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第二十五話 ラブコメと異世界の板挟み

 そういえば、女神様が俺に『光喜様は異世界で英雄になる運命』と言っていた。

 最初は、転生するものだとばかり思っていたし、実際にそうなる予定ではあったのだろう。トラックの暴走や通り魔なんかはそのためのフラグだったと考えている。


 だが、麗奈がそのフラグをことごとく折りまくった。

 その結果、転生ではなく召喚されかけて、それすらも麗奈が防いで……今度は『転移』を果たすために、異世界からわざわざ三人が来た――という流れなのだろうか。


「……さっきも言ったけど、わたしは光喜くんの意思を尊重するよ」


 異世界に疎い麗奈も、ようやく事態が動いていることに気付いたのだろう。

 先ほどまで日常コメディのように呑気だったのに、今は少しだけ表情が暗かった。


「どうしても行きたいというのなら、止めることはできないよね……」


 知っている。彼女は愛情深いが、ヤンデレではない。

 ヤンデレのように、自己中心的なわがままを振りかざしたことは一度としてない。自分の愛情を貫くために、俺を傷つけるようなことだって、当然しない。


 彼女はあくまで、俺のことを誰よりも大切に思っているだけなのだ。

 だからこそ、俺が行きたいと言えば俺を送り出してくれるだろう。むしろ俺に負い目を感じさせまいと、笑顔を浮かべてくれるような、優しい子なのだ。


 ……それだけ、俺を愛してくれているというわけで。


「でも、やっぱり寂しい。わたしは、行ってほしくない……一日だって会えなくなったら辛いもん」


 分かっている。

 麗奈が寂しい思いをすることは、理解している。

 だからこそ、異世界ファンタジーが目前にあっても、俺は前に踏み出そうと思えないのだ。


(断るしかないな)


 異世界も好きだ。

 でも、麗奈のことは大好きだ。


 比較なんてするまでもない。


「……数ヵ月だけ。半年はかからない。私がまた一往復分の魔力が回復したらすぐに帰還してもらう。それでも、ダメ?」


「ごめんなさい。レイナお姉さま……辛い気持ちは、分かるわ。でも、わたくしたちも引けない理由があるの」


 だが、異世界勢も折れる気配はない。

 俺の表情を見て、旗色が悪いのも察しているのかもしれない。さらに言葉を重ねてきたので、断るタイミングがなかなか見つからない。


 そんなタイミングで……ずっと静観していた彼女が、ついに動き出してしまった。


「――難しいことは何も分からん!」


 突如としてそう叫んだのは、女騎士のセーラ。


「とりあえず、ミツキ殿は乗り気ではないのだな?」


「まぁ、そうかも」


「それなら――レイナよ、勝負といこうか」


 しょ、勝負って何?

 なんとなく、まずい気がした。

 今までのやり取りでなんとなく分かったのだが……この女騎士、少しおバカだ。


 今、本来であれば少しシリアスな空気が流れている。

 だが、彼女はその空気を読めずに、ぶち壊す発言をする可能性がある。


 この件についてはふざけない方がいい。だから、止めるべきだと判断したが……もう遅かった。


「ミツキ殿を我々に心変わりさせれば勝ちだ。レイナもその時は認めてくれるな?」


「心変わりって……つまり、光喜くんがわたしから鞍替えするってこと?」


「鞍替えとまではいかないだろうな。しかし、数カ月の間だけは我々の世界に来たくて仕方なくなる……そういう『誘惑』の切り札を、いくつか持っているのでな」


 ああ、やっぱり!

 俺としてはこの場で断るつもりだったのに……いつの間にか、勝負という形式になりそうだった。


「ふーん。いい度胸だね。わたしは光喜くんの幼馴染にして、最強にかわいい学園の天使様で、誰よりも彼を愛している最強のヒロインだよ? 勝てると思ってることがおこがましいと思わないの?」


 そして麗奈は、こう見えて意外と負けず嫌いだ。

 俺以外に対するすべての物事において、彼女は絶対に勝ちたがる。

 その負けん気の強さは、元ボクシングプロの麗奈の父の折り紙付きだ。


「まぁ……たしかに、セーラちゃんのおっぱいは脅威だけど」


「わ、わわわ私の胸のことはどうでもいいだろ! とにかく――勝負だ!」


 俺の意思は?

 俺に意見は求めてくれないのか!?


 止めようと思っていた。こんな不毛な争い……というか、最初から決着がついている戦い、やる意味がない。

 だが、二人ともやる気だったので、水を差すことはできなかった――。



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