第十話 幼馴染とのラブコメ――完結?
何か夢を見た気がする。
……なんてことを、冷静に考えている場合じゃない!
「むぐっ!?」
叫ぼうとしたが、しかし口が魔法陣に沈んでいて声が出ない。
なんで俺は魔法陣に呑み込まれているんだ!?
というか、何も見えない!
目を開けても真っ暗でなんか怖い。
(これは転生……じゃなくて、召喚か!?)
異世界ファンタジーが大好きなので、すぐに気付いた。
転生と召喚は境目が曖昧と言うか、大枠で見るとどっちも転生で召喚なのだが、とりあえず生きている状態で異世界に行ったら転生じゃなくて召喚だと俺は認識している。
つまり、これは異世界からの召喚だ。
(顔から召喚するのかよ!?)
できれば下半身から魔法陣に呑み込まれてほしかった。頭から呑み込まれているので、なんだか魔法陣に食べられている気分である。視界も真っ暗で何も分からなくて困る。
……いや、まずは落ち着こう。こんな時ほど冷静でいたほうがいい。
(召喚されてしまう……このままだと、麗奈と離れ離れになるっ)
結局、麗奈の姿を視認することはできなかった。
眠る前は枕元にいたが、今はどこにいるのだろう……約束通りソファで寝ているのなら、俺の異変に気付く可能性は低そうだ。
彼女に頼れる状況ではない。
……まぁ、たしかに異世界は好きだ。麗奈がいなければ喜んで異世界に赴いているだろう。
でも、大好きな幼馴染と違う世界なんて嫌だった。
だから抗おうとした。右手はなぜか重りがついているみたいに動かなかったので、左手を床について踏ん張ろうとしたのだが……手ごとスルッと沈んだ。それどころか、勢い余って上半身が一気に魔法陣の外側に出てしまった。
「――うわぁ!?」
口元の圧迫感が解放されて、声が出るようになったのはいい。
真っ暗闇から一転。視界に色が戻ったのも良かった。
ただ、魔法陣の外側で俺を見て目を丸くしている美女三人がいたので、そこに驚いて変な声がでた。
「わぁ!?」
「……おー」
「っ!?」
あちら側も、三者三葉のリアクションを見せている。
一人目の王冠をかぶった小さな少女は、俺と同じように驚いていた。
二人目のローブを着用した長耳の女性は、俺を見て感嘆の声を上げていた。
三人目の甲冑を着たポニーテールの女性は、俺を見て警戒するように剣を構えていた……って、いやいや。危ないって。
「しょ、召喚に成功したのっ?」
「分からない。半分しか出てきてないのが気になる……一応、成功はしてるかも?」
「すごいわっ。さすが、我が国が誇る大賢者ね」
「褒めるなら休暇が欲しい……眠い」
一人目の王冠をかぶった少女と、長耳の女性が何やら面白そうな会話をしている。
いかにもファンタジーっぽい会話で、こんな状況なのに少しときめいた。
「姫! お下がりください、この者が味方かどうかまだ分かりません!!」
姫、か。なるほど、小さな少女はお姫様で、甲冑の女性は女騎士で、ローブを着た長耳の女性はエルフの魔法使いかな?
ってか、この人たちに見覚えがあるぞ。
(……この前、ドラゴンと戦ってた人じゃないか?)
初めて女神様に真っ白い空間に連れていかれた時である。
異世界の扉が開いて、そこからドラゴンと戦う女性を三人見かけた。それが、この三人だった気がするのだ。
「姫、とりあえず挨拶してみて」
「そ、そうね。まずは友好的な姿勢を見せないといけないわ」
「お気を付け下さい。見た目は貧弱そうですが、異世界の者です……警戒して損はないかと」
なるほど。どうやら本当に召喚されかけているみたいだった。
「こんにちは。あの、わたくしの言葉は分かるかしら」
「う、うん。分かるけど」
「すごい……意思疎通できたわ!」
なんだこの子、かわいいな。
嬉しそうな笑顔を見て、ほっこりした……あ、違う。ちょっと待ってくれ、マジで俺はこのままなのか!?
もしかしてこれから異世界ファンタジーが始まるのだろうか。
麗奈を残して? そんなの困るのだが……!!
もちろん抵抗はしたい。しかし、俺に抗う手段などない。
もう股下まで異世界に入り込んでいる。足が出るのも時間の問題だろう。
(ど、どうすればいいんだ!?)
まずい。このままだと、幼馴染とのゆるふわラブコメが終わりそうだった――。
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