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第四十話 魔力の回復量と消耗量



 ヘイムと魔法の話をしていたら、麗奈が退屈だったようでいつの間にか寝ていた。

 子供の付き添いで映画に来ている父親みたいなものだろうか。嫌いじゃないが興味もないので、睡魔に負けたらしい。


「……いいなぁ」


 ぐっすりと眠る麗奈を、ヘイムは羨ましそうに見つめていた。

 そろそろ眠りたいのだろう。でもごめん、もうちょっとだけ……!


「魔力の回復速度が遅いのは分かったんだけど、日常で使用している魔法でどれくらい消耗するんだ? たとえば、今って認識を阻害する魔法とこの世界の知識を検索する魔法を使ってるよな? この二つを使用する魔力と、回復する魔力って、どっちが大きいんだ?」


 ここはしっかりと確認しておきたい。

 なぜなら……仮に魔法の消耗量が大きい場合、いずれこの二つの魔法を維持することができなくなる。そうなると、この世界の生活に支障をきたすことになるからだ。


 そうなる可能性があるのなら、麗奈と協力して異世界の三人が不自由なく過ごせるようにサポートする必要があるだろう。


 そして、この懸念は――やはり、問題だったようで。


「……よく気付いたね」


 ヘイムは感心したように俺を見ていた。

 眠そうだった半開きの目が、僅かに大きくなっている。


「『認識阻害』と『情報取得』の魔法は、ほんのわずかに消耗量の方が大きいよ。二つとも初級の魔法だから本来は魔力の効率もいいはず。でも、それ以上にこの世界では魔力の回復が遅い」


「つまり……この世界に来た時から魔力は減り続けているってことか」


 回復速度より、消耗速度の方が大きい。

 スマホで充電しながらゲームをしている時と同じだ。最新のゲームだと消費電力の方が大きくて、充電していても残量は減り続ける。


「微量だけど、日に日に減っていることは間違いない」


「……あ、でもヘイムは保有魔力量が多いんだっけ? だったら残量も多いから問題ないのか」


「この二つの魔法を使用するだけなら、ね」


 ……あ、そうか!

 言われて気付いた。ヘイムは二人と違って、この世界に来る際にもう一つ大きな魔法を行使している。


「『転移魔法』か……!」


「うん。ミツキ、なかなか察しがいい」


 異世界系の作品を読みまくっていたおかげだ。

 なんだかんだ、転移魔法は大きな魔力を消費するのだろう。そうやって使用者を制限しないと、誰もが転移しまくるような世界観になってしまうからだ。転移はやはり制限があった方が、作品が面白い。


 やっぱり、転移魔法の仕様には制約があるようだ。


「転移魔法を使うと、私の魔力を四割ほど消費する。つまり、今の時点で私の保有魔力量は半分程度しか残っていない」


 それが意味することとは、つまり――時間が限られているということだ。


「……こうやって不自由のない生活を維持できるのは、あと三日くらいかな。それ以降は、転移魔法に使用できる魔力が足りなくなる」


 三人は永遠に、この世界にいられるわけじゃない。

 薄々、察してはいたが……やっぱり、そうみたいだ。


「認識阻害魔法と情報取得魔法を切ることはできないのか? そうしたら、少しずつだけど回復できるよな」


「認識阻害魔法を切ると、私たちが目立って事件に巻き込まれる可能性が高くなる。情報取得の魔法は、言語の翻訳という大きな意味も持っている。簡単に切れない」


「俺と麗奈が協力しても、ダメか? 家にいてもらえれば安全だと思う」


「……君たち二人がかくまってくれるなら、認識阻害の魔法は切っても大丈夫かもしれない。だけど、情報取得の魔法がなくなると、言語が通じなくなる」


「最悪、一人だけ行使して俺たちの通訳をしてもらう……みたいなことをしている時点で、生活は不自由だなぁ」


 無理をすれば、この世界に滞在することも可能だろう。

 だが、わざわざそこまでして、三人はこの世界に滞在する必要はないわけで。


「私たちの目的は、君だよ。君さえ説得できるなら、長居する必要はない」


 まさしく、その通りだ。

 つまり、三人は……三日で俺を説得しようとしている、というわけだ――。


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