見えない人
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
「転校生ってどんな人かな?男?女?」
「噂によると女らしいよ」
「マジで!?かわいい子だといいな!」
「それな!期待しようぜ!」
一つ前の席で、あまり関わりのない野球部が話している。
どうやら、話の内容は今日来る転校生のことらしい。
朝、俺の隣の窓側のスペースに、一つ机と椅子が増えていたため、転校生が来ると誰かが判断して、噂として話したのだろう。
そのことで、朝から転校生のことで話題が持ちきりだ。
「あー、おはよう」
担任の中村先生が、教室に入ってきて、みんなに挨拶をした。
「えー、早速だがみんなにお知らせがある。今日からみんなの仲間が一人増えるぞ。じゃあ、入ってきて」
扉が開き、すっと一人の女子生徒が現れた。
一瞬、教室全体が静まり返った。
光に透けた栗色の髪。
エメラルドのような緑色の瞳。
姿勢のいい立ち方。すらりとした印象が、周囲の空気を変えていく。
「はじめまして。橘 詩です。よろしくお願いします」
落ち着いた声だった。張りすぎず、怯まず、ちょうどいい温度の自己紹介。
名前を聞いた瞬間——俺は、未来視を発動させた。
未来が、見えない。
……は?
瞬間、脳が空振りした感覚になった。
いつもなら、会う人にはなんらかの“ビジョン”が浮かぶ。すれ違うだけの人にすら、ちょっとした未来が見えるのに。
なのに——彼女の未来だけが、まるでテレビのチャンネルが合わないみたいに、ノイズだらけで、映像が何も入ってこない。
(こんなこと、初めてだ)
俺は彼女をまじまじと見つめていた。きっと、顔に出てたと思う。
でも彼女は、そんな俺にも気づいているのかいないのか、柔らかく笑った。
やがて、先生が言う。
「じゃあ、橘さんの席は、春野の隣だな。春野ー、お前な、ちゃんと世話してやれよー」
「……あ、はい」
よりによって、俺の隣の席。
数秒先の未来さえ見えない彼女が、俺のすぐ隣に座る。
心臓が妙に、静かに高鳴った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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