第二十三話 異世界アニメよりほのぼの日常アニメが好きな麗奈ちゃん
彼女たちが転校してから、少し時間はかかったが。
ようやく、この件について話を聞くことができる様だ。
「わたくしたちは――ミツキお兄さまを迎えに来たわ」
なぜ、異世界の住人たちがこの世界に来たのか。
その理由を、彼女たちはついに明かしてくれたのである。
(まぁ、だいたい予想できていたことではあるけど)
なんとなく、そうだろうなとは思っていた。
初めて出会ったのは今朝のこと。俺が異世界に召喚されかかっている時に出会った。麗奈のおかげで俺は現世に戻ってきたので、彼女たちからすると召喚は失敗に終わったということになる。
つまり、異世界勢力としては俺を召喚しなければならない理由があったはず。
そのために、わざわざこうやって世界をまたいでいるわけだ。きっと、異世界の情勢が大きく関係しているのだろう――というところまでは、異世界ものが好きなので察していたのだが。
「えー!? み、みみみ光喜くんを連れて行こうとしてるのっ!?」
……麗奈は知らなかったんだ。
寝耳に水と言わんばかりに目を丸くしている麗奈。純粋なリアクションはかわいい……けど、異世界のことについて察しがやや鈍い。
いや。もしかしたら、異世界系に理解がない一般人からすると、このリアクションが普通なのかな。
一応、麗奈も俺と一緒に異世界系の作品は見ているはずなんだけどなぁ。たぶん、子供のアニメを一緒に見ているお母さんと同じなのだろう。興味がないから、内容はまるで覚えていないのかもしれない。
「ダメ! 光喜くんは異世界に行かせませんっ。怪我するかもしれないでしょ?」
子供の遠出を禁じる母親みたいなことを言い出す麗奈。
なるほどなぁ。思ったより異世界の三人に対して態度が柔らかいと思っていたのだが……麗奈はあちら側の状況を全く分かっていなかったようだ。
「まぁまぁ、麗奈。落ち着けって」
「……なんで光喜くんは冷静なの? だって異世界だよ? もっと驚かないの?」
「だいたい予測できてたからな。ほら、朝に召喚されかけた時に三人を見かけたって言っただろ? その三人がこの世界に来たということは、つまり俺を異世界に連れていきたいことだろ」
「そ、そんなの分かんないよっ。てっきり、観光に来たのかと思ってた……!」
麗奈がのんびりしすぎている件について。
お菓子とジュースを用意したことといい、彼女だけほのぼの日常アニメのトーンだった。
とはいえ、話を聞いた感じ……そこまで深刻ではないわけで。
麗奈は今生の別れになるから止めているのだろうが、そうじゃないことも説明した方がいいだろう。
だって、先ほど『転移魔法は往復できる』と言っていたのだ。
つまり、俺はこの世界に帰ってこられる。もっと踏み込むと、麗奈だってそうだ。
「たしかにこの世界より危ないかもしれないけど、異世界ファンタジーだぞ? 楽しそうだし、一緒に行ってみてもいいんじゃないか?」
「わたしも行けるの……!?」
やっぱり麗奈は勘違いしていたらしい。
自分も行けるのなら、と迷うそぶりを見せる。
この調子なら、あと一押しで許可がとれそうだ。
そう、思ったのだが。
「――行けない。レイナは無理」
想定外の横槍が入った。
俺たちのやり取りを静観していたヘイムが、首を横に振っていた。
「ミツキは大丈夫。魔力に耐性があるから……でも、レイナは違う。もし異世界に行ったら、数秒も耐えられずに死んじゃう」
「……え?」
ご都合主義が、ご都合に合わない。
どうやら、何もかもが俺に都合のいいものではないようだ――。
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