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王立魔法学校専門個別指導塾 “マギスの学び舎” ~魔物恐怖症のへっぽこ魔法使い、塾講師になって王都を陰から守ります!~  作者: りっく
第1章 王都の塾講師の秘密

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2.マギスの理念

 盛大に出迎えられた私は、マギスの学び舎の中で一番大きな教室に案内される。

 大教室は、もはや講堂と呼んでもいいくらいの大きさで、いつもは置いてある机がどけられてイスだけが並んでいた。

 部屋中に飾りがつけられて、まさしく卒業式の会場のような、めでたい雰囲気である。

 

 マギスの学び舎は大きな学習塾。私と同い年の生徒がたくさんいる。その卒業祝賀会がこれから行われるのだ。

 

 私は今日という日をこれでもかと待ち侘びていた。

 なぜなら、今日から私はマギスの生徒ではなく、先生として働くことが決まっているからだ。まだ今日は研修だけれど。

 祝賀会が終わったら、塾長直々にいろいろ教えてもらえることになっている。

 

 周りのみんなは祝賀会そのものを楽しみにしているのだが、それ以上に私は研修を楽しみにしていた。

 祝賀会自体も楽しかったけれど私はどこか上の空で過ごしてしまった。

 先輩たちの姿を見て楽しみにしていたはずの表彰式とお菓子パーティーの時間は、飛ぶように過ぎていった。

 

 そして、みんなが帰ったあと、私は一人教室に残る。

 先ほどまでの賑やかな雰囲気は消えて寂しくなった教室。そこに、祝賀会の片付けを終えた塾長が、女の先生を一人連れて戻ってきた。

 

 塾長は背が低く、横に広いごつごつした体をしている。髪と、立派に蓄えられた長い髭は真っ白で、たとえるならドワーフのよう。魔物恐怖症の私が、初対面でとんでもなく驚き、怯えたのは言うまでもない。

 そのかたわらに控える女性はミリカ先生。

 直接授業を受けたことはないが、生徒からの評判がとてもいいことは知っている。物腰は柔らかく、茶色のふんわりとした髪とまんまるな目が、小動物的な可愛らしさを際立てていた。

 

「おつかれさまじゃ、ルーナ君」

 

 塾長は特徴的な髭をもふもふと揉みながら、私に優しい笑顔を向ける。塾長の前では男子も女子もみな君付けだ。

 私は慌てて立ち上がり、挨拶をする。

 

「おつかれさまです!」

「ふぉっふぉ、そうかしこまらんでいい。気心の知れた仲じゃろう」

「は、はい!」

 

 実は私は内心ちょっと今でもドワーフみたいな塾長のことを怖がっているけど、それは内緒だ。

 塾長がゆっくりと適当な椅子に腰を下ろすのを待って、私ももう一度座りなおす。

 

「では、改めて。ルーナ君、マギスの学び舎へようこそ」

 

 塾長はそう言って、改めてこのマギスの学び舎という学習塾のあり方を説明してくれた。


 マギスの学び舎は王立魔法学校の隣にあり、王立魔法学校の生徒だけを対象に授業を行う個別指導塾だ。

 王立魔法学校四百年の歴史の半分以上を占める、二一六年も前からある由緒正しき学び舎である。

 

 モットーは『より聡く、より強く、より良い世界を作る魔法使いを育てる』こと。

 生徒も先生も皆“マギス”と略して呼ぶが、そもそも“マギス“は古代語で『より良い』という意味らしい。

 

 魔法学校には十二歳から入学できるので、マギスに通うのも十二歳以上の子どもたちだ。

 入学してから六年間ずっとマギスに通い続けている子もいるが、私のように魔法学校の勉強のどこかでつまずいて、途中から入ってくる生徒の方がずっと多い。


 生徒たちの目標は、魔導師免許の取得と大学への進学が主である。

 ときどき、大学には行かずに就職する子もいるが、職を見つけるためにも魔導師免許は必須。

 だからこそ、生徒たちはすべての授業で合格点を取って、魔法学校を卒業しなくてはならない。

 

 それをサポートし、保証するのが、マギスの学び舎の役目である。

 保証というのは比喩でもなんでもなく、成績が上がらずマギスの生徒が落第してしまったらそれまでかかった授業料をすべて返金する――という、破格のルールで運営されている。

 マギスの講師になるということはそういった責任を負うことでもある。そう言って塾長は話を締め括った。

 

 私は神妙に頷く。

 内心では緊張と、少しのワクワクが入り混じっていた。

 

 話し終えた塾長に代わって、今度はミリカ先生が尋ねる。

 

「ところで、ルーナちゃんはどうしてマギスの先生になりたいと思ったの?やっぱりクロウのおかげ?」

 

 もちろん答えはイエス。私はクロウ先生に憧れてここに来た。

 しかし、クロウ先生の同僚であるミリカ先生の前で堂々と言葉にするのは恥ずかしく、私は控えめに頷くことしかできなかった。

 その反応を見て、ミリカ先生はう〜んと唸りながら目を細めている。

 

「あのクロウがねえ……」

 

 納得がいかない。そんな言葉が聞こえてきそうなミリカ先生の様子は、理解できなくもない。クロウ先生は不愛想で冷たくて、ミリカ先生のように生徒に人気があるタイプではない。

 それでも、私はクロウ先生のことを信頼し、尊敬している。

 

 なぜかと聞かれれば――私は、クロウ先生と初めて出会ったときのことを思い出し、話し始めた。

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