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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第1章 王都の塾講師の秘密

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24.特任講師への誘い

 マギスの学び舎、地下演習場。

 

 魔物の侵入を無事退けたクロウ先生、ナタネ先生、ミリカ先生……そして、そこにたまたま居合わせてしまっただけの私。

 四人でマギスに戻ると塾長が待っていて、私たちは塾長に連れられるがままにここにやってきたのだった。

 

「三人とも、ご苦労じゃった。怪我のあるものは報告するように。それからルーナ君、今回は災難だったね。巻き込んですまなかった」

「はい。いえ、怖くて一人行動できなかったのは私の問題なので、全然」

 

 はいなのかいいえなのかよくわからない返事をしながら、私は塾長の顔をまじまじ見る。

 

「あの、つかぬことをお伺いするのですが」

「……マギスの成り立ちはクロウから聞いたんじゃったな。答えられることなら答えよう」

「塾長って今、おいくつですか?」

 

 この状況にはほとんど関係のない問いだ。でも気になってしまった。

 普通の人の寿命は長くても百歳くらいだが、塾長の見た目はおじいさんすぎてもはや年齢など想像できない域まで来ている。

 マギスの学び舎設立当初から生きていますと言われても驚かない自信があった。


 そう思って尋ねてみたのだが、塾長は笑って答える。

 

「ふぉっふぉっふぉ、わしはまだ七十二じゃよ」

「なんだ、そっかあ」

「何を期待して聞いたんだ、お前は……」

 

 呆れたように、横からクロウ先生が口を挟む。

 いや、目の前にもしかしたら二百歳以上かもしれない人がいたら聞きたくなるのが多数派だと思うけど。

 

 それから、クロウ先生の火傷の――炎属性の魔物がいたのか、と塾長は真剣な顔で確認していたが、ミリカ先生の魔法によってできた火傷だったので手当金は降りないらしい――治療をした塾長は、改めて私の方に向き直った。

 

「マギスの特任講師のことは、我々以外誰も知らんトップ・シークレットじゃ。お前さんにも、口外はせんでもらいたい」

「はい、皆さんの不利になるようなこと絶対しません。助けてもらいましたし」

「すまないの。それで、一つモノは提案なんじゃが――ルーナ君、お前さんもやらんかね?」

 

 ここまで知ってしまったことじゃし、と塾長は毒気なくニコニコしている。

 それを横から止めたのはミリカ先生だった。

 

「待って塾長。魔物が苦手だって私たち何回も聞いてるでしょう? そんな子を戦わせるなんて……」

 

 ミリカ先生は即座に私を庇ってくれた。ナタネ先生も隣で頷いている。

 しかし、意外にも次に口を開いたのはクロウ先生だった。

 

「戦う必要はないだろう。しかし、知識だけでも貸してもらえるとありがたいのは本音だ。ルーナがいたおかげで、俺は今日、足が繋がったまま帰ってこられた」

 

 屋上で戦っていたときのことだろう。

 イビルイーターの死んだふりにあのまま騙されていたら、確かにクロウ先生は足首を噛みちぎられていたかもしれない。

 ゾッとしたものが私の背筋を伝うのだが、そんなことは知らないクロウ先生は続ける。

 

「炎が弱点なのも、カースイーターが魔法を食うのも俺たちは知らなかった。今までなら一度マギスに戻って調べるか、塾長に調べてもらうかしてただろうが、その場で最適解を判断できるのはメリットだ。魔物恐怖症が問題なら、魔物に勝つことで克服できる可能性もあるだろう」

 

 クロウ先生はそこで一度言葉を切る。


 私はただ黙って聞いていた。課題を根本から解決しようとするクロウ先生らしい言い分だ、と思いながら。

 簡単に頷ければよかった、とも思う。

 

 黙ったままの私の顔を見てどう思ったのか、クロウ先生は続ける。

 

「そもそも、どうしてお前は魔物を怖がっているんだ? ルーナ」

 

 私は、クロウ先生の左目、まっすぐな視線を向けてくる黒い瞳から視線を逸らした。

 聞かれたくなかったけど、この話が始まったときから聞かれるのだろうと予想はしていた、私が魔物恐怖症になったきっかけ……それを、できるだけ平然と話すために。

 

「――子どもの頃、夢を見たんです」


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