表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/74

エピローグ 異世界ファンタジーより、ラブコメが好き




「と、いうことは――まだ、諦めなくていいってことかしら?」


 あれ?

 ぐっすり寝ていたはずのフィオが、いつの間にか起きていた。

 俺の腕枕で寝たふりをしていたのかもしれない。話は全部聞いていたのか、彼女もいきなり割って入ってきた。


「今度、ヘイムの魔力が回復した時も、まだ世界を救うのに間に合う可能性はある……そういうことよねっ」


「うん。ミツキが良ければ、の話だけど」


「申し訳ないけど、俺は行くつもりはないぞ?」


 こればっかりは、いくらフィオでも気休めになるようなことは言えない。

 行く気がないと、正直に伝えた。しかし彼女は、それでもいいいと頷いていた。


「ええ。だから、考えるわ……ミツキお兄さまが行かなくても、わたくしたちの世界に干渉できる手段があるかもしれないもの」


「え? そんなこと、できるのか?」


「分からないわ。だから、考えるの。時間に猶予があるのなら、わたくしは諦めないわ」


 フィオは相変わらず、王族としての責務を果たそうと一生懸命だ。

 今回は手段を間違えた。だから次はやり方を変えると、そういうことなのだろう。


「それに……単純な話よ。今はミツキお兄さまがレイナお姉さまに夢中だから、振り向いてくれないけど。わたくしたちが、奪えばいい話よね」


「う、奪うって……」


 物騒なことを言わないでほしい。

 そんなことを言うと、彼女が登場してしまう!


「つまり、この世界で言うと……『寝取れ』ばいいのよ!」


「12歳が使う単語にしては過激すぎるぞっ。麗奈に聞かれたらどうするんだ!?」


「――ふーん。フィオちゃん、いい度胸してるね」


 あ、遅かった。

 フィオの宣言と同時に、麗奈が我が家の扉をあけ放った。隣にはセーラもいる。

 ちょうど、買い物から帰って来たらしい。


 彼女は耳がいい。特に、俺に関係する話に限って聴覚が上がるので、バッチリ聞き取っていたようだ。


「わたしから、光喜くんを奪えるとでも?」


「ええ。それなら、ミツキお兄さまの意思に反するということもないわっ。わたくしたちが、メロメロにしてしまえば魔王化する可能性もなくなるもの!」


「……バトルじゃなくて、ラブコメで勝負ってことね。いいよ、正々堂々――戦おうか」


 ああ、なんでこうなっちゃうんだ……!

 せっかく、平穏な日常ラブコメになるかと思ったのに。


 フィオの宣戦布告と、麗奈の喧嘩上等精神のせいで、穏やかな日常を過ごせそうになかった。


「セーラ、ヘイム。次は、ミツキお兄さまを惚れさせるわ。それがわたくしたちの勝利よ」


「……姫がそう言うなら、別にいいけど」


「は、破廉恥な! し、しかし、ご命令であれば……くっ。私はまだ男性と手すら繋いでいないのだからな!? ミツキ殿、優しくしてくれっ」


「別に何もやらないけど!?」


 俺が何をすると思っているのか。セーラが顔を真っ赤にしていて、こっちも動揺してしまった。


「望むところだよ……私が、全員つぶす。『幼馴染』を舐めないでね?」


 そして麗奈も、怖かった。

 やる気満々である。ともすれば、昨日のバトル以上に熱くなっているように見えた。


 まったく……どうしてこんなことになったんだ。


(でも、こんな日常も悪くはないか)


 まだまだ波乱が起きそうだが。

 でも、麗奈と離れ離れになって異世界でファンタジーするよりかは、こちらの方が楽しそうだ。


 だから、つい笑ってしまった。

 幸せだなと、そう思ったから。


 異世界は好きだ。憧れもある。

 でも……やっぱり、俺は、現実ラブコメの方が好きだった――。



【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