悪くない
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
夕暮れが迫って、空が茜に染まりはじめる。
下町のはずれ、小さな川沿いの公園にたどり着いた俺たちは、
屋台で買ったたい焼きを半分ずつ分けてベンチに座った。
「……ねえ、湊くんは怖くないの?未来が視えないこと」
詩がぽつりと口を開いた。
川の流れを見つめながら、その横顔は少しだけ不安そうだった。
「怖いよ。でもさ、だからこそ面白いんじゃないかなって思う」
「面白い?」
「うん。今日、たとえば詩がくじであれ当てるなんて、絶対予想してなかったし。
その笑顔も、こんなに可愛いなんて――見えてなかったから、余計にドキッとした」
詩が驚いたようにこちらを見る。
頬が、夕日のせいじゃない色に染まっていた。
「……言うよね、そういうこと」
「言うよ。だって、ほんとにそうだったから」
風がやわらかく吹いた。
詩の髪が揺れて、その中にふっと笑みがこぼれる。
「……あたしね、未来が視えるって、最初はすごく救いだったの。
でもだんだん、全部が予定通りすぎて、息が詰まりそうになって……」
その目が、今はまっすぐ俺を見ている。
「でも今日、初めて“何が起きるか分からないこと”が楽しいって思えた。
……ありがとうね、誘ってくれて」
「誘ってよかったよ。ほんとに」
静かに、視線が交差する。
未来が視えない――けど、今のこの気持ちだけは、たしかに同じだって思った。
詩が、ふと、ほんの少しだけ俺の肩にもたれた。
「ねえ、湊くん」
「ん?」
「お互いの未来が視えないって、……悪くないかもね」
その笑顔が、今日一番、俺の胸に響いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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