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第三話 絶対に転生させたい運命VSかよわい(?)乙女ヒロイン

 歩いていたら、急に頭上から植木鉢が落ちてきた。アパートの上階に住んでいる人が誤って落としたようである。


 あ、危うく死ぬところだった……!


「危なかったね~」


 と、危機感のまったくない声で呟いているのは、幼馴染の麗奈。

 そう言っているが、余裕の表情で落下してきた植木鉢を粉砕したのを俺はちゃんと見た。あまりにも速い拳だったので、厳密には見えていなかったけど。


「転生フラグって……うーん」


 麗奈は何やら考え込んでいる。一応、拳は痛かったようで、手をプラプラと揺らしていた。それだけですむのかよ……達人の拳は植木鉢より頑丈なのかな。


 なんてことを考えていたら、アパートの住人が慌てた様子で降りてきた。


「す、すみません! お怪我はないですか!?」


 この人も悪気があったわけじゃない。

 さっきのトラックのおじさんと同じだ。これもまた『事故』である。


 とりあえず無事だということを伝えると、住人は安堵してくれた。謝罪の気持ちだということで駅前のスイーツ店の無料券も渡してくれたので、本当にいい人だった。


 そんなこんなで、事後処理を終えて。

 再び学校に向かって歩き出したのだが、残念ながらもう遅刻は免れない時間帯になっていた。


「……もうテストどころじゃないね」


 麗奈も諦めたようで、今はのんびりと歩いている。ただ、周囲の様子を警戒しているのか、視線だけは忙しなく動いていた。


 こんなに連続で事故が続いているのだ。

 また何かが起きてもおかしくないだろう。


「夢で見た真っ白い空間に、トラックの暴走に、突然の落下物……全部、異世界転生の定番だ」


 三回も続けば、偶然と言い切ることもできなくなってくる。

 いつもはこういった妄想の発言を笑い飛ばす麗奈でさえ、今は真顔で俺の話に耳を傾けていた。


「そういえば、夢で女神様に『異世界に転生する運命』って言われたんだよね?」


「うん。そのせいで、俺は転生させるために変なことが起きてるのか?」


「……信じられないけど、そうだったらちょっと困るなぁ」


 麗奈はため息をついて、足を止めた。

 俺の方を振り向いて、彼女はこんなことをぽつりと呟く。


「光喜くんが転生しちゃったら、寂しいもん」


「……うん。そうだよな」


 こんな状況に至ってなお、やっぱり転生に憧れがないと言えばウソになる。

 だが、そんな憧れは、麗奈に寂しい思いをさせることより優先されるものではない。

 それに、仮に俺が死んでも確実に転生できると決まっているわけじゃないのだ。


「安心してくれ。俺は、死ぬつもりなんてないぞ」


 なんとなく、麗奈が不安そうにしているのでちゃんと気持ちを伝えた。

 死ぬことを受け入れるつもりはないのだ、と。


「――そっか! 良かった……じゃあ、安心して。わたしが、光喜くんを絶対に守るよっ」


 か、かっこいい……!

 まるで主人公みたいなことを言う麗奈に、不覚にもときめいた。

 てか、俺がそのセリフを言いたいけど、能力的に厳しいので仕方ない。


「頼んだ。俺を守ってくれ」


「うん! 光喜くんが死ぬ運命なんて許すわけないじゃない……だって、わたしと光喜くんは結婚する運命が決まってるんだから」


「お、重い。まだ高校生だから、もっとゆっくりで」


「えー!? 小さい頃におもちゃの指輪くれたのに……あの指輪、まだ大切に保管してるよ?」


 と、いつものように言葉を交わしていると。

 早速、運命が俺に襲い掛かってきた。


『ワン!』


 あ、犬だ。かわいいなぁ。

 そう思った瞬間にはもう、犬はトコトコと歩いて道路に飛び出した。


「ああ!?」


 しかも、車が間近に迫っているというのに、犬はのんきに歩いている。


 危ない! とっさに俺も飛び出して犬を抱えた。

 ただ、目の前にはもう車が迫っているわけで……またしても、死んだ――と思った時にはもう俺は助けられていた。


「おっと」


 犬を抱えた俺ごと、麗奈が抱えてジャンプ。

 細くて小さな体では想像できない跳躍力で車の走行経路を脱出。見事に交通事故も回避した。


「……な、なんかごめん」


「いいよ。これくらいなら余裕で助けられるから、大丈夫」


 麗奈は心の底から何も気にしていないようで、ニッコリと笑っている。

 その笑顔があまりにも心強くて、思わず惚れかけた。もう好きだけど、更に好きになりそうだ。


 彼女が隣にいてくれたら、俺が死ぬことはない。

 そう思うと、なんだか安心したのである――。

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