃げてください!!」

 

 

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