ふたりの違い
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
週の半ば、水曜日。放課後の校門前は、部活に行く人や帰る人の声でにぎやかだった。
「じゃ、また明日なー!」
「おい、早く部室行くぞ!」
「帰りマック寄るやつー!」
そんな声を聞きながら、俺は鞄を片手に門を出たところで、前方に橘さんの姿を見つけた。
信号の手前、小さな横断歩道。
彼女はスマホを見ながら立ち止まり、ふいに顔を上げた。その目が、真っ直ぐ前を見つめている。
——ピピピ。
赤信号。
歩行者用のランプが点滅を始めたその瞬間、向かいから走ってきた自転車が、一人の男子生徒に気づかず突っ込もうとしていた。
(やばい——!)
と思うより早く。
「危ない!」
橘さんが、男子生徒の腕をぐっと引っ張った。
彼は驚きとともに止まり、自転車はギリギリのところで彼の前を通過していった。
——何事もなかったかのように、時間が動き始める。
「えっ……あ、ありがとうございます……」
「ううん、大丈夫?」
橘さんはにこやかに答える。だが、その手は、ほんの少し震えていた。
俺はその様子を、少し離れた場所から見ていた。
未来が見えたから、動いた。
たぶん、彼女にとってそれは“普通のこと”なのだろう。誰にも気づかれないうちに、未来の事故をそっと消していく。
でも、そういうのって——どこか、しんどいんじゃないかって思った。
気づかれないまま、誰かを救って、何もなかったみたいに振る舞って。
そうやって、「見えることのしんどさ」とつきあってきたのかもしれない。
(……俺なら、そこまで見ようとしない)
自分の性格を思い返す。
俺は、なるべく“偶然”に身を委ねて楽しむタイプだ。
でも橘さんは、そうじゃない。見たくなくても、見えるものがある。助けてしまう。放っておけない。
「……すごい人」
そうつぶやいた声は、橘さんに届かないほど小さかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
また、改善点なども指摘していただけると、嬉しいです。




