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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第2章 魔物嫌いの葛藤と決意

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3.二人目の生徒

 王立魔法学校では、それなりの頻度で試験が行われる。

 一度の失敗で振り落とされないようになっているのだと聞いたことがある。


 その数ある試験のうちの一つ、夏休み明けの宿題テストが終わった。

 読んで字のごとく、宿題として出されてあった内容をどこまで理解しているか確かめるための、復習用の簡単なテストである。


 イレーネちゃんは、マギスでの復習の甲斐もあってか、いい点数のテストを持って帰ってきてくれた。

 おかげさまで、私も講師として一段階レベルアップすることになる。

 二人目の生徒を迎え入れることになったのだ。


 最初イレーネちゃんに会ったときほどではないにしろ、かなり緊張してその日を迎える。

 エントランスに並ぶ待合のソファで私を待っていたのは、青い髪をおかっぱにした、気弱そうな男の子だった。


「アメルくん?」


 声をかけると、少年はパッと顔を上げた。


「は、はい……」

「はじめまして。私はルーナ、今日からアメルくんの授業を担当します。よろしくね」


 アメルくんは魔法学校の二年生。つまりまだ14歳、生徒の中ではずいぶん若い方だ。

 怖がらせないように目線を合わせ、穏やかに言う。

 しかし、アメルくんはすぐに目を逸らしてしまった。


「すっ、すみません。ぼくが上手くできないから、わざわざ授業なんて……」


 代わりにアメルくんの口からこぼれ出たのは、そんな卑屈な言葉だった。

 

 これは訳ありと見た。

 私はその場に膝をついて、座っているアメルくんと視線を無理やり合わせる。


「大丈夫、心配しないで! ここでの授業って、結構楽しいことだよ?」


 首を傾げてにこりと笑顔を作ると、アメルくんは長い前髪の下で大きく目を見開いた。


「は、はい……っ」


 返事はさっきと変わっていない。

 でもアメルくんは、少し安心しているように見えた。



 私はアメルくんを連れて、まっすぐ演習場に向かった。

 本当は一度教室に向かって、通知表を見たりヒアリングをしたりするのが定石なのだけれど。

 

 もともと、実践魔法が苦手だということは聞いている。

 それなら少しでも多くの時間を、演習場で使った方がいいだろう。

 ヒアリングは道中にもできる。私は人のいない演習場への道を歩きながら、アメルくんに話しかける。


「先生もね、もともとこの塾の生徒なんだ。実践魔法が苦手で、これからいく演習場ってところでたくさん練習したんだけど」

「お、同じ、です」

「ちょうど実践魔法の授業が始まった頃だよね? 難しいよね」

「はい……えっと……」


 話してくれたと思いきや、すぐにアメルくんは何か言いにくそうに口ごもる。

 もう目の前に演習場の扉があるところまで来ていた。

 私は扉を開ける前に、アメルくんに向き直って尋ねる。


「どうしたの? 何か心配事があったら、遠慮せずに言ってね」

「じゃ、じゃあ……ここって、他に人はいますか!? いるなら、ぼく……」


 できないところを見られたくない、ということだろうか。

 

 予想外の質問に驚きながらも、目の前の扉を確かめる。

 鍵は閉まっていた。きっと中には誰もいない。


「私たち以外、誰もいないみたい。だから何が起こっても大丈夫だよ」


 そう前置きして、扉を開ける。

 鍵の簡易魔法もずいぶん使い慣れてきた。すぐに鍵が開いて、重い扉が自動で開く。


 すぐに目の前に広がる大自然に、アメルくんは予想通り、目を丸くした。


「す、すごい……!」

「でしょう? 思う存分魔法の練習ができるよ。でも、今日はあの木とかがある方には行かないんだけど……」


 私たちが向かうのは、森や山河のあるのとは反対方向。地面にさまざまな用途の白線が引かれただけの、殺風景なグラウンドだ。

 最初の授業のときは、ここで魔法の腕前をチェックする。


 と言っても、アメルくんはまだ二年生なのでそんなに難しい魔法は習っていないはず。

 私は倉庫から蝋燭を取り出して、燭台にセットしてアメルくんの前に置く。


「じゃあまずは、ここに火をつけてみて。触ったりしてもいいけど、やけどしないようにね」


 そう言うと、アメルくんは眉を下げた。


「わ、わかりました。けど……離れて、もらいたい、です」

「え? うん、わかった」


 理由はわからないが、言葉通りアメルくんのそばから離れる。

 魔法が一番使いやすい状態で試してみるのが一番だ。


 私が距離を置いたのを確認して、アメルくんは燭台に手をかざす。


「炎よ――」


 次の瞬間、人の背を越えるほどの大きな火柱が、燭台を飲み込んだ。


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