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第十七話 もし、彼が異世界に行っていたら――

 何はともあれ。

 現状、麗奈にも認識阻害の魔法がかかっているせいで、一人だけ話に入ってきていないわけで。


「えっと、ヘイムさん? お願いがあるんだけど」


「ヘイムでいい。どうしたの?」


「……分かった。ヘイム、麗奈だけ魔法を解除してくれないか?」


 このままだと、麗奈は三人に対して無反応のままだろう。

 なんだか彼女だけ仲間外れにしているみたいで、それがすごく気持ち悪かった。


「レイナ……この子?」


「うん。俺の幼馴染なんだ。彼女には何も隠し事をしたくない」


「そうなんだ。姫様、どうする?」


 ヘイムはさっきから俺の周囲でちょこまかしている姫様に声をかけた。

 ……なるほど。ヘイムにとって彼女が主だから、こういう些細なことでも許可が必要なのかな。


 現代社会では見られない主従関係が垣間見えて面白いなぁ。


「レイナお姉さまというのね」


 お姉さま、か。

 うん、いい響きだ。


「姫様、お願いできるか?」


「……条件があるわ。認識阻害魔法を解除するリスクがあるもの」


 お。姫様、純粋そうに見えて意外と強かな一面があるな。

 でも、王族ということ考えたらむしろ当たり前なのかもしれない。権謀術数の日常を生きるためには、やはり少しばかりの腹黒さや狡猾さは必要なのだろう。


「――わたくしのことを、フィオと呼んでくれるかしら……ヘイムだけ呼び捨てなんてずるいわ」


 訂正。この子はあれだ。俺の想像以上に純粋でかわいいだけの少女だった。

 こんなに愛らしい交換条件、飲まない訳にはいかないだろう。


「それはいいんだけど、本名はフィオーネじゃないのか?」


「愛称よ。心を許している相手には、そう呼んでもらっているわ」


 なんだそれ。かわいすぎるだろ。

 あと、出会ったばかりなのに懐かれていて、普通に嬉しかった。甘やかしたくなるなぁ。


「分かった。フィオ、麗奈の魔法を解いてもらえるか?」


「――えへっ♪」


 交渉は成立。姫様ことフィオが握手を求めてきたので、握り返しておく。おててちっちゃい。


「じゃあ、ちょっと待ってて。魔法を解くから」


 姫様の了承を得たところで、ヘイムがベンチに座っている麗奈に歩み寄った。

 魔法の解除には少し時間がかかるのかもしれない。今は麗奈の頭に手をかざして何やら呪文めいたものを唱えているので、そっとしておこう。


 ……あ、今のうちに彼女についても聞いておこうかな。


「えっと、セーラさんでいいんですか?」


 姫様の近くでずっと仏頂面をしている女騎士のセーラさんにも、声をかけておく。

 フィオとヘイムは好意的なのだが、彼女だけずっとツンツンしていて接し方が分からないんだよなぁ。


「ふんっ。私は貴様となれ合うつもりなどない。他人行儀にしてもらおうか」


「分かりました。セーラさん、声をかけてすみません」


「……セーラと呼べ」


「え? なれ合うつもりはないって……」


「敬語も不要だ! 私の騎士道に反する」


 彼女の騎士道が分からない。

 なれ合うつもりはないし、他人行儀にしろと言いつつ、呼び捨てでいいし、敬語も使わなくていいようだ。あれだな、セーラさん……じゃない。セーラは分かりやすいツンデレなのだろう。チョロそうだなぁ。


「セーラは素直じゃないの。特に男性には慣れていないみたいだから、許してあげてね。根は誰よりも乙女で、かわいいお人形集めが趣味なの」


「ひ、姫! それは内密にすると約束をしたではありませんか!?」


「あら。記憶にないわ」


 ……やっぱり、この人たちって一緒にいると楽しいな。俺と三人の相性も悪くない気がする。

 今のやり取りを聞いているだけで、なんだかほっこりした。

 異世界に行ったら行ったで、この人たちと旅をしたりしたのだろうか。


 それはそれで、悪くなかったのかもしれない――。


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