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第四十三話 女騎士「負けたら人権をくれてやる」



 かわいらしい見た目に反して、麗奈は血気盛んだ。

 さすが、ボクシングジムの一人娘。負けん気の強さは人一倍である。


「レイナなら分かってくれると思っていたぞ」


「セーラちゃんには『言葉』より『拳』の方が対話できるかなって」


「まさしく、その通りだ。言葉は文人の武器。拳こそ、武人の最大の武器だからな」


「殴れば全部解決、だね」


「フハハ! 間違いない」


 ダメだ。会話が脳筋すぎてついていけない。

 あまりにも野蛮で、俺とフィオはちょっと呆れていた。


「ミツキお兄さま、ごめんなさい。わたくしは一応、止めたのよ? でも、セーラが言うことを聞かなくて」


「フィオも苦労してるんだな……」


「うぅ。セーラは優秀な騎士なんだけど、ちょっとおバカなのがもったいないわ」


「麗奈も、普段は大人しいのに変なところで負けず嫌いなのがなぁ……」


 彼女は嫉妬深いタイプではない。

 だが、俺がテレビで綺麗なタレントさんを見ていたら、対抗してくる時がある。まるで『私も負けてないけど?』と言わんばかりに化粧とかしてわざとらしく見せつけてくるのだ。嫉妬ではなく、負けたくないと思うらしい。


 綺麗な容姿をアピールする、くらいならまだいい。

 しかし、セクシーなグラビアアイドルとかを見て鼻の下が伸びてしまったら最後。麗奈が対抗してセクシーなアピールを始めてくるので、あれだけはやめてほしかった。普通に理性を失いそうになるので、勘弁してくれ。


 ……話がそれた。

 とにかく、麗奈は負けず嫌いなのでセーラから戦いを申し入れられて、受け入れていた。


「あの、俺は景品になりたくないんだけど……」


「大丈夫。光喜くん、わたしは絶対に勝つから安心してね?」


「いや、負けることを心配しているわけじゃなくて」


「ミツキ殿。私が負けた場合は人権を捧げる。それで許してくれないか?」


「人権は重すぎる」


 俺が異世界に行く権利、とセーラの人権が等価ではないと思う。

 しかし、麗奈は大きく頷いていた。


「分かった。セーラちゃんの人権、光喜くんにプレゼントするね」


「私が負けたあかつきには全てを捧げる……奴隷にでもなんでもしてくれ!」


「だから、重いって」


 別に求めてないのに!

 というか、俺の意思は二人ともまったく聞いてくれなかった。了承したつもりはないのに、景品になることが決定していた。


「ミツキお兄さま、ごめんなさい……うちの騎士が、ごめんなさいっ」


 主であるフィオが平身低頭、ぺこぺこと謝っている。

 別に怒っているわけじゃないので、大丈夫だよと彼女の頭を撫でてあげた。妹みたいでかわいらしいけど、フィオも色々と苦労しているんだろうなぁ。


「セーラはこうなったらもう何を言っても無駄だから、気がすむまで付き合うしかないわ」


「麗奈も、あの状態はダメだな。俺の言うことなんて聞いてくれないし……」


 止めることは不可能。

 ……いや、でも待て。そもそもどうやって殴り合うんだ?

 まさかここで殴り合うわけはないだろう。狭いし、ご近所さんにも迷惑になる。


 今の時代、殴り合いが許されている場所なんてほとんどない。いくら二人が同意していても、物理的な場所がないので、それを理由に止められるかもしれない。


 ……そう、思ったのだが。


「じゃあ、わたしのお家に行こっか。ボクシングジムだから、ちょうどいいね」


「ぼくしんぐ……ほう! 格闘の競技か。いいだろう、望むところだ」


 なんでちょうど良く近所にボクシングジムなんてあるんだ!

 安全に殴り合える環境が身近にあるせいで、物理的に二人を止めることもできなかった。


 ……と、いうわけで。

 俺が景品となって、二人が戦うことになった――。

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