第四話 転生で一番怖いイベント
今日は何が起きるか分からないので、学校はこのままサボることにした。
「学校で事故が起きてみんなが巻き込まれたら大変だからな」
「みんなのことも考えられるなんて、光喜くんは素敵だね♡」
「え? そうかな?」
「うん! ワンちゃんを助けるためにとっさに飛び出したのもイケメンポイント高いよっ。わたしにはもったいないくらいかも……♡」
麗奈がもったいない男性なんて存在しないだろ。
そう言葉を続けたかったところだが、今度は子供が道に飛び出したのですぐに止めた。もちろん俺が、ではない。こちらが動き出そうとした時にはもう麗奈が動いていて、子供をこちらに引き寄せていたのである。
「道路は危ないから、飛び出したらダメだよ~」
そう注意してから、子供と別れた。
これもまた、転生フラグだったんだろうなぁ。というか、転生のパターンって交通系の事故が多くないか?
まぁ、現代だと一番身近な死のパターンでもあるので、仕方ないか。
「ねぇ、これからどうする? お家に帰る?」
「家もいいんだけど……さっきスイーツ店の無料券をもらったし、駅前に行かないか?」
本当は分かっている。
このまま帰った方が安全だろう。でも、どうしても行きたかった。
「麗奈ってクレープ、好きだったよな?」
「……好きっ」
俺の意図が伝わったのだろう。
麗奈は途端にほっぺたを赤くして、愛の言葉を囁いてきた。も、もちろんクレープのことだよな?
やめろ、そんな意味深な表情を浮かべるな。こっちまで照れそうになるから。
「じゃあ、行こっか。あ、話は変わるけど、光喜くんは子供何人ほしい?」
「変わりすぎだろ……」
そうやって、のんびりと会話して歩き続ける。
そして、駅前に到着してすぐのこと。
目当てのクレープ屋さんは、横断歩道を通ってすぐそこにあるのだが……。
「――光喜くん、これから歩くときはわたしの三歩後ろにぴったりくっついてきてね」
麗奈の空気が、変わった。何かに気付いたのか、俺にそんな指示を出してきたのである。
はたして何が起きるのか。ドキドキしながら、言われた通りに三歩後ろを歩いていると。
(……ん? あの人、なんか変だな)
前方から、フードをかぶった男性がふらふらと歩いてきた。
横断歩道の信号が青になって、待機していた人々が歩き出している。そのうちの一人にすぎないのに、やけに気になって見ていたら……数メートルほどの距離になると同時に、
「――殺す」
男性が、懐からナイフを取り出した。
その殺意に満ちた目は、まっすぐ俺を見ている。
これは、もしかして通り魔か!?
(危ない。逃げないと!!)
もちろんそんなことは分かっている。通り魔が俺に狙いを定めていることにも気付いている。
でも……!
(あ、足がっ)
足がすくんでいた。
初めて、他人から殺意を向けられて怖かった。
そのせいで、動けなかった。
「死ねぇえええええええ!!」
通り魔はもう俺に向かってナイフを向けている。
刃先を、俺の腹部に向けて……まっすぐ、突いてきた。
ドスッ。
鈍い音が聞こえた。
「うぐっ」
うめき声が、場に響いた。
「――っ!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
そして俺は、何も見えなくなった――。
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