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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第2章 魔物嫌いの葛藤と決意

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4.新しい繋がり

 実践魔法が苦手、というのは、上手く発動できないとか、使いこなせないとかいう意味ではなくて。


 アメルくんの場合は、制御ができないということだった。

 

 こういうこともあるのか、と、私は目の前に上がる火柱を見てしばらく呆然としていた。

 すぐにアメルくんが焦ったように水魔法を使って、火柱は消えた。

 当然水魔法も出力が大きすぎて、あたりは滝でも流れたかのようにびしょ濡れだ。


 自身も水をかぶって濡れてしまったアメルくんが、今にも泣き出しそうな顔でこちらを見る。


「ご、ごめんなさい……また失敗しちゃった……」


 謝るアメルくんの体は、ひどく震えていた。

 その震えはただ水の冷たさだけによるものとは思えなくて、私はすぐさまその背に駆け寄ったのだった。



   *   *   *



 アメルくんにあたたかいシャワーを浴びてもらって、濡れた服も着替えてもらってその日はお開きとなった。

 風邪でもひいて、肝心の魔法学校を休むことになったら大変だ。


 彼が帰るまでの間、私はずっと励ましの言葉をかけ続けていた。

 失敗なんて誰にでもあるし、被害は何一つ出ていないし、何の問題もない。

 それより今日暖かくして眠る方が大切だと、雨が続いて肌寒い王都の夜を帰って行こうとするアメルくんの背に私は声をかけた。


「……で、塾長? 詳しく聞いてもいいですか?」


 そして、塾長室。

 普通なら残業になる時間、他の先生たちももうみんな帰ったであろうなか、私は一人残って塾長を問い詰めていた。


 いつも私は塾長にビビっているけど、今日はそんな場合ではない。

 肝心なことを伝えずにいきなり初回授業に挑まされ、私は怒っていた。


 危険だったからじゃない。アメルくんが不要に傷つく可能性があったからだ。


「生徒がどういう経緯でここに来たのか、何を求めてるのか。もちろん私も個別に聞きますけど、重要なことは先に言ってもらえないと困ります。もしアメルくんにたくさん人のいる中で無理やり魔法を使わせてたら、もし誰か怪我させてたら――」


「そうじゃな、ルーナくんの言うとおりじゃ。すまんかった」


 しゅんとした様子の塾長を見て、私は言葉を止める。

 塾長は、改めてアメルくんについて知り得ることを私に説明してくれた。


 魔法学校でも同じように、実践魔法の授業でアメルくんの魔法は暴発してしまったらしい。

 幸い人に大怪我をさせることはなかったが、アメルくん自身と数人のクラスメイトが軽いやけどを負ってしまった。


 結果、学校で他の学生と一緒に実践魔法の授業を行うのは危険だと判断されてしまったアメルくんは、実践の授業を全て見学しているらしい。

 そして、魔法を制御できるようになるまでの間、マギスの学び舎で面倒を見ることが決まったのだ。


 アメルくんが最初、やけに引け目を感じている様子だった理由がよくわかった。

 納得すると同時に、ついつい不満が漏れる。


「先に言ってくれたら……」

「口止めされていたんじゃよ。すまなかったな」

「ならしかたないですけど!」


 アメルくんの入塾は、本人や家族ではなく王立魔法学校の判断だ。

 言えないこともあったのだろう。

 腑に落ちないながらも、ルーナはそれ以上塾長を責めるのはやめて、宣言した。


「でも事情は聞けたので、あとは私がやるべきことやるだけですね。アメルくんが魔法嫌いになっちゃわないように、がんばります!」



   *   *   *



 とは、言ったものの。

 アメルくんは順調に演習場の備品を破壊しつづけており、私は途方に暮れていた。


 もちろん本人の前では態度に出さないし、演習場の備品なんてどうでもいいのだけれど。

 どうすれば彼が普通に魔法を使えるのか、私には想像もつかなかった。


 弱い魔法しか使えない生徒なら、まだそれなりのことを教えられたと思う。

 私が学生時代にクロウ先生に教わって助かったことを、そのまま伝授するだけだ。

 

 でも今の状況は逆。

 使()()()()()魔法を適度に弱めなくてはならない。

 私はそんなことしようとも思ったことがないので、困ってしまうのだ。


 一人で悩んでいてもいいことはないと、イレーネちゃんの中間テストのときに学んである。

 私は誰かに相談しようと、タイミングをうかがっていた。


 実践魔法のことを相談するとなると、やはり真っ先に思い浮かぶのはクロウ先生だ。

 しかし、先生とは先日のイビルイーターの一件以降、あまり言葉を交わしていない。

 アメルくんのことを相談するついでに、あの日から私の中でくすぶっているモヤモヤまでバレてしまいそうで、なかなか声をかけられずにいた。


 今日も授業の終わりに先生を探したが、どうやらお休みの日だったみたいだ。


「今日もダメかー……」


 出勤表を見ながらしょんぼりしていると、後ろから声をかけられる。


「あの……その相談、俺じゃダメっすかね?」


 振り向いた先で、頬をかきながらトマリ先生がヘラりと笑った。


 

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