対面
湊はゆっくりとだが着実に『ゲート』までの距離を詰めていた。
また、その道中で木村が今にも死にそうな声で話しかけてきた。
「諸伏さん、弱いことは罪なんですかね?弱者には
生きることも許されないんですかね?」
湊は強く否定した。
「弱者は蔑ろにされ理不尽な扱いを受けるのかも知れない。けど弱者なら死んでもいいなんて誰が決めた!
そんなのは間違ってる!命の価値は全員平等であるべきなんだ!」
「そう言ってもらえて...」
会話が不自然なタイミングで途切れたので湊は急いで声を掛けた。
「木村君!木村君!木村君!」
何度声をかけても応答がなかったので湊は一刻も早く
治療してもらわないとまずいと思い歩く速さを上げようとした時に足をつまずいてしまった。
湊はすぐに立ちあがろうとしたが何故か起き上がることは出来なかった。
それは、ゴブリンに付けられた複数の傷口から大量の
血液を流しすぎたこと。
その戦闘時に限界まで肉体を酷使したことによって一切身体に力が入らなくなっていた。
この状態でここまで歩いてこれたのは奇跡に近かくじわじわと湊の意識が朦朧とし始めていた。
「あぁダメだ指一本すら力が入らねぇ。クッソーここまで来たっていうのに。もういよいよだな視界が暗くなってきた。せめてあいつらが大人になるまでは...」
眠りから覚めた湊は自分の置かれている状況がいまいち把握できていない様子だった。
「確かあの時俺は...ここは病院?」
ふと隣を見るとそこには妹の楓と弟の蓮が椅子に
座ったまま寝ていた。
その直後に楓が目を覚まし湊の顔を見た瞬間涙を
流していた。
「良かった、本当に良かった。一週間も目を覚まさないからこのままだったらどうしようと思ってた。ねぇ
お兄ちゃんハンターの仕事やめて別の職業に就いて。お兄ちゃんまでいなくなったら私と蓮だけになっちゃう」
湊は楓の頭に手をポンと置きながら答えた。
「次からは、もうこんな風にならないように気をつけるから続けさせてくれ。それから、随分と心配かけて悪かった」
「本当だよバカ!」
その後に目を擦りながら蓮が目を覚ました。
「ねぇねどうかしたの?」
蓮は湊の姿を見ると湊の体によじ登って来た。
「にぃにやっと起きた。にぃにはいなくならないよね?」
「蓮と楓が大きくなるまではいなくならないよ」
楓が蓮を抱えて病室を出る時念を押すように言ってきた。
「さっきの言葉忘れないでね!次怪我したら絶対に
ハンターの仕事やめてもらうから!約束だよ!」
「分かった約束する!」
楓と蓮が出てってからしばらくしない内に九条が湊の元へ訪れていた。
「ようやく目が覚めたようですね」
「えっと...」
「覚醒者〔プレイヤー〕」協会会長補佐の九条と申します」
(九条っていえばSS級ではないがその強さからS級の上Sα級に位置する指折りのハンターが何でこんなところに?)
「その協会の方がどうして?」
九条は椅子に腰を掛けた。
「迷宮〔ダンジョン〕」で瀕死だった諸伏「覚醒者〔プレイヤー〕」をゲートの外まで運び出したのは私なんです。その為諸伏「覚醒者〔プレイヤー〕」の容体が気になったのとお聞きしたいことがあり伺った次第です。まぁ覚えていないのも無理もありません。その時意識を失っていたんですから」
湊は朧気な記憶を辿っていた。
(そういえば誰かに担がれた記憶があるな)
湊はその時ハっとした様子で九条に尋ねた。
「俺と一緒にいた木村君...その人は無事なんですか?」
九条は暗い顔で回答した。
「生憎言いづらいのですが私が駆けつけた時にはもう息をほとんどしておらず病院に着いた時には完全に
心臓が止まり、そのまま命を引き取りました」
それを聞いた湊は沈んだ顔をしていた。
「そうですか...」
「辛いところ申し訳ないのですが、隠し「迷宮〔ダンジョン〕」で何か変わったことってありましたか?
