不吉
これは、上位の『「狩人〔ハンター〕」』に関係ある話でE級の諸伏湊には無縁のことだったのだが...
諸伏湊は「覚醒者〔プレイヤー〕」に目覚めても「MP〔魔力〕」はスズメの涙程しかない上、本来何かしらあるはずの「能力〔スキル〕」がなく、空欄のままだったので周りからは無能や底辺などと蔑まれてきた。
蔑まれたのは「能力〔スキル〕」がないだけでなくそのみずぼらしい外見のせいでもあった。
そんな苦しく辛い気持ちを抱え高校を中退してでも湊が『「狩人〔ハンター〕」を続ける理由は両親の代わりに14歳の妹と6歳の弟を養うためだった。
父親は湊と同じ『「狩人〔ハンター〕」』で危険な「迷宮〔ダンジョン〕」を潜っている最中に命を落とし母親は街中に出現した『ゲート』攻略に失敗して「魔物暴走〔モンスター•スタンピード〕」に巻き込まれて亡くなってしまった。
湊の『「狩人〔ハンター〕」』「階級〔クラス〕」では決していい収入とは言えなかったが他の職業に比べればまだいい方なので湊はこの仕事を選ぶ道しか残っていなかった。
『「狩人〔ハンター〕」』は「魔物〔モンスター〕」を倒した際にドロップする素材や『魔石』、「迷宮〔ダンジョン〕」に付属している鉱物の『魔晶石』や「薬〔ポーション〕」の元になる薬草などを回収してそれらを協会に売ることで生計を立ていてる。
「迷宮〔ダンジョン〕」の難易度が上がれば上がるほど『魔石』、『魔晶石』などの価値は上がり豊富になっていく。
E級「魔物〔モンスター〕」から得られる『魔石』は一万円になりS級「魔物〔モンスター〕」となれば倍になるが「MP〔魔力〕」が少なく「能力〔スキル〕」がない湊にとってはE級「魔物〔モンスター〕」といえど倒すことはS級「魔物〔モンスター〕を倒すに等しく常に怪我をして体中は傷だらけであった。
これだけでは稼げる訳がなかった。
「覚醒者〔プレイヤー〕」には物体入れることが出来る「収納倉庫〔インベントリ〕」を使うことが出来るのだが、その容量は「MP〔魔力〕」量に変わるため低級「階級〔クラス〕」の「狩人〔ハンター〕」の容量は少量なので荷物運びとして湊は参加していたりしていた。
荷物運びとはいえ危険なことには変わりなく他の「狩人〔ハンター〕」が守ってくれる訳でもないので湊は「収納倉庫〔インベントリ〕」に護身用の鉄剣となけなしのお金で買った「薬〔ポーション〕」を常に入れていた。
「迷宮〔ダンジョン〕」に潜れば何度も死にかけることもあったがそれでもこれまでやってこれたのは家族がいたので湊は今日も恐怖や不安を押し殺して「迷宮〔ダンジョン〕」に潜ろうとしていた。
湊もまさか自分があんな目に遭うとは思いもよらなかった.....
湊が今日潜るのは『E級ゲート』なので普通ならあまり危険が少ないのだが、ただいつもの『E級ゲート』と違い『ゲート』の『魔気』が濃かったので何もなければいいのだが...
渋谷のスクランブル交差点中央に出現した『ゲート』に向かっている途中で前から歩いてきた人の肩と湊の肩がぶつかってしまった。
ドスン!
