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第三十一話 悪政を敷く父を持つ姫、不死の呪いを受けたエルフ、狂戦士の女騎士

 異世界から来た三人は、意外と複雑な状況にいるらしい。


「わざわざ、この世界に派遣された三人ですよ? 普通なわけがありません」


 ……俺もなんだかんだ、平和ボケしているのかもしれない。

 麗奈が彼女たちを『旅行で来た』と思っていたように、俺も彼女たちに何か事情があるとはまったく考えていなかった。平穏な世界で生まれたので、こればっかりは仕方ないと思うけど。


「お姫様は王位継承権第七位の、妾から生まれた子供です。父は悪政を敷く愚王で民を苦しめているみたいですね」


 いつの間にか、女神様は手元に大きな本を持っていた。

 それは恐らく『運命の書』と呼ばれるものなのだろう。俺を含む、すべての生命の情報が記載されているのだろうか。異世界の三人についても、女神様は色々と教えてくれた。


「彼女自身、数年前までは自分が姫であることも知らずに郊外でひっそりと暮らしていたそうです。しかし王位継承権第一位の者が暗殺されたことをきっかけに、王位継承候補者の対立が激化。お互いに殺し合った結果、候補者が少なくなり、彼女も継承者の一人として地位を得たそうです」


「……そ、それは、えっと」


 なんて言えばいいのだろう。

 あんなに愛らしいのに、重たい設定を背負っているなんて。

 ファンタジー好きな俺だが、この状況でワクワクすることはなかった。むしろフィオのことを思うと、息が詰まるくらいだ。


「現在の候補者は第三位と第六位、それから第七位の姫だけですね。彼女自身はまともな感性を持っているので、自分が王になることで悪政を止めたい、という思いがあるそうです。そのための功績を作るために、異世界に来て光喜様を連れて行こうとしている――という事情があるそうですよ」


 さすが女神様。

 細かい裏設定まで教えてくれて、すごく助かる。


「……たぶん、フィオはこのことを俺に言わないよなぁ」


「言わないでしょうね。心象が悪くなりますし、光喜様の負担にもなる事情ですから」


 なんとなく、異世界のことを多く語りたがらないなぁとは思っていたのだ。

 なるほど。こういう事情があるなら、納得だ。


「私も、もし光喜様が記憶を忘れないのなら、こういった情報は伏せていたと思います。知らない方がいいこと、というのがありますから」


「うん。知っても、どうにもできないよな」


「――あなたが異世界に行くことでしか解決できない事情です。そしてそれは、あなたの物語の破綻を意味するものですから」


 メタいなぁ。

 でも、そうか……この女神様との時間の意味を考えると、こういった発言にこそ価値があるのか。

 つまりこれは、俺の頭を整理する時間ではない。


 まさに、女神様のような――俯瞰で見ている者のための、補足なのだ。


「不死の呪いを受けたエルフ、という設定もそもそも不要ですからね。光喜様にとって、彼女は転移魔法が使える優秀な魔法使いであり、それだけでしかありません。彼女が呪いを解除するために、王の所有している『反呪の腕輪』という宝具を盗むために姫に協力している、ということも光喜様には関係ありません」


「そ、そんな深い事情があるんだ……」


「転移魔法の使い手ですよ? しかも、異世界に行って帰って来るだけの膨大な魔力を保有している規格外の魔法使いです。普通ではありません」


 知る必要はないし、知ってしまうとノイズになる。

 話がそれるし、このことにリアクションしないことの方が不自然だからこそ、開示されることで物語が冗長になる危険性がある情報だ。


 それを知ることができる機会があって、むしろ俺としては幸運なのかもしれない。

 もちろん、どうせ忘れるのだが……それでも、知って良かったと思った――。




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