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強くなるには

湊は最初、答えるつもりはなかったがマリク・アル=マウトの威厳ある振る舞いや佇まいから他の「魔物〔モンスター〕」とは何か違うと感じて答えようとした。


それは決して怯んだのではなく今のマリク・アル=マウタからは殺意が感じられなかったことと次の出方を見るためであった。


「諸伏湊」


「では諸伏...ぬしに二つの選択肢を授けてやろう!一つ、抵抗せず我に仕えること。二つ、愚かにも抵抗し苦痛を味わいながら死に我の「骸骨〔アンデット〕」にされること。賢い者ならどちらが良いか言うまでないがぬしはどちらを選ぶ?」


湊は今自分が思っている事を主張した後、「収納倉庫〔インベントリ〕」から双剣を取り出して刃をマリク・アル=マウタに向けた。


「弱かったせいで俺はずっと底辺にいて惨めな思いをし蔑まれ存在価値を見出せずに生きてきた。そんな人生を変えて家族と平穏な日々を過ごせるように俺は強くならなくちゃいけない。だから、此処であんたに仕えることも死ぬこともどちらもお断りだ!」


マリク・アル=マウトはもう一度考え直すように促そうとしたが、湊の覚悟した顔を見てその行為が無意味であることを悟っていた。


「誠に残念だ...我はむやみに殺生などしたくはないが...我に従わないと言うなら死ね!仕方があるまい...なぜならぬしが選択した未来なのだから」


「できるもんならやってみろ!俺はささっとあんたを倒して家族のところに帰るつもりだからよ!」


「威勢がいいのはいいが、果たしてぬしは我と一戦を交えるまで生きていられるか楽しみだ!せいぜい我をすぐに退屈せぬよう励んでくれ」


マリク・アル=マウトの言葉尻と共に剣、弓、楯など様々な武器を持った「骸骨〔アンデット〕」がいきなり湊の前方に現れた。


その数は此処に来るまで倒してきた「骸骨〔アンデット〕」とほぼ同じではあったが身につけている武器や武具は上質な物であり雰囲気からでも手強いことが見て取れた。


(さっきと数はあまり変わらないけど...明らかに今まで倒してきた「骸骨〔アンデット〕」より厄介そうだ!)


マリク・アル=マウトによって召喚された「骸骨〔アンデット〕」は一斉に湊を襲い掛かった。


マリク・アル=マウトは玉座に座りながらすました顔で湊の戦いぶりを注視していた。


(ぬしがどれほどの腕前かこの我が見定よう...すぐに死ぬことがあればその程度の男だったということか)


まず、その内の一体が湊を斬りかかろうとした。


湊はその攻撃を目でしっかりと捉え左側にすばやく躱わした。


サッ!


その後、すぐさま「骸骨〔アンデット〕」の右側頸部を右手に所持している短剣で刎ね飛ばそうとした。


攻撃は当たったものの刎ね飛ばすことはできなかった。


(か...硬い)


湊はこれまで倒してきた「骸骨〔アンデット〕」の首を筋力だけで刎ね落としてきた。


しかし、筋力だけで刎ね飛ばすことができないほど

マリク・アル=マウトが召喚した「骸骨〔アンデット〕」の骨は強度だった。


改めて攻撃を加えようとした時、正面から数え切れないほどの矢が湊に放たれていた。


ビュン!ビュン!


湊は左手に所持していた短剣で飛んできた矢を切り払っていた。


カンカン!パシ!


だが、放たれた矢の数に加えて速さも増していたので全てを切り払うことはできず一矢が湊の左頬を掠めて血が流れていた。


(もたもたしてるとこっちがやられる...そうなる前にギアを上げて一気にけりをつける)


そこから湊は電光石火のごとく駆け回って刃に「MP〔魔力〕」を纏わせながら「骸骨〔アンデット〕」の首を刎ね落としていった。


さらに、甲冑を身につけた「骸骨〔アンデット〕」もおり防具が邪魔をして巧く首を刎ね落とすことができなかったときは脚に「MP〔魔力〕」を纏わせて首を蹴り飛ばして対処していた。


そうして湊は召喚された「骸骨〔アンデット〕」を全て倒すことができていた。


このことによりLvが上がって「MP〔魔力〕」や筋力などが増大して湊はC級ランクになっていた。


だが、休まずに戦い続けていたので「MP〔魔力〕」は

半分以下になり体力を消耗して息が上がっていた。


ハァハァハァハァ


湊はこの状態でマリク・アル=マウトと対峙することは危ういと感じて「収納倉庫〔インベントリ〕」から「HP薬〔回復ポーション〕」中と「MP薬〔魔力ポーション〕」中を取り出して回復させていた。


召喚した「骸骨〔アンデット〕」を湊が瞬く間に片付けたことにマリク・アル=マウトは満足そうな様子だった。


「素晴らしい我の「骸骨〔アンデット〕」をあっという間に打ち倒すとは...啖呵を切っただけはある。まぁこのぐらいできなければ我の首を取ることなど夢のまた夢だがな。さて、そろそろ始めようとするか!」


その言葉を合図に湊は臨戦態勢に入った。


次の瞬間、玉座にいたマリク・アル=マウトは鎌を持って湊との間合いを詰めて首を刈り取ろうとした。


「言っておくがわずかでもこの刃先に触れたら命取りだと思え」


湊は体を反り躱わしてマリク・アル=マウトの骨の奥にある核の部分を攻撃した。


カン!


攻撃は命中したが傷一つつかないくらいその骨は頑丈で湊はどうやって打破するか頭の中で考えていた。


(何度も同じ場所に攻撃を打ち込んでヒビを入れる...最後にトドメの一撃を入れて壊すしか方法はなさそうだな)


マリク・アル=マウトの迫り来る攻撃を湊は去なしたり避けたりして隙ができたところに何回も攻撃を入れ続けた。


その甲斐あってマリク・アル=マウトの骨に亀裂が入っていた。


ピキッ!


亀裂を入れたことにマリク・アル=マウトは湊のことを称賛していた。


「まさか...我の骨に傷をつけるとは大したものだ!誇るがよい。ここからは我も本気を出すしかないようだ!」


その直後、マリク・アル=マウトの姿が消えた。


マリク・アル=マウトの気配を感知するために湊は自身の「MP〔魔力〕」で空間を覆った。


朧気にしか気配を把握できなかったので攻撃を躱わすのが遅れてしまい鎌が湊の左腕を掠っていた。


掠ると言ってもほんの少しだけ刃先が触れたぐらいだったが湊の体に異変が生じていた。


(急に体が鉛のように重く感じる...毒か!)


「だから言ったではないか触れるなと!我の「骸骨〔アンデット〕」になるのもそろそろだ!」


マリク・アル=マウトによる猛攻をどうにか湊は去なしていたが毒のせいで動きが鈍くなってきていて限界が迫っていた。


死に直面した湊は大将の言葉の意味を理解したようだった。


「今分かった...あの爺さんはこのことを言ってたんだ!極限の状況で死にたくなければその場で強くなる以外助かる道はないと!生きるか死ぬかは自分次第ってことか!」



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