第三十四話 【スキル】が嫌いな男の子なんていない
「――なんか夢を見た気がする」
朝。麗奈の作ってくれたサンドイッチを食べていた時のこと。
起きた直後こそぼーっとしていたが、彼女の顔を見ていたら、ふとそんなことを思ったのである。
「夢って何? もしかして……わたしと結婚する夢とか!?」
「そうだったかなぁ? うーん、麗奈に関連する出来事だった気がするんだけど」
「え? やだ、うそっ。光喜くんってわたしのこと大好きじゃん……結婚でもしとく?」
「お前も俺のことが大好きな件について」
「両想い、だね」
「両片思いが流行ってるらしいぞ」
「そうなんだ。じゃあ、しばらくそっちでいいね」
「うん。そういうことにしておこう」
……朝からなんとも、甘酸っぱい会話をしているが。
麗奈と話していても、やっぱり夢について思い出すことはできなかった。
覚えていたかったないような気がするのに、何も記憶に残っていない。麗奈がいたかな、というくらいだ……まぁ、夢なんてこんなものか。
覚えていたところで、実際は大したことなかったりするだろう。
「光喜くん、そろそろ顔とか洗っておいてね。わたしは洗濯ものしてるから」
「ありがとう。頼む」
「べ、べべべ別に下着なんて見てないからね!?」
「何も聞いてないから落ち着け」
そもそも、そのセリフは男女で逆では?
……と、いう感じで。
夢のことは気になるものの、麗奈とはいつも通りの朝を迎えた。
今日もまた、穏やかな一日を過ごすのだろう。
この時点ではまだ、そう思っていたのだが……どうやら少し、違うようで。
「ミツキお兄さまのスキルを調べてもいいかしら」
登校直後のことだった。
俺を待っていたのか、既に到着していたフィオが出合い頭にそんなことを言ってきたのである。
「す、スキルだって!? そんなことができるのか!?」
「ええ。ヘイムが分析の魔法を使えるから」
「任せて」
流石エルフ。しかも千年も生きているらしいので、彼女はほぼ万能の存在なのかもしれない。
そっか。ここは異世界とは違う世界だけど、スキルを調べることもができるんだ……!
まず、驚いた。
あと……うん。ワクワクしていないと言えば、嘘になった。
「うわぁ。光喜くんが好きそう……」
麗奈も察している。きっと、こちらの顔を見て、俺が興奮していることも感じ取っているのだろう。呆れたようにため息をついていた。
「だ、だってスキルだぞ!? これが嫌いな男の子なんていない」
「はいはい。わたしは自習してるね……男の子ってしょうがないなぁ」
麗奈は全くの無関心だった。
麗奈も調べてもらえばいいのに……って、彼女は無理なのかな。異世界に適性がないし、それから麗奈自身も異世界に否定的だから、あまりかかわりたくないのかもしれない。
彼女の心情はもちろん分かっている。
で、でも……ちょっとだけ! 調べてもらうだけだからっ。
と、心の中で言い訳して、俺はフィオとヘイムに意識を向けた。
……って、あれ? そういえばセーラがいないな。
「セーラは寝坊してるわ。宿泊施設のベッドがすごく気持ち良かったらしいの」
な、なるほど。この世界を満喫しているようで何よりだ。
まぁ、セーラのことはさておき。
「ミツキ。解析していい?」
「お、おう。頼んだ」
頷くと、ヘイムが俺の額にちょこんと指をついた。
彼女は目を閉じて、何やら小声でつぶやいている。これはもしかして……呪文というやつか!?
何を言っているのか気になって耳をすませたが、何も理解できなくてつい鼻息が荒くなった。特別な言語なのかな?
と、勝手に興奮していたら……ヘイムの指先が、淡く光った。
どうやら、魔法が実行されたらしい。
つまり、俺のスキルが判明したようだ。
「ミツキのスキル名は……【魔纏鎧装】だね」
「まてんがいそう?」
なんだそのかっこいい名前は!
そのスキル名に、ときめかないわけがなかった――
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