隠し「迷宮〔ダンジョン〕」なんて滅多に遭遇するものでもないので今後の為にも話しを聞けたらと思いまして...」
「すみませんその時の記憶が曖昧というか...覚えていなくて」
「そうでしたか...確認の為に『ステータス画面』を拝見してもよろしいですか?」
湊は言われた通りステータス画面を表示してそれを
九条は凝視していた。
【名前:諸伏湊】 【Lv:55】
【HP:50】 【「MP〔魔力〕」:60】
【「能力〔スキル〕」:なし】
(職員の話だと大量の「魔物〔モンスター〕」がいたと言っていた。だがステータスを見るかぎり噂通り
「能力〔スキル〕」がない上にLvもD級ぐらいの者が大量の「魔物〔モンスター〕」を撃破したとは考えられないが...)
九条は何かを思いだしていた。
(死に直面した時人は二種類に分けられる。それを受けいれる者またはそれに抗おうとする者。抗おうとした者は実力以上の底力が発揮されるってあの人が言ってたな。彼もその類なのだろう。それに何か隠している様子もないし)
「ご協力ありがとうございます。まだ無理をせずお体に気をつけて下さい。ではこれで失礼します」
九条はそう言って病室を後にして協会本部に向かった。
湊はベッドに横たわりながら不確かな記憶が頭をよぎっていた。
(そういやあの時、固有「能力〔スキル〕」って表示されたような...あれは夢だったのか?)
まるで『ステータス画面』が喋っているかのように湊の脳内に直接その声が響いていた。
「夢じゃねぇよタコ!」
湊はその声に驚いてベッドから起き上がり辺りを見渡していた。
(今誰かの声が頭に直接したような)
「そっちじゃねぇよ!画面を見ろ!」
言われた通りに画面を確認した際に固有「能力〔スキル〕」『略奪者』と記されていたので、やっとその声の正体が『ステータス画面』だと気づいた様子だった。
(聞いたことがある。固有「能力〔スキル〕」に目覚めた者のステータス画面には意思が宿ると)
この時湊はあることに疑問を抱きとりあえず略した
呼び方でステータス画面に話しかけた。
「なぁステ画さっきは略奪者なんて表示されてなかったがどうしてだ?」
「わざと見えないようにしたんだよ」
「というと?」
「だってそうしたほうが後々面白い展開になりそうだろ!」
湊はそれを聞いて呆れたが逆に好都合だと思った。
「でもまぁそのほうが良かったのかもな。俺も変に
目立ちたくはないからな」
ステ画は湊の体つきを見て不安、がっかりなどの感情を見せていた。
「はぁ、久々に目覚めたというのに持ち主の体がこんな貧弱で非力だとは情けない。これじゃすぐに逝くことになる。はぁワシ可哀想。よくこんなんで生き延びられたのが奇跡に等しい。どのくらい奇跡か言ってやろうか!この世界から争い事が一切なくなることだろうな!」
湊はステ画の発言を全て聞いたときに思ったことがあった。
(あ、こいつめっちゃハズレや。ていうかそんな言うか初対面やぞ!まぁ実際そうだから言い返すことが
出来ないのが悔しい)
湊は気を取り直してステ画に話しかけた。
「そんでステ画、略奪者ってどんな「能力〔スキル〕」なんだ?」
「命を奪った生物の「能力〔スキル〕」を自分の物に吸収する感じだな。ちなみに今保有している「能力〔スキル〕」はないぞ。お前が倒したゴブリンの中に「能力〔スキル〕」を持った奴はいなかったからな!
もしいたら生きているはずがないからな!」
湊は少し落胆していた。
「じゃ俺はまだ無能のままってことなのか...」
「お前が「能力〔スキル〕」を獲得するには「魔物〔モンスター〕」を狩る以外に他選択肢はないってことだ」
湊はステ画と会話していたことであの日ことを段々と思い出してチケットの存在を覚え出していた。




