「第47話」さぷらいず
今日も名残り惜しそうにさきと離れ、ひさおは会社に向かう。
ひさおは一番に新商品の受注を確認する。ついに、20000を超えた。昨日、ギリギリ到達してなかったが。
海外輸送も簡単にまとまった。今週末には決済システムが繋がる予定だ。いざという時にフットワークが軽いのが、会社の強みだ。
部長以上の役職に朝時点の受注を報告する「本日時点で25026個」と。
しかし、昨日から6000個近く増えた。これは、すごいことになる。
社長が緊急会議を要請する。部長以上が集まる。
社長「海外はどうだ。」
製造部長「輸送については問題なくまとまりそうです。遅くとも来週中に契約を結びます。日本郵便が引き取りしてくれますから、製造及び配送業務に変化はありません。」
営業部長「システムが週末には完成するらしいですが、不具合検証を来週いっぱいして、来週金曜に海外注文開始の予定です。」
社長「世間一般の給料日に間に合うか。それは大きいな。」
営業部長「昨日、注文が大幅に増えましたが、注文者の注文個数が10個とか急に増える傾向があります。おそらく品薄狙いの転売ではないかと。」
社長「ふん。かわいそうに。我々は注文後1週間で届ける能力が備わっている。特に対策は打つ必要はない。そのうち落ち着く。」
営業部長「それを加味すると本当のニーズは今日時点で21000個。つまり1日2000個ペースが今の状態かと思います。」
社長「製造ペースは3万まで上げたら死守しよう。外部の製作委託は最後の手段にしたい。製造部長。月末の総生産数は。」
製造部長「約40万個見込みで、以降毎月65万個程度の生産量です。その他の製品の製造するラインとして、補助ラインを発注したいと考えております。5000万円かかりますが、長期的に今の状態が続くなら半年で外部委託より利益が上回ります。」
社長「海外販売の目処はついた。一時的なブームだったとしても、設備投資分の回収は十分可能だ、進めてくれ。」
営業部長「次の自主販売をどうするかですが、商社の顔を潰すのもどうかと思いますし、ただ、一社独占販売している商品が、十分な評価受けてないと思いますので、自社販売するのは有効とは思いますが。」
社長「去年発売のやつか。私も納得はしていなかった。あそことの取り引きは?」
営業部長「全て取り扱う契約していますが、他は大した量ではありません。あそこは我が社より大切な会社があり、保険的扱いですね。」
社長「私も同じ感想だ。後に影響ないなら、検討し、利益と天秤にかけ、有益なら契約解除しよう。製造部長。製造部長はピークだから、利益率と製造単価を今月中にまとめてくれ。開発部長。社内販売向きのコストダウン可能な梱包などを検討してくれ。もちろん今月中に。」
開発部長「分かりました。」
製造部長「自部署のことだけで申し訳ありませんが、あの商社の無理な納期と態度は気に入らなかったので、私は社内販売に賛成です。」
開発部長「開発した人間として、あの程度の売り上げは私も疑問です。ライバル会社にコントロールされている印象を受けます。」
社長「皆の気持ちは分かった。リスクも考慮する必要があるから、ここは慎重に行こう。全商品を自社販売出来ない以上は、商社も大切にする必要がある。」
営業部長「敢えて保留していましたが、新商品を取り扱いたい商社がいくつかありましたが、どうしましょうか。」
社長「1日10万個製造でも処理する能力がある今、リスクの心配はない。14800円で受ける場合のみ許可したらいい。乗る会社はないと思うがな。」
営業部長「分かりました。やんわり断ります。」
社長「以上で終わろうか。総務部長だけ話がある。」
会議は解散となった。
開発部長「営業部長、あなたの奥さんのおかげで我々の商品が最大成果になろうとしてる。それもあなたの人脈だ。感謝してる。幸せにな。」
ひさおはお辞儀し、職場に戻る。
※※※
総務部長「社長。ご要件は。」
社長「株主総会の追加決議事項を、追加送付してほしい。」
総務部長「これは、先手打ちましたね。タイミングとしては、今ねじ込むべき内容で、どちらも素晴らしいと思います。最上階の改装をする必要がありますね。」
社長「もともと想定していた理想の形だからな。役員会決議は昨日急遽完了して承認済みだ。私も自宅から通えるし、悪くないだろう?それに、他の任務もある。さきさんから聞いたよ。お前が幸せにするところを監視しろってな。君は幸せになるべきだ。ずいぶん傷ついたんだ。もう過去にしないとな。」
総務部長は無言でお辞儀し、社長室を後にした。
窓越しにさきのマンションを見ると、さきが布団を干し手を振る。社長が手を上げ「全く、みんな幸せにして、すごい人だよ。」と感心するのだった。
※※※
