生か死か
湊は何か覚悟を決めたようだった。
(核を破壊しようにも...姿がぼんやりとしか捉えることができないから精確な核の位置が分からない...それに力が上手く入らなくなってきた...こうなったら一か八かやるしかない)
マリク・アル=マウトは姿を隠したまま湊に攻撃を仕掛けていた。
湊は攻撃が来ることは分かっていたが身を構えることはしなかった。
それを見てマリク・アル=マウトは落胆していた。
(見どころのある奴だと思ったがそれは我の見込み違いだったようだ...)
マリク・アル=マウタが薙ぎ払った鎌は湊の腹部を貫いた。
口から血を吐きながら湊は不敵の笑みを浮かべていた。
ゲボッ!
(捕まえた!)
湊が致命傷を負っているのにまだ意識があったこととさっきの顔が相まってマリク・アル=マウトは嫌な予感がして貫いた鎌を抜き出そうとした時には遅かった。
この時にはもうマリク・アル=マウトの核が破壊されていた。
パリン!
これは全て湊の策略だった。
湊は鎌で腹部を貫かれる寸前、そこに何割ぐらいかの
「MP〔魔力〕」で強化すると同時に鎌が抜けないよう筋肉を収縮させて「MP〔魔力〕」で固定していた。
そして、腹部を強化している「MP〔魔力〕」を除いて
全ての「MP〔魔力〕」を短剣に纏わせて核を破壊していたのだ。
貫かれたところが心臓だったら湊は確実に「骸骨〔アンデット〕」にさせられていた。
一歩間違えたら死ぬかもしれない危険な賭けだったがこれ以外にマリク・アル=マウトを倒す術はなかった。
核を破壊されたことによってマリク・アル=マウトは原型を保てず消えつつあり残りの力を使って湊を讃えていた。
(言わずもがな敗因は我が勝利したと油断して諸伏のことを見誤ってしまったことだろう...この終わり方も悪くはない...)
「諸伏...ぬしとの戦いはとても有意義な時間であった...我が認めたぬしに伝えておくことがある。くれぐれも慢心や驕りをせず生きることを胸に刻むがよい」
「言われなくてもそのつもりだ!」
この言葉を最後にマリク・アル=マウトが消えた。
湊は腹部を貫いている鎌を自力で抜き出した後、仰向けで倒れてしまった。
それは「MP〔魔力〕」を全部使い果たしたのと毒が体内を巡って腕や足に力が入らなくなっていたからだった。
また、湊はマリク・アル=マウトを倒したことによって五つの「能力〔スキル〕」を獲得していたが確認する余裕はなかった。
「こっから...どうしたらいいんだ...もう体に力が入らないし毒のせいで息をするのが苦しい」
湊は正常な思考ができず「収納倉庫〔インベントリ〕」に「HP薬〔回復ポーション」大と「特殊薬〔スペシャルポーション〕」が入っていることを思い出せずにいた。
無論ムゲンはこのことを把握していたがすぐに伝えることはしなかった。
今にも死にそうだったのでムゲンはまるで自分も覚えていなかった感じで湊に知らせた。
「あーーーーーどうしよう!どうしよう!ミナトが死んじゃうよ!もっとミナトとお話ししたかったのに...「収納倉庫〔インベントリ〕」に「HP薬〔回復ポーション〕」とかがあれば助かるのに...」
ムゲンの「薬〔ポーション〕」という言葉を聞いて湊は思い出して「収納倉庫〔インベントリ〕」から「HP薬〔回復ポーション〕」大と「特殊薬〔スペシャルポーション〕」を取り出し摂取していた。
このおかげで毒を浄化して体力も回復することができていた。
湊はムゲンを問い詰めていた。
「お前わざとだろ!「収納倉庫〔インベントリ〕」に「薬〔ポーション〕」があることをすぐに言わなかったこと!」
ムゲンは白々しく否定した。
「そんな訳ないだろミナトさん。覚えていたらすぐに伝えるに決まってるじゃないか!」
湊はこれ以上問いただしたところでムゲンはしらばっくれると思ったので追及はしなかった。
そうして、湊の前にゲートが出現していた。
ピシッ!ピシッ!
ガシャーン!
湊がゲートに入ろうとした時ムゲンが意味深なことを口にしていた。
「ミナト、家に帰るまでが「迷宮〔ダンジョン〕」攻略という言葉があるように最後まで気を抜かんようにな」
(「迷宮王〔ダンジョンボス〕」は倒したから気にすることはもうないはずだけど...)
「お前、なんか隠してないだろうな!」
「隠す...まったく心当たりがないが」
湊は自分の気にしすぎだと思いゲートに入った。
ゲートから出た先は湊が最初にゲートに入ったところではなくどこかの水深30メートルぐらいの海中だった。
ぶくぶく!
湊は急いで海面に浮上しようと泳いでいた。
湊が必死に泳いでいるところをムゲンがまたリズミカルに煽っていた。
「溺れるか?溺れない?それーは、それーはお前次第!はやーく酸素を吸わないと溺水、溺水、溺水死」
湊はムゲンの煽りが耳に入ってこないほど切羽詰まっていた。
なぜなら、マリク・アル=マウトとの戦闘で体はボロボロで死にかけた直後に水深30メートルを泳ぐことになったからである。
湊はどうにか海面に顔を出して息を吸うことができていた。
スゥー
そこからまた少し泳いで湊は岸に上がっていた。
岸に上がった湊は「迷宮〔ダンジョン〕」に潜る前のムゲンの言葉を思い出していた。
「あ、おいムゲン、お前こうなることを事前に分かってて教えなかっただろ!」
「言いがかりはやめてくれ。ワシもびっくりしてるところなんだ」
「とぼけてんじゃねぇぞ!」
「勘違いかもしれないがチケットに何か注意事項が書かれていたような...」
湊は「収納倉庫〔インベントリ〕」からチケットを取り出した。
チケットの注意事項を確認して湊は嘆いていた。
「マジか...チケットを使ったら何処か訳も分からない場所に飛ばされるのはきつすぎるだろ...ていうかこんなちっこい文字誰が気がつくんだよ!」
「次は「迷宮〔ダンジョン〕」から「迷宮〔ダンジョン〕」に飛ばされるかもな!」
「縁起でもないこと言うな!お前が言うと本当に起こりそうな気がするんだよ。それよりもここは何処だよ!」
それから、湊はその場所から楓と蓮が待つ家に帰ろうとしていた。
家を目指している途中で湊は衣服が濡れているところに寒い風が吹いて二十代とは思えないおじさんみたいな大きなくしゃみをしていた。
アーグション!
そして、湊は家に着くことができていた。
やっと帰ってきたと思ったら玄関に濡れた湊がいたので楓は心配していた。
「今までどこに...え、お兄ちゃんどうしたの?そんなずぶ濡れで」
「色々あってこうなった」
「色々って...まぁいいや早くお風呂はいちゃってじゃないと風邪引くよ!」
そこに蓮がやってきた。
「蓮もにぃにとお風呂入る!」




