第十四話 逆異世界転移パターン
異世界で見た三人が、なぜかこの現世にいる。
そして彼女たちは、うちのクラスに転校してきた。これに驚かない方がおかしいだろう。
「……?」
麗奈は動揺している俺を見て、不思議そうに首をかしげている。
そうか。彼女は三人と会ったことがないから、分からないんだ。
「あの三人だよっ。今朝、異世界で会ったのは……!」
内容が変な自覚はあるので、麗奈にだけ聞こえる程度の小さな声で伝えた。
それを聞いて、俺のリアクションが腑に落ちたらしい。
「そうなんだ。あのポニーテールが女騎士さんでしょ? たしかに光喜くんが好きそうだね」
どうやら、朝に女騎士さんがタイプだったという話をしたことを、まだ覚えているみたいだ。
「ふーん……今度、ポニーテールにしてみようかな。でも、わたしだと長さが足りないかも……?」
麗奈は分析するかのように女騎士さんを見ている。
まぁ、ポニーテールはした方がいいと思うので、この発言はちゃんと覚えておくことにして。
(麗奈は意外と普通そうで良かった……!)
朝、ちゃんと気持ちを伝えた効果が残っているのか、麗奈は穏やかな顔つきをしている。
おかげで変な誤解はされないと思うので、その点は安心だった。
さて、転校生たちは……今から自己紹介を行うらしく、先生が黒板に名前を書いていた。
「みんな、静かにしろー。転校生に自己紹介してもらうから」
「いいのかしら? わたくしはフィオーネ・ライネス・アマリエルよ。よろしくね」
「私はヘイム。どうも」
「……セーラだ。貴様らとなれ合うつもりはない」
「そういうことだ。みんな、仲良くしてやれよ~」
先生は適当というか、三人に対してなんだか無関心である。紹介も事務的な気がした。
三者三様の美女なので、もう少しリアクションしてもいい気がするのだが。
(うーん。というか、姫様って高校生というより小学生に見えるけど大丈夫なのか……ヘイムさんはまぁ、高校生っぽく見えるけど、セーラさんに至っては、コスプレしてる大人の女性に見えるし)
制服が似合っているのはエルフで魔法使いのセーラさんだけだ。
あの特徴的な長い耳も、みんな触れないし……やっぱり、変な感じがする。
「はい! 先生、セーラさんに質問いい? どんなタイプが好きなのか聞きたいんだけど!!」
「だ、だだだ男性との交際は騎士団のルールで禁じられている!」
「じゃあ催眠術に弱いですか!?」
「さ、さいみんじゅつ? 何か知らんが、私は強い! なぜなら、騎士だからな!」
「分かりました!」
えっと、今ので何が分かったんだろう。
クラスメイトの様子も、やっぱりおかしい。そもそもセーラさんの発言があまりにも突飛すぎる。騎士団とか平気で口にしてるが、誰もリアクションしない。
このパターンは、あれだろうか。
(異世界からの逆召喚……いや、この状況だと逆転移か? このパターンで考えると――)
転生も召喚も転移も世界をまたぐという意味では同じだから、細かい部分はまぁいいか。
とにかく、逆に異世界からこの現世に来たパターンで考えてみると、こうなるだろう。
(みんなの様子がおかしいのは……やっぱり、魔法の影響かな?)
異世界ファンタジーに比べると、あまり読み込んではいないのだが。
しかし、たまに逆パターンの作品もあるので、少しだが知識はある。異世界特有の技術、つまり魔法で認識を誤魔化している……と、都合よく考えておこう。
先生のリアクションの薄さも、クラスメイトの様子がおかしいことも、魔法の影響だと思えば全部納得できた。
「えっと、見上が三人と知り合いなんだよな? だったら面倒を見てやってくれよ。任せた」
……まぁ、知り合いではあるけどっ。
しかし、ほとんど初対面なので、面倒なんてみられると思えない。
(異世界に行くつもりはないんだけど……困ったなぁ)
あと、申し訳ない気持ちもあった。
恐らく迎えに来たのであろう三人には悪いのだが……やっぱり、俺は異世界に行くつもりがないのだから――。
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