総務部長が営業部長に近づき、小声で話す。
総務部長「おめでとう。」
営業部長「なんだよ。今更結婚の祝福か?」
総務部長「違うよ。あなた、営業部長兼任の取締役だよ。株主総会の決議事項に追加された。否決されるはずがない出来レースだ。前の自分なら、悔しいし、羨ましいだろうね。だが、あなたはふさわしい。それに、私には大切なものが出来た。心から祝福するよ。」
営業部長「辞退できないかな。」
総務部長「何でだよ。もうこんなチャンスないぞ。」
営業部長「君と同じさ。大切なものがあるんだ。取締役に憧れもない。私は、東京にはいけない。」
総務部長「ああ、何だ。そんな悩みか。」
営業部長「簡単に言うな。重要な譲れないことだ。」
総務部長「東京撤退だよ。自社販売で見栄えは不要になったのさ。ここが本社だ。社長の祈願だったこと。東京にはいけない。残念ながらね。」
営業部長「先に言えよ。人が悪いな。辞職を覚悟したんだぞ?」
総務部長「ごめんごめん。おめでとう。」
営業部長「お前変わったな。あの日以来ロボットみたいに感情なかったのに。幸せにならないと。」
総務部長「さき様はみんなを幸せにする。あそこも彼女のせいだろう?」
営業部長「あの2人?聞いてないな。意外な組み合わせだな。」
総務部長「偉大な奥さんだ。じゃあな。」ひさおの肩を叩き、総務部長は去って行った。
ひさお「俺が取締役か。。関心がなくなると、回ってくる。あまりうれしくないな。しかし、海外注文が予想できないな。100万個でもかなりの冒険だけど。。俺にはあの段階で決断出来ない。社長のセンスは偉大だな。」
社長「なんだ。考えごとか?総務部長から聞いた件か。。」
ひさお「違います。海外注文が全く見えなくて。。社長の判断には頭下がります。来週から給料日のタイミングになります。受注がどうなるか。」
社長「10倍になっても困ることないから。マイナスにならなければいい。発売日後に落ち込むのかは読めないが。そういえば、社長室から外見てたら、さきちゃんが手振ってくれたよ。結婚のお祝いしてないし、一度お邪魔したいから打診してほしいのだが。」
ひさお「分かりました。今週中に候補日を連絡致します。」
営業部長「ちょっと取引先に行ってくる。」
ひさおは打診された取引先を回って、お断りをしに東京に行った。全て回り、夕方に帰ってきた。
お得意様にお断りするのは、疲れるな。まあ、他の商品は今まで通りと伝えたけど、商社にとっては死活問題だからな。取り引きやめる会社はなかったな。数年前ならタブーだった。時代が変わったな。帰宅するか。
ひさお「ただいま。」
さき「おかえり。」
愛しい奥さんが嬉しそうに料理している。実に幸せだな。。
ひさおは料理を運び、さきが着席した。
ひさお「いただきます。」
さき「美味しい?ねえ、今日布団干してたら、社長と目が合って手振っちゃった。反応してくれたんだよ。」
ひさお「そういえばさ。総務部長が、営業部に来た瞬間に、新人と事務員付きあってるって。さきが仕組んだって言ってたけど、どうなの?」
さき「ああ、確かに。彼女明らかにひさおに好意抱いていたから、ひさおは私のもの。だから、他にしなさいって。直接は言ってないよ。ちょっと違うけど。ジェラシーかな。彼女がいたから、最終日に暴露したの。でも、新人くんは合うかなって思ったのは事実よ。」
ひさお「考えつかないカップルだったけど、いいとは思った。尻に敷かれそうだけどね。」
さき「ひさお。だいぶ前に、彼女、朝マンションの1階で私を待ってたの。」
ひさお「そうなんだ。」
さき「彼女処女だったって。見かけによらないでしょう?彼女真面目よ。私も知らなかったけど。だから、尻に敷かれはしない。新人くんが引っ張ると思うわ。」
ひさお「驚いたな。」
さき「私、あの日、無理やりひさおに迫って良かった。でないと彼女に取られてた。女の勘よ。危ないって唯一感じた女性よ。」
ひさお「んー。どうかな?分からないけど、今より幸せにはなれなかっただろうとは思う。もし、さきと会う前に気持ち伝えられたら、フリーだから否定できないかもな。。ああ、そういえば、社長がお祝いしたいって。日にち決めたい。」
さき「最終の土曜日は?無理なら社長の都合に合わせましょう。」
ひさお「分かった。伝えてみるよ。泊まり?」
さき「いいけど。。」
ひさお「何?何か含みある返事だな。」
真っ赤になって「ちょっと。。その。。ひさおと愛し合えない日があると思うとモヤモヤしちゃったの。」
ひさお「社長がお見えになる前に愛し合うのではダメ?
さき「分かったわ。」
ひさおが風呂を出ると、ベッドで愛し合い、疲れ果てて寝てしまった。
今日のさきはとにかくかわいかったな。
さきおやすみ。愛してる。




