第三十五話 チートスキル【魔纏鎧装】。効果は『強い!』
スキル名【魔纏鎧装】
もし俺が異世界に行ったら、このスキルが使えるようになるみたいだ。
「効果は、魔力を鎧のように纏うこと。魔力による強化と防御が同時に発動する」
「ふ、普通に強いな」
シンプルだが、だからこそ単純に強そうだった。
もちろん、強化と防御の度合いにもよるけど。
「ミツキはわたしの100倍の魔力を持っているから、最強だね」
「え? ヘイムの100倍っておかしくない?」
設定が壊れているだろ。
たしか、出会ったときにセーラが『ヘイムの保有魔力は普通の魔法使いの100倍』と言っていた。
単純計算、俺は普通の魔法使いの1万倍なのだが。数値で見ると設定として破綻してるだろ。
「すごいわ……さすが英雄さまっ」
「ほぼすべての魔法や物理攻撃は通用しないね。同時に、ほぼすべての攻撃が一撃必殺となる」
「……ぼくのかんがえたさいきょうまほう、だな」
分かりやすいチートスキルの代表例みたいだった。
シンプルすぎて今時の異世界系だと埋もれそうだなぁ。今、人気を出すならもっとひねった設定の方がいい気がする。まぁ、分かりやすくて俺は好きだけど。肉弾戦特化に近いのかな? 泥臭くてたまらない。
「ただ、自分の肉体にしか付与できないから、武器は使用できない」
「あ、でも伝説の武器とかだと大丈夫だったりしないか? 俺、剣で戦ってみたいんだけど」
「無理。君の魔力に耐えられる武具なんて存在しない」
「……そっかぁ」
「ミツキお兄さま、落ち込まないでっ。拳で戦っても十分に強いわ!」
ありがとう、フィオ。励ましてくれてすごくほっこりした。
俺は剣と魔法でいうと剣が好きだったので、ちょっと残念ではある。まぁ、このスキルだと魔法って感じでもないか。ほぼほぼ物理である。
ともあれ、強いのならそれでいいか。
(って、教室で恥ずかしい話をしてる気がする。いや、でも……認識阻害の魔法で大丈夫なのか)
あと十五分ほどで始業する。
そろそろ教室にも生徒が集まってきているが、誰もこちらを気にしている様子がない。
おかげで気兼ねなく異世界のスキルについて話すことができた。
「拳ってことは、ボクシングに近いか。一応、子供のころに麗奈と一緒にならってたけど、俺は全然才能なかったから大丈夫かなぁ」
「光喜くんは優しいから向いてないんだよね」
「……麗奈も興味があるなら聞けばいいのに」
「別に興味はありませーん。話が聞こえてくるだけです~」
返答があったということは、彼女は自習しながらもこちらに耳を傾けているのだろう。
だが、反応は素っ気なかった。やっぱり異世界関連については、あまり肯定的じゃないのだろう。
「ここまで強いと技術は関係ない。普通に殴ってても勝てる」
「まぁ、そうなるか」
話を聞いた感じ、まさしくチートだ。
これで負ける方がおかしいだろう。そう思わせる力だと思う。
「どう? ワクワクしてる?」
「うん。かなり」
「それでは、ミツキお兄さま……一緒に、冒険しに行きませんか?」
……なるほど。
朝からどうしてこんな話を始めたのか気になっていたが、それが目的だったか。
(そういえば、昨日『異世界に勧誘する』って言ってたな)
その勝負を麗奈に申し込んでいたことを思い出した。
その一環として、彼女たちはチートスキルについて教えてくれたらしい。
そしてそれは、明確に効果的だ。
だって、俺の男心がとてもくすぐられていたのだから――。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
「面白かった!」と思っていただけたら、ぜひ感想コメントを残してもらえると嬉しいです!
『ブックマーク』や下の評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると、次の更新のモチベーションになります。
これからもよろしくお願いします(`・ω・´)ゞ