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seek one's fate  作者: 六軒さくみ


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*ふたつの正義4*



「ルリに……アスランとは一緒に行けないと言われた。父親を人質にされてる、自分を助けてくれる人もいる、自分が逃げたらその人達はどうなるのと言われて……余裕がなかったんだな、俺も。こうやって冷静に考えれば、ルリの言い分もある意味では正しいのに」



 帝国に対する攻撃作戦開始が決定し強制的に休憩を取らされた自室で、アスランがぽつり、ぽつりと語り出したのは──ルリとの会話だった。

 転属先であるリバティ・ベルが味方艦隊から孤立し、その救出作戦の下準備のために潜入した帝国内で──、探しに探していた幼なじみの少女に、偶然出逢ったとタイスに打ち明けた。

 潜入作戦自体は失敗したものの、アスラン達の起こしたアクションのおかげで結果としてはリバティ・ベルは味方と合流出来た。

 どのようにして結果に結び付いたのかは、アスランにもタイスにも関係なかったが、ひとまず自分達の転属先が、木っ端微塵の海の藻屑と消えなかったのだからこの際、深く追求することも辞めた。

と言うよりは、アスランの心を占めていたのは、帝国内で再会した幼なじみのルリのことだった。

 軍人としてはあるまじき強引かつ姑息な手段を用い、タイスの協力の下、ルリに再び会いに行ったアスランが、約束をしていた時間に戻ってきたときには、タイスは正直泣きたくなるほど安堵したものだ。

 幼なじみを捜したくて軍隊に入り、ブルームの現状を自分の目で見て、出来るなら自分の手で解放したいという望みを持って前線に立ち続ける戦友が、その目的の一つである幼なじみに「連れて逃げて」と言われたら喜んで脱獄兵とか逃亡兵とかになりそうな気がしたのだ。



 実際の所、タイスはルリという少女をアスランの話でしか聞いたことがない。



『お転婆だけど寂しがり屋』とアスランが言っていた幼なじみは、実は帝国の国王の血筋だったとやはりアスランから告げられた。

 告げられたときには飲み込めなかったが、よくよく考えればそれはとても重要な、下手をすれば高度に政治的な要素を含む話で、元来、小難しい話が嫌いなタイスには理解するにはかなりの時間を要したのだ。

 話をきけば聞くほど、自分の親友兼戦友の人物相関図が途方もなく広がりを見せ始めるにいたって改めて、その心労やら悩みやらを思うに付け心から同情したものだ。


 現在軟禁中の父親は、アスランから見れば父方の祖父の手によって行われたことだ。

 表向きは「病気」だが、実の理由は『ブルームを支援するという名の帝国への攻撃は不当なもの』だという持論を展開して連邦議会を混乱させたという理由だった。 

 アスランの父親のエイドリアンの持論を詳しく調べれば調べるほど正しい気がしてならない。

 確かに帝国は何の前触れもなくブルーム攻撃した。

 ブルーム共和国は、帝国も連邦政府も一応は自主性と中立を認めた国だ。そのブルームは自衛軍を持ってはいても一度としてそれを行使したことはなかった。

 帝国がブルームを攻撃した理由は月に対する支援だ。

 帝国と月、月と連邦──そして月を挟んだ連邦と帝国の争いは、一昼夜の出来事ではない。

 特に帝国と月の諍いの根は深い。

 月の同盟国であったブルームに対する帝国の武力行使の布石は確かに存在していた。

が、ブルームに対しては連邦政府も一筋縄ではいかない相手であり、腹にイチモツを抱えていた。

 現に何度もブルームは帝国とだけではなく、連邦政府とも緊張した関係を続けていたのだから。

 帝国が攻撃を開始したとき、いち早くブルーム支援を声高々に宣言したのは月ではなく連邦だった。

 それぞれの思惑をともなって始まった戦争は、確実に今、世界を蝕み始めている。

 エイドリアンは帝国のブルームに対する攻撃を不当だと断罪すると同様に、ブルーム支援を大義名分に掲げて戦争をしている連邦の不当性も訴えている。

帝国とブルーム間の揉め事に第三者が介入するのは間違いではないが「武力」を持っての介入は間違っていると。

 それに対するドーマスカーの取った手段は息子の軟禁だった。

 連邦軍の高官としてのドーマスカーの立場、政治家としての立場ならば、止む得ない措置ではあるかも知れないのだが、アスランにしてみれば両方とも身内である。

しかもドーマスカーは現在、アスラン自身の後ろ盾であるという歴然とした事実もある。

 言うなれば将来的にはドーマスカーの跡取りとなる可能性をも秘めている。

 そのアスランは、ブルームを故郷であると公言しているのだし、IDの認証に使われていたのもブルーム共和国だった。

 ブルーム共和国で、自分の人生において殆どの時間を共有してきた幼なじみのルリとルカは、そのブルーム共和国の八民政員の一人で外交担当であったダイ・カーディナルの子供達だった。

しかもそのダイ自身が、現帝国の女帝の双子の兄でありデュオン本家の血筋であるのだ。




「なんつか、ヤヤコシイな。お前は連邦にいて、幼なじみは帝国。たとえばさ、お前が将来的に連邦のトップに上り詰めて、その幼なじみが国王になって、互いに弓は納めましょうって出来りゃ別だけど、そんなのは夢物語だしな」

「そうだな……本当にそんなに簡単なら、ルリは俺の手を拒んだりしなかった、それに……」

「それに?」

「……説得できると思ってた……ルリのことなら何でも知っていたから。だけどやっぱり余裕がなかったんだな。ルリの一言、一言がやけに癪に触って……」

 時間にして数分後、アスランが静かに零した言葉に、タイスはかける言葉も見付からなかった。

「……『守れない約束を、またするの?』って言われて……俺は、言い訳すらできなかった」





***ルリ何故、その手を取れない?

   何故、守れない? ***


『今の自分には与えられた敵と戦い倒す力はあるのに……本当に欲しいモノを手にする方法がわからない』



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