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死者の王

※汝が死す若しは此処を攻落せざるまでは此処から出でられず。汝が攻落に事成った時、汝が来たる其処とは異なるところに移ろふ。


このようなことが書かれていることに湊は文字が小さすぎて気づかずにいた。


ムゲンは気づいてはいたが敢えて教えようとはしなかった。


「ミナト...あ...いや...なんでもない」


(教えないほうが面白いことになるのは違いない。黙っておこう)


湊は歯切れが悪いムゲンの事を怪しいとは思ったが気に留めず「迷宮〔ダンジョン〕」に潜ろうとしていた。


中は現代建築で作りだされたようなその人工的な建物の中にいるような雰囲気だった。


天井、壁、床などが麗しく湊がいるのは「迷宮〔ダンジョン〕」なのかと疑ってしまうほどだった。


湊が「迷宮〔ダンジョン〕」に入って歩き出そうと足を一歩、二歩と踏みだしたところで異変が生じていた。


湊が入って来たゲートが忽然と消滅してしまったのだ!


本来ゲートの出入り口は固定されていて、ましてやそれが消滅することはないのだが...


このチケット「迷宮〔ダンジョン〕」では湊や他のハンターが攻略している通常の「迷宮〔ダンジョン〕」とは仕組みが少し違うみたいだ。


昔の湊だったら取り乱し、落ち着きを失っていたことだろう。


だが、今の湊は心が強くなり覚悟が決まっているのでこのことに動じることなく冷静に物事を見ることができるようになっていた。


「ゲートが消えた...あぁそういうことか...「迷宮王〔ダンジョンボス〕」を倒さないかぎり俺は此処から出ることも帰ることもできないことなんだろう。多分高ランクゲートの白陀、黯骸に近しいゲートぽいな」


湊はやることは変わらないと思い「迷宮王〔ダンジョンボス〕」のところまで歩き出そうとしていた。


歩いていると湊の前から剣を持った「骸骨〔アンデット〕」が一体やって来ていた。


ドシ!ドシ!


湊と「骸骨〔アンデット〕」には少し距離が空いていた。


湊は「収納倉庫〔インベントリ〕」から双剣の内一つ取り出しその距離を一気に詰めて攻撃しようとした。


軽く左足に力を入れて地面を蹴り上げると一瞬で「骸骨〔アンデット〕」の目の前に接近していた。


サッ!


湊はすかさず「骸骨〔アンデット〕」の首を刎ね落とした。


こんなことができるようになったのは、ゴブリン戦で筋力、速さなどがLvアップしてその上でそれを駆使できる肉体があってこその要因だった。


湊自身が一番衝撃を受けていてそれをムゲンが説明していた。


「思い通りに体の自由が利く!こんなにも体が軽いと感じるのは初めてだ。なんか自分の体とは思えない...」


「あの時お前は大幅にLvアップし加えてこれを使いこなせるだけの肉体を作り上げた。俊敏な動きができるのは何ら不思議ではない。今のランクはD級...その中でも上位と言えるだろ」


二人が会話していたところに湊の顔を狙って一本の矢が飛んできた。


ヒュン!


湊は首を左に傾けて難なくその攻撃を避けた。


以前の湊だったら到底避けられるはずがなく深手を負うことになっていた。


だが、今の湊にとっては避けることなど造作もなかった。


その直後、間髪入れずに無数の矢が湊目掛けて矢が放たれていた。


ヒュン!ヒュン!ヒュン!


かなり遠くから放たれているのでどんな「魔物〔モンスター〕」なのかまでは分からなかった。


湊は駆け足でその矢を避けながら前に進んで行った。


タッタッタッ


時には矢が当たらないように剣で防いでいたりもしていた。


湊は矢を避けられていることに自分が成長しているんだと自覚していた。


(矢が速く飛んでくるはずなのに遅く感じる...ちょっとは強くなっているんだ)


近づいていくと矢を射っていたのは弓矢を持った五、六体の「骸骨〔アンデット〕」だった。


湊はさっきと同じように「骸骨〔アンデット〕」の首を刎ねて戦闘不能にした。


その後、一息つく暇もなく奥からぞろぞろと剣や弓矢を持った「骸骨〔アンデット〕」が湊に襲いかかっていた。


一体一体の強さはそれほどではなかった。


しかし、進むにつれて微小だが段々と強さが増している感じだった。


それでも、湊が「骸骨〔アンデット〕」の攻撃を受けることはなかったが、かなりの数だったので疲労が溜まることは避けられなかった。


「このくらいの「魔物〔モンスター〕」大したことない。けど...戦いづめは疲れる」


湊は沢山の「骸骨〔アンデット〕」を倒したことによりLvが上がってランクはC級の手前になっていた。


ムゲンはこのことを把握していたが湊自身は知らずにいた。


そうして、湊は「迷宮王〔ダンジョンボス〕」がいるであろう扉の前まで来ていた。


また、「迷宮王〔ダンジョンボス〕」のところまで目指す道中で「骸骨〔アンデット〕」以外の「魔物〔モンスター〕」とは遭遇することはなかった。


扉は隠し「迷宮〔ダンジョン〕」と同じぐらいの規模であり違ったのはそれよりも華麗といえる外見だった。


湊は疲労がある状態で「迷宮王〔ダンジョンボス〕に挑むのは好ましくないと思っていた。


少し強くなったからといって慢心する湊ではなかったので「収納倉庫〔インベントリ〕」から「HP薬〔回復ポーション〕」小と「MP薬〔魔力ポーション〕」小を取り出し飲み干した。


普通の店で買った「薬〔ポーション〕」小では得られる効能は極小に過ぎなかった。


しかし、湊が買ったのは夢幻の店なので小だったとしても効能はそれとは段違いであった。


なので湊が感嘆することは確定していた。


「小でこんなにも回復するのか!さすがは夢幻の「薬〔ポーション〕」だな」


夢幻の「薬〔ポーション〕」と言えど小であるため完全に回復することは不可能であった。


けれど湊が傷を負っていなかったこと、疲労と言っても若干であったので完全に回復することができていた。


湊は気を引き締め直して扉を開いた。


「よし!行くか!」


ゴゴゴゴゴ!


その内部は広大で薄暗く不気味であるものの絢爛であった。


また湊の正面には玉座があり「骸骨〔アンデット〕」が座っていた。


湊が倒してきた「骸骨〔アンデット〕」とはあきらかに格が違った。


それもそのはず、その「骸骨〔アンデット〕」は高級そうなローブを羽織っていて左側には赤い球体をした核らしき物があった。


人間で言うところの心臓部分でありこれを破壊しないかぎり倒すことは不可能だと湊は理解していた。


(さっきまでの「骸骨〔アンデット〕」は首を刎ねたら倒せた...けどこの「骸骨〔アンデット〕」は核を壊さないかぎり蘇る感じがするな)


これに加えて佇まいからでも尋常ではないことが分かり此処の主人だということは明白だった。


湊は怖気づくことなくその「骸骨〔アンデット〕」の元まで歩き出した。


半分くらい近づいたところでその「骸骨〔アンデット〕」に名前が表示されて、しかも人語を話し出した。


「我が名は、マリク・アル=マウト。ぬしの名を申してみろ」


大概の「魔物〔モンスター〕」はゴブリンやオークなどと種族の名前で表示されて人語を話すという行為は無理であった。


しかし、滅多にあることではないが個体名を持ち人語を話すことができる「魔物〔モンスター〕」の強さは

その二つを持っていない「魔物〔モンスター〕」よりも上だった。

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