表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/74

第二十二話 異世界への憧れ

 歩くことしばらく。ようやく俺の家に到着した。


 我が家は1DKのアパートである。

 一人で暮らす分には快適なのだが、さすがに五人も入ると少し狭いかもしれない。


 一応、ソファがあるのでそこに三人は座れる。異世界の三人にちょうどいいだろう。

 ただ、そうなると俺と麗奈が床に座ることになる。俺としては来客なので、三人を優先したいところだったのだが。


「ミツキ、レイナ。私とセーラはいいから、座って」


「主と同じ席に座るわけにもいかんからな」


 身分的な問題があるらしい。

 そういうわけなので、俺を中心にフィオと麗奈がそばに座った。ちなみに、ヘイムとセーラは立ったままである……座布団はあるのだが、まぁ本人たちの好きにしてもらおう。


 さて、これでようやく落ち着いて話ができる。

 何を目的に彼女たちがここに来たのか――そのことを、しっかりと聞きたかったのだが。


「はい、お菓子とジュースでもどうぞ~。好きに食べてね」


「オカシ? ジュース? あ、この世界のスイーツなのね」


「姫! 毒見は私にお任せを……ぱくっ。ぱくっ。ぱくっ。ぱくっ」


「セーラ!? 毒見にしては食べすぎだと思うわっ。わたくしの分も残してね……?」


「……ふわぁ。眠くなってきちゃった」


 ゆ、ゆるいなぁ。

 まるで日常系アニメのワンシーンだった。もう少しシリアスな場面になる気がしたけど、あまりにも緊張感がなさすぎる。


 麗奈がお菓子とジュースを出したせいだろうなぁ。

 たぶん、彼女は友人を家に招いたくらいの感覚なのかもしれない。


 お菓子に夢中なフィオとセーラ。

 立ったまま寝ようとしているヘイム。

 隣で俺の制服のしわを伸ばしている麗奈……みんな想像以上に自由だった。


 このままだと、本題に入りそうにない。

 そう思ったので、やや強引だが……唐突に切り出してみることにした。


「それで、三人はなんでこの世界に来たんだ?」


「もぐもぐもぐ!」


「……ごっくん。セーラ、口に入れながら説明するのは不可能よ、落ち着いた方がいいわ」


「すやぁ」


「あ、光喜くんったら寝癖もついてる……コンディショナー変えた方がいいかなぁ」


 と、まだまだ空気は緩いのだが。

 一応、俺の質問はちゃんと聞いていたらしい。フィオとセーラがお菓子を咀嚼した後に、ちゃんと答えてくれた。


「大賢者ヘイム様の転移魔法陣で来たんだ」


「ヘイムは我が世界でも数少ない転移魔法の使い手なのよっ」


 いや、来た手段ではなく目的を聞いたつもりだったのだが。

 でも……ちょうどいい。このことについても、詳しく知りたかったのだ。 


「転移魔法って、こんなに気軽にできるのか? 俺のイメージだと、異世界間での転移は一方通行だと思ってたんだけど」


「――通常はそう。でも、私はすごい魔法使いだから……往復できる」


 眠りかけていたヘイムだが、自分のことが話題になっているのに気付いたのか。

 鼻提灯をおさめて、ちゃんと説明してくれた。


「ただ、とにかく膨大な魔力を消費する。一往復する分の魔力を回復するには、元の世界でも三カ月ほどかかる」


「――ちなみに、そこの老婆は1000年生きる大賢者だ。保有魔力量も普通の魔法使いの100倍は超える。それでも一往復分がやっと、ということだ」


「こんな芸当ができるのは、ヘイム一人だけなのっ。彼女がいなければ、こうやってわたしたちが異世界に来ることはできなかったわ」


 なるほど。やっぱり、そう簡単に異世界間で転移することはできないよな。

 もし転移が気軽にできるなら、今までにも異世界からの住人がきっといたはずだ。それがいないということは、ヘイムが稀有な存在という証明だろう。


(それなら、麗奈も一緒に行けそうだな)


 往復できるのなら、帰ってくることだって可能だ。

 片道切符じゃないのなら、麗奈だってきっと許してくれるだろう。


 設定としては都合が良すぎるように思える。

 いかにもなご都合主義の設定だ。しかし、それの何が悪い?


 異世界も楽しめる。大好きな人とも一緒にいられる。

 そのどちらも手放さなくていいのなら、それが一番いいことだ。


(もしかしたら……異世界に行けるかもしれない)


 そう考えると、なんだかワクワクした。

 麗奈に申し訳ないからあまり声を大にして言えないのだが……やっぱり俺は、異世界ファンタジーが好きである。


 可能であるなら、行ってみたい。

 その気持ちは、やっぱり今も変わらなかった――。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

「面白かった!」と思っていただけたら、ぜひ感想コメントを残してもらえると嬉しいです!

『ブックマーク』や下の評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると、次の更新のモチベーションになります。

これからもよろしくお願いします(`・ω・´)ゞ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