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変わってきた

先日の「ふたりの違い」の閲覧数が、今までで最高の数36PVをたたき出すことができました。

皆様、こんな稚拙な作品を読んでいただき、誠にありがとうございます。

また、これからも読んでいただけると幸いです。

どうか、よろしくお願いいたします。


 次の日の放課後。

 俺は下駄箱で靴を履きながら、ふと昨日のことを思い出していた。


 橘さんが未来を見て、さりげなく誰かを助ける。

 あれは、他人から見たらただの“偶然”にしか見えなかった。けれど、俺にはわかった。

 未来視で誰かを救っても、何も言われないし、感謝すらされないことだってある。


 それでも、橘さんは迷わず動いていた。


(……ああいうの、ずっと繰り返してきたんだろうな)


 正直、俺には真似できない。

 未来は知りたいけど、それを“変えよう”とまでは思わない。

 でも、彼女は違う。知ったうえで、動くことを選んでる。


 ——じゃあ、俺にできることってなんだろう。


 そんなことを考えながら校門を出ると、ちょうど前を歩いていた橘さんの姿が見えた。

 少しだけ早足で追いつく。


「橘さん」


 名前を呼ぶと、橘さんは振り返った。

 ちょっと驚いたような目だったけれど、すぐに表情を緩めた。


「……春野くん。どうしたの?」


「いや、たまたま帰り道が一緒かなって」


「そっか。じゃあ、ちょっと歩く?」


 その言葉に、俺はうなずいた。


 数分、他愛ない話を交わしながら並んで歩いていたけれど、言いたいことが胸に引っかかっていた。

 そして、信号待ちのタイミングで、俺は口を開いた。


「昨日、見てた。あの事故、助けたやつ」


「……」


 橘さんはほんの少しだけ目を見開いて、それから目をそらした。


「そっか。……見られてたんだね」


「ありがとうとか、偉いとか言うつもりはないよ。ただ、すごいと思った」


 言葉を選びながら、俺は続けた。


「俺だったら、たぶん……あえて見ないふりしてたかも。見えるくせに」


「……私も、ほんとは見たくなかったよ」


 橘さんがぽつりとつぶやいた。


「見たくないけど、見えちゃうんだ。未来って。で、見えたら……もう、知らないふりできないじゃん」


 彼女の声は、少しだけ震えていた。


「だからね。春野くんのそういうところ、ちょっとうらやましいかも」


「え?」


「“見ない”って選べるの、いいなって。ちゃんと距離を取れるっていうか」


 ——距離を、取る。


 それは、橘さんにとって“未来”との距離だけじゃなく、“人”との距離でもあるのかもしれない。


「でも、俺……最近ちょっと変わってきた」


「変わった?」


「橘さんの未来だけ、見えないから。だから、自分で考えて動くしかなくて。……なんか、それが、けっこう楽しいんだよね」


 橘さんは、目を丸くして俺を見た。


 そして、ゆっくりと小さく笑った。


「……そっか。じゃあ、もうちょっとだけ一緒に歩いてく?」


「もちろん」


 並んで歩く道。

 その先の未来は、どちらにも見えていない。


 でも——それが悪くないと思えるようになってきた。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

また、改善点なども指摘していただけると、嬉しいです。



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