すれ違い
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
「そういえばこの前、また商店街のあのたいやき屋、行ったんだよ」
放課後の教室。陽が傾くなか、湊は窓側の席に座る詩に話しかけた。
隣の席、机に頬杖をつく詩が、少し遅れて顔を上げる。
「また?」
「うん。でもこの前と違って、その日は“できたて”でさ。皮がパリっとしてて、中があんこぎっしりであったかくて……あ、いや、別に無理に一緒に行こうって意味じゃないよ?」
思わず早口になる。
言ってから、なんだか自分の声が浮いてる気がして、湊は少しだけ目を伏せた。
詩は少し微笑んで「そっか」と言ったけど、それ以上何も言わなかった。
笑ってはいる。
けど、なんとなく、それが心からじゃないように感じる。
(……俺、なんか変なこと言った?)
ここ最近、たしかにふたりの距離は縮まっていた。
ふたりで出かけた日から、休み時間に話すことも増えたし、ふとした瞬間に目が合うことも多くなった。
けれど――その分、「どう思われているか」が気になってくる。
「……あのさ」
自分でも何を言いたいのか定まらないまま、湊が声をかけようとした瞬間。
「ごめん、今日は図書室寄るんだった。先行くね」
詩はふわっと立ち上がり、軽く手を振って教室を出ていった。
残された湊は、視線を彼女の背中に送る。
でも、その先の未来は――相変わらず、霧の中だった。
(なんか……変な空気だったよな)
帰り道、湊はイヤホンもつけず、ただ風の音と街の喧騒に耳を傾けながら歩いていた。
詩が怒ってるわけでも、避けてるわけでもない。
けれど、ふとした瞬間に感じる、距離。
(前はもっと、笑ってた気がするんだけど)
いっそ未来視を使って、彼女の明日を覗いてしまおうか――
そんな誘惑に駆られる。
でも、視えない。
そもそも、詩の未来は、どれだけ集中しても湊には視えない。
それが、こんなに苦しいものだなんて思っていなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
また、改善点なども指摘していただけると、嬉しいです。