12.ヒントのある場所
次のイレーネちゃんの授業に、私はかなりの張り切りようで臨んだ。
クロウ先生に教わった極意、なぜできないのか課題を見つけて根本的な解決を目指す――というのを実践しようと燃えていたのだ。
「じゃあ今日は、先週予告してた通りの大物……魔法理論のテストの解き直しをしようか」
「はい。多分、もう一回やったら解けるはず、です」
「……ちなみに、どんなところが難しかったか覚えてる?」
嫌味な言い方にならないように言葉に気を使うのは、クロウ先生に散々凹ませられてきた私だからこそ、かもしれない。
曖昧な私の問いに、イレーネちゃんは首を傾げる。
「魔法式? ですかね?」
「そっかあ。一緒にやったら解けるのにね」
深く頷きながらそう言うと、イレーネちゃんはぽつりと呟いた。
「普段使ってる魔法と、結びつかなくて」
「え?」
「いや……なんでもないです。解き直し……」
私の食いつきの良さに驚いたのか、イレーネちゃんは話をやめてテストの復習に戻ろうとする。
でも、私の目はもう輝いていた。
間違いなく、これはイレーネちゃんの課題を見つけるチャンスだ。それに、クロウ先生の言葉はいつも正しい。
「やっぱり、解き直しやめよう! 今から演習場に行こう」
「えっ、演習場? どうしてですか?」
「きっと勉強になるから! 教室で行き詰まったときは演習場に行くの!」
私は立ち上がり、荷物もそのままに演習場に向かって歩き出す。
戸惑いながらも、真面目なイレーネちゃんは文句も言わずについてきてくれた。
演習場につくやいなや、私はグラウンドに向かい、いつもお世話になっている動く的を一枚、取り出した。
「動力魔法を普段使いすれば、何か学びがあるかと思って。これね、動力魔法で動くの。やってみせるね」
私はそう説明しながら、的に魔力を込める。
炎と土の魔力を同量、混ぜたもの。それを的に注ぎ込むと、ふわりと的が宙に浮く。
私が手を動かして魔力を操るのに沿って、的は規則的に私たちの頭上を往復した。
「次はイレーネちゃん、やってみて。コツは属性ごとの魔力を、できるだけぴったり同量にして混ぜることね」
「え。はい……実践魔法はまあ、得意なので……」
わけもわからないまま、イレーネちゃんは飛んできた的を受け取った。
見よう見まねでイレーネちゃんが魔法を使うと、的は動き出す。
「って、動き早っ。本当に実践魔法が上手で羨ましい……じゃなかった。今込めてる魔力を、炎だけ増やすとどうなるでしょう?」
そう聞くとイレーネちゃんは急にビクッと背筋を伸ばした。
「えっと。動力魔法だから……炎が増えると、魔法式の炎が2に近づくから……」
彼女の答えは予想通りだった。
やってみればいいだけなのに、やってみればきっとできるのに。
ついつい考えてしまう。数字にするとわからなくなる。
そんなイレーネちゃんの姿が、実践魔法に苦戦していた時の自分自身に重なって見えた。
できることとできないことは逆だけど。
きっと、私だからこそイレーネちゃんに教えられることがある。
「ストップ。考えるんじゃなくて、実際にやってみよ?」
明るく提案するとイレーネちゃんははっとした顔になった。
そして、的に向かって腕を伸ばし、呟く。
「炎よ……って、きゃあ!?」
魔力を増やした瞬間、魔法の種類が変わる。
いつもは冷静なイレーネちゃんが、珍しく驚きの叫び声をあげた。




