「第246話」年末のご挨拶
コンサートも無事終わり、ひさおの仕事の最終日にひさおを見送る。
さき「お母さん。昼から、ちょっと出かけていいかな。」
母「いいよ。子供達は見ておくから。」
さき「まりあ。カレーとうどんとどちらがいい?」
母「うどんみたいね。」
さき「はあ。お母さんお願いします。」
父「わしはカレーがいいな。」
さき「あら。お父さん気を遣って。。」
母「私も自分で作ったものより、カレーがいいわ。」
さきはカレーを作ると、味見がてら食べて出かけた。
さき「社長。ひさおは?」
社長「お得意先に挨拶行ってるよ。用事か?」
さき「いや、年末のご挨拶に伺っただけです。今年1年大変お世話になりました。」
社長「いや、世話になったのはこちらですから。」
さき「来年は別の形で世話になろうと思いまして。」
社長「何?履歴書!えっ?は?」
さき「いい年迎えるなら今日かなって。」
社長「あの。本命でしょうか?」
さき「私の人生を変えた会社ですよ。本命とかないです。一択ですから。今からでも受けれるならですが。無理ならフリーで何かします。」
社長「総務部長。大至急だ。すぐ来い!」
総務部長「社長。どうしました。。さきさん。」
社長「今すぐ内定通知だ。今すぐ。」
総務部長「さきさん。入社頂けるんですか?すぐに用意します。」
総務部長「お待たせしました。」
社長「いや、えらく早くないか?牛丼屋より早いぞ?」
総務部長「こんな日に備えて作ってありまして。引き出しから出しただけです。」
さき「作り置きなんだ。。試験とかは?」
総務部長「学力も性格も能力も、どの応募者より熟知していますので、不要です。」
社長「会社に来て働かなくても、既に誰よりも会社に貢献しているからな。毎日寝てても問題ない。」
さき「いや、あるでしょう。回りの目があるから。ねえ、せっかくひさおがいないなら、3人だけの秘密にして入社の日を迎えましょうか。」
総務部長「また、悪いことを。。」
社長「お茶を頼む。3人だ。」
秘書「失礼致します。あら。」
さき「あれ?あらはこちらのセリフよ。総務部長。あれれ?やったわね。」
社長「ん?」
秘書「えっ。」
さき「妊娠してるでしょう?」
総務部長「いや〜。敵わないですね。4ヶ月に入るところです。」
社長「ほう。だったら、みゆさんは最初から秘書課だな。総務部はどうする。」
総務部長「最近、名門大学の女性の応募がありましてね。えー。。この方なら、未来の総務部長も可能性あるかと。」
総務部長がノートパソコンでファイルを開き見せる。
社長「えらい大学の人間だな。。」
さき「あなた達、私がいる場所でそういうことしたらダメよ。へー。まさか彼女が。。」
社長「知り合いなの?」
さき「自動車メーカーの幹部候補面接を辞退した1人よ。まあ、私がぶち壊したんだけどね。」
総務部長「どういうこと?」
社長「幹部候補面接の受験者を全員辞退させる目的で、面接を破壊したそうだ。目標は達成して、取締役が1人辞めさせられたらしい。」
総務部長「どうやってぶち壊すのですか?」
さき「ん?総理大臣と電話繋いだまま、面接の一部始終を聞かせただけよ。国土交通大臣カンカンだったわよ。あの取締役、肩書きだけなの。ペラペラなのよ。やんなっちゃった。」
総務部長「恐ろしい。私も簡単にクビになりますね。」
さき「ならないわよ。あなたは必要な人よ。私が圧力かけてもクビなんて無理だわ。」
社長「まあ、どちらか取れと言われたら。。答えはひとつだけどな。」
さき「ちょっと!奥さんが不安そうじゃない。私達がくっつけた2人よ。不幸になんてさせないわよ。けどさー。奥さんがグイグイ来てたわよね。私達応援しただけだから。いい?入社まで4人の秘密ね。あと、実績出す前から特別待遇無しよ。他の新入社員と平等ですからね。」
社長「まあ、いいけどね。ただ、社員が平等には扱ってくれないんじゃないかな?」
さき「ひさおが戻る前に帰ります。来年もよろしくお願い致します。」
社長「こちらこそ。よろしくお願い致します。」
警護の2人と一緒に戻るさきを窓から見つめる2人。
社長「なあ。総務部長。外部取締役が退任するから、4月から総務部長兼任取締役にしようと思うが。」
総務部長「正直、かつての野心はありませんが、断る理由はありませんので。」
社長「それくらいがちょうどいいのさ。奥さん大切にな。私は、音楽協会のねぎらいの会を料理長の店でやってくるから帰るよ。さきさんの命令だからな。今年のコンサートはノーギャラにしてな。困った人だよ。ああ、いい1日になったな。」
総務部長「しかし、あの方の貢献は計り知れないですね。有名大学の首席が応募してくるなんてあり得ないです。」
社長「まあ、うちに入って後悔はさせないさ。」
音楽協会の宴は、豪華な宴になった。さきの家はSPをねぎらうため、大将の寿司を予約して楽しい夕食になった。
※※※
迎えた大晦日。
社長に乗せられ、まみとみゆの母と東京に向かった。
あらかじめ約束していた総理大臣官邸に行くと、昼食を食べるために移動することになった。
総理が連れて行ったのは皇居だった。
総理は事前に決めていたらしく、皇族の方々とお話をした後に皇太子様と一緒に食事を食べた。
みゆの母は、食事の後に音楽協会の報告をした。
夕方には、皇太子様や総理と別れ、紅白の会場入りしリハーサルが行われた。
ついに、さきはまみとみゆの母と紅白に出演した。
さき達はオープニングを飾った。
出演が終わると、いろんなアーティストと会話を楽しんだ。さきのボーカル力とまみのピアノ演奏はアーティストの中でも関心があるようで多くの人が話かけてきた。みゆの母へ作曲依頼も舞い込んでいたようだった。
とにかくごちゃごちゃした現場で、SPも大変な1日になったようだ。
最後までの参加は無理だとあらかじめ伝えてあったため、日付が変わる前には帰宅した。
まりあは夢中で見ていたそうで、さきはとても嬉しかったようだ。
良い1年だったとは言えない年だったが、いろいろ変わっていく1年だった。