湊はすぐに謝罪した。
「すみません」
「いえ、こちらこそすみません」
謝罪が済んだ二人は特に何事もなかったように歩き出していた。
何気ない会話だったがお互いまた出会うことになろうとはこの時どちらも知る由もなかった。
湊が着くころには交通止めがしてあり、そこには一緒に潜るであろう三名の『「狩人〔ハンター〕」』と協会の人達がいた。
原則上級、低級どちらであっても「迷宮〔ダンジョン〕」を潜る時には必ず数人の『「狩人〔ハンター〕」』と「治癒師〔ヒーラー〕」で編成されるが
「治癒師〔ヒーラー〕」は希少なのでいないこともあるので「狩人〔ハンター〕」自ら「薬〔ポーション〕」を用意することが多い。
何か問題が生じた時すぐに対処出来る様に「非覚醒者〔ノプレイヤー〕」の協会職員が常備されているが都合によってはいないこともある。
三名の内二名は佐藤と鈴木と言い、度々一緒になることがあるので顔を覚えていた。
二人共それなりに経験を積んでいるE級「狩人〔ハンター〕」で湊より年下なのだが、湊に「能力〔スキル〕」がないことを知っているため、いつも舐めた態度をとっている。
もう一名は初めて見かけたが、身なりからしてなりたてのE級「〔狩人ハンター〕」だった。
鈴木が湊の姿が目にすると二人は近づいていき肩を組んできた。
「あれ諸伏さんじゃね?あぁやっぱりそうだ!」
「ちゃす、ちゃす諸伏さん。毎度ながら傷だらけですね!笑。よくそんなんで「迷宮〔ダンジョン〕」に潜ろうとしますよ笑」
「今日も強い「魔物〔モンスター〕」は俺らに任せて
弱い「魔物〔モンスター〕」は狩れたら狩っちゃ下さい。でも諸伏さんにとっては弱い「魔物〔モンスター〕」を狩るのも命がけだと思うんですけど出来なかったら『魔晶石』でも採掘しといて下さい。主にそっちのほうが多いと思いますけど笑」
「まぁ今更「能力〔スキル〕」がないことを悲観してもしょうがないんで切り替えていきましょう!それにもし何かあった時は俺らの後ろに隠れて守ってあげますよ!目の前で死なれたら気分が悪いですからね」
湊は苦笑いする他なかった。
「アハハッそん時はよろしくね」
もう一人の木村はうっすらとこの話を聞いていた。
その流れで佐藤が湊に頼みごとをしていた。
「諸伏さん悪いんですけどこれで四人分の飲み物適当に買ってきてもらっていいですか?」
「あぁうん分かった」
「余ったお金は諸伏さんが貰っちゃていいっすよ!」
「いや、大丈夫だよ」
「別に遠慮しなくてもいいのに」
湊は四人分の飲み物を買いに近くの自販機に行った。
その数分後に湊が戻ってきて買ってきた飲み物をみんなに渡していた。
「あざっす!」
「どうもっす!」
湊は佐藤と鈴木に渡し終わった後もう一人のところに渡しに行った。
「どうも諸伏です。この飲み物彼らから」
「木村です。ありがとうございます。さっきうっすら聞いてしまったんですけど、諸伏さんって「能力〔スキル〕」がないって本当ですか?いきなりこんな質問してしまってすみません。もしそうなら何でハンターをやっているんだろうと気になってしまって...」
湊は正直に話そうと思ったがそれを話してしまえば
ただ、同情されさらに自分が惨めな思いをするだけだと思い本当のことは話さなかった。
「別に大した理由はないです。非日常を味わいたくてやってるそれだけです」
木村は湊のぎこちない笑顔を見て何かあるんだと思ったが、ただ黙っていた。
「逆に木村君は何で「狩人〔ハンター〕」をやってるの?「覚醒者〔プレイヤー〕」に目覚めた人は必ずしもこの仕事をやるってわけじゃないのに」
「自分が幼い頃に両親が「魔物暴走〔モンスター・スタンピード〕」で亡くなっているんです。そんな経験をしたのは自分だけじゃなくて他の子供達をそんな体験をしていて、その時に泣いていた子供を見て自分は少しでもこの涙を減らせたらって思ったんです。まぁE級の自分が言ってもあれなんですけどね...」
湊と木村が話しているところに今日のメインとなる
D級「狩人〔ハンター〕」の清水が到着した。
湊を見かけると早々に話しかけていた。
「ここ最近一緒になることがなかったから死んだのかと思ったよ!でも今日がお前の命日になっちまうかもな笑。そうならないように気を張っておくんだな!」
これを聞いていた佐藤と鈴木はクスクスと笑っていて
湊は愛想笑いするしかなかった。
「ハハッそうならないように気をつけます」
「お前ら今日は「治癒師〔ヒーラー〕」がいねぇからちゃんと「薬〔ポーション〕」用意してんだろうな!
E級ゲートで怪我する奴なんていないと思うが....
いやここにおったわ!」




