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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第1章 王都の塾講師の秘密

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23.ミリカ先生の超火力

 クロウ先生とナタネ先生の連携は完璧だった。これまでも何度もこうして一緒に魔物を倒してきたのだろう。

 

 クロウ先生は持ち前の実践魔法の腕を活かして、多種多様な合成魔法を繰り出しイビルイーターたちを薙ぎ倒していく。

 ナタネ先生は自分の体に強化魔法をかけ、俊敏な人間離れした動きでカースイーターを撹乱する。クロウ先生が魔法を自由に打てるように補助しているのだ。

 

 先ほどまでとは段違いの、圧倒的な速さで魔物が狩られていく。

 二人は何か言葉を交わしながら、イビルイーターの増援が途絶えるまで、ひたすら攻撃を続けた。

 

 見る限り黒く埋まる勢いだった視界から、イビルイーターの姿がまばらになっていく。

 倒れた魔物の死体は時間経過で魔力の塊に戻り、自然と消えてしまうからだ。


 それはクロウ先生とナタネ先生がかなりの時間を戦い続けた証拠であり、大量の魔物を十分に処理していることの現れでもあった。

 

「そろそろいける。ナタネ、囮を頼む!」

「了解、てかずっと囮やってるじゃん!」

 

 軽口を叩きながらもナタネ先生はカースイーターの前に躍り出る。

 ナタネ先生は、群れの仲間を殺され怒りに怒っているカースイーターの巨大な体に怯えもせず、キッと見上げて挑発までしてみせた。

 

「ガキも守れない雑魚魔物が、悔しかったら私を止めてみろ!」

 

 そこまで言う必要があるのか、カースイーターが理解しているのかはわからないが、作戦は見事成功したらしい。

 ナタネ先生を標的と定めたカースイーターが足踏みを始めるのを見て、ナタネ先生は城壁とは反対の方に跳び退いた。

 その動きに釣られたカースイーターは、見事に城壁を背にして、クロウ先生から離れていく。

 残っていた群れのイビルイーターたちも、その動きに続いた。

 

 一瞬、クロウ先生の周りに何の魔物もいない、安全な時間が発生する。

 その時間を使って、クロウ先生は目を閉じて詠唱を始めた。

 

「土よ。万物の命の源たるものよ。我らの家を、街を、命を、堅き盾となり守れ――!!」


 体から立ち昇る魔力が、クロウ先生の黒髪を揺らす。顔の右半分を隠してしまう長い前髪がふわりと持ち上がり、表情がよく見える。

 先生は苦しそうな顔をしながら、詠唱を続けていた。

 

 詠唱は長ければ長いほど、魔法の効果が上昇する。

 魔物を拒む強固な城壁の修理だ。魔力を大量に消費するに違いないし、クロウ先生の体にかかる負担もひとしおだろう。


 ハラハラとそれを影から見守る私の視界にも、しっかりとわかる。

 クロウ先生の詠唱で現れた土の盾は、崩れた城壁の穴を瞬く間に塞ぎ、一見しただけでは他の外壁と違いがわからないほどの厚さと高さまで伸びて固まった。

 

 すごい、と思った。

 私が使うような魔法とは完全に一線を画している。

 

 穴を埋めるくらいなら一般の魔法使いにもできるかもしれないが、クロウ先生は今、何年も前から王都を守ってきた城壁と比べて遜色ないような壁を一瞬で出してみせたのだ。

 

 見惚れていると、頭上を魔物の羽ばたく音が通り抜けていった。

 言うまでもなくカースイーターだ。囮として追われていたナタネ先生が近くの建物のガレキたちの上をパルクールのように飛び回っていて、それをカースイーターが追っている。

 壁が治ったことを確認したナタネ先生は、開けた場所にカースイーターを誘導して、立ち止まった。

 

「あとはミリカ待ちだね」

「ああ、ご苦労」

「お互いに」

 

 また短く言葉を交わして、クロウ先生とナタネ先生は群れのイビルイーター狩りに戻ろうとする。

 そこに、空から声が聞こえてきた。

 

「ごめん、お待たせ〜!! って、どういう状況!?」

 

 ミリカ先生だ。待ち侘びた人物の登場に、二人とも安堵の表情を浮かべる。

 

「ミリカ! 全力の炎、一発でこいつ焼いて!」

「動きはこっちで止める!」


 ナタネ先生とクロウ先生が順番にそう言う。情報は全然足りていないけれど、ミリカ先生は空を飛んだまま魔法の詠唱体制に入った。

 二人を信頼しているから、状況は分からずとも言うとおりに動くことができるのだろう。

 

 ミリカ先生が詠唱を始めたのを確認して、ナタネ先生とクロウ先生はカースイーターの動きを止めようと動き出す。

 ナタネ先生はグルグルとカースイーターの周りを走り回って視線を乱し、クロウ先生は拘束魔法を使ってカースイーターの動きを阻害する。

 

「炎よ、霊長の営為の源たるものよ。ここに示すは滅悪の星、人の暮らしを荒らす不届者に報いを。焼き払うは漆黒たる敵! いっけぇ〜!!」

 

 ミリカ先生が放った、最後は気の抜けた詠唱は、それでも私の想像を遥かに超えた。

 カースイーターの五、六匹は包み込めそうな特大の火球が生み出される。


 二人がミリカ先生を待っていたのは、三人で畳み掛けるためじゃない。

 このミリカ先生の超火力を、最大限に発揮させるためだったのだ。


 すごい勢いでカースイーターに向かってくるミリカ先生の火球を見て、クロウ先生とナタネ先生は慌てて逃げ出す。

 

「やりすぎだ、馬鹿!」

「全力って言ったアタシが悪かったよー!!」

 

 味方までピンチにしてしまう超火力の魔法を放ったミリカ先生は、何事もなかったような澄まし顔で私の隠れているガレキの近くにふわりと着地した。

 物陰で震える私の姿を見て、ミリカ先生は可愛らしい笑顔と鈴の音を転がしたような声でけろりと言った。

 

「ね? 安全だったでしょう?」

「アタシたちの安全も考えてくれるかなあ!?」

 

 即座に、鋭いナタネ先生のツッコミが飛ぶ。


 足の速いナタネ先生は無傷だが、逃げ遅れたらしいクロウ先生のローブはちょっと焦げていた。

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